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ゲームゼミ ベスト記事

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「ゲームゼミ」にて掲載された記事の中で、特に評価の高い記事、内容が充実している記事を厳選しました。「ゲームゼミ」に興味を持っていただいた方は、ぜひこちらから探してみてください。
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記事一覧

7 Days to Die批評 「生き残るために作る」サバイバルクラフトの醍醐味とは

2024年7月26日、ついに正式リリースを迎えた『7 Days to Die』(以下、7DtD)。 『7DtD』はSteamの、インディーゲームおよびサバイバルクラフトというジャンルにおいて伝説的な金字塔だ。2013年に早期アクセスを開始し、10年もの間開発を続けたうえで1800万本も販売。Steamでは約23万レビューのうち88%好評など、まさしく「重鎮」と評すべき傑作である。 筆者個人としても本作は思い入れの強い作品である。アーリーアクセスの間もない初期に購入し、アッ

大ヒットの「パルワールド」は盗作か? ゲームのパクりパクられ問題を整理する

1月19日、ポケットペアから発売されたゲーム『パルワールド』。発売から4日で販売本数500万本を突破するなど、インディーゲームの規模としては前代未聞のヒットを記録しており、ソーシャルメディアや動画配信サイトなどでも多数シェアされている。 もっとも、『パルワールド』のヒットは必ずしも歓迎されていない。その理由はゲームの参考画像を見れば一発でわかる。そう、明らかに「ポケットモンスター」シリーズに登場する「ポケモン」を意識したデザインの「パル」と呼ばれるモンスターが世界を闊歩して

Ubisoftとアサシンクリードの「真実」──欧州ゲーム産業から『シャドウズ』問題まで

日本を舞台に、アフリカ人の「弥助」を主人公の1人にすえた『アサシンクリード シャドウズ』。その作中描写や開発者に対し、国内外で大きな批判が展開され、ついに先日Ubisoftが公式に謝罪するに至った。 しかし、SNSやYouTubeなどでこの『シャドウズ』問題をめぐる意見を読んでいても、ゲーム文化にきちんと立脚した意見はあまり見られない。仮にゲームに詳しくともUbisoftやアサシンクリードまで理解した意見は多くないし、先日放送されたAbemaでも問題提起したゲストを含めた全

ゲームゼミ 掲示板ルール

メンバーシップ「ゲームゼミ」の掲示板の運用におけるルールについて以下に記します。 元々、掲示板の最初のスレッドに書かれていたものをアップデートしたものですが、いつでも確認できるよう、記事としても登録しておきます。 ───────────────

今の任天堂は「子ども」に向き合えているのか 現代エンタメの「子ども」の居場所

先日配信された「Nintendo Direct 2024.6.18」を見た。「ニンダイ」ことNintendo Directは恒例となっている任天堂独自の放送だが、今回も非常に盛況な結果となったようだ。ソーシャルメディアには数多の好意的な感想が寄せられ、メディアも嬉々として取り上げた。Nintendo Switchの成功以降、ゲームカルチャーを7年に渡ってドミネートし続けた任天堂の権威は、未だ揺らぐ気配がない。 筆者もまた、リアルタイムでこのニンダイを見て、そしてゲーム仲間と

『学園アイドルマスター』批評 アイマス×スレスパ=「成長感」

5月16日から配信された『学園アイドルマスター』(以下、学マス)は、現状2024年に発売されたゲームの中で随一の傑作である。 それは「ソーシャルゲーム」と呼ばれる、モバイル向けキャラクター収集ゲームに留まる範囲ではなく、一般的な大作やインディーといった垣根を超えてなお十分評価に値する程度に、一本のビデオゲームとして論ずるに値するテーマとその達成を確立したからである。 では本作の本質とはなにか。まず本作のベースとなっているのは、既にSNS等でも語られる通り『Slay the

「今、ゲームメディアが死につつある」ゲームジャーナリズムの限界と提言について

今、世界的にゲームメディアが死につつある。 確かに、以前から衰退はしていた。特に、2023年にはFandom WikiによってGameSpotやGiant Bombといったサイトが買収された途端、40〜50人がレイオフならびに何らかの影響があったと報道された。VICE、Destructoid、The Escapist、Dot Esportsなどでもレイオフがあった。いずれも海外では大きな影響力を持つゲームメディアであるにもかかわらず、明白に経済状況は悪化していた。 そこに

決算資料から紐解く、2020年代の日本ゲーム産業の「真実」

スクウェア・エニックス(以下、企業名は一部省略)が苦しんでいる。24年3月期決算によれば、営業利益は前期443億円から325億円と26.6%減らした。このため、数々のゲームメディアやSNSでは同社に対し嘲笑的な風評が寄せられ、5月13日まで約6300円だった株価も約5300円と急落した。結果、スクエニは今日本で特にネガティブなイメージのある企業となったことは否めない。 しかし筆者は、この報道には疑問がある。 スクエニが減益で苦しんでいるのは事実だが、それは何も、スクエニだ

ドラマ「フォールアウト」の真実 いかに原作ゲームを最高のドラマに昇華したか

ドラマ版『フォールアウト』が素晴らしい。ここ数年、ゲーム原作を映像化する試みはいくつかあったが、『フォールアウト』はその中でもかなり「当たり」の部類と言えるほど、優れた作品である。 では本作の一体何が優れているのか。それは原作の「ゲームならでは」の魅力を踏襲しながら、同時に「ドラマならでは」の魅力を模索し、両立させている点である。これは他の優れた映像化作品、例えば『Arcane』や『サイバーパンク・エッジランナーズ』もそうだったが、『フォールアウト』はこれらと比べても遜色な

ベゼスダソフトウェアと『スターフィールド』の真実 オープンワールドRPGの成功と衰退

2023年に最も落胆されたゲームは、おそらく『Starfield』である。 『Starfield』は2023年9月、Bethesda Game Studiosが手掛けた、宇宙を舞台にしたRPGだ。約7年、巨額の予算と膨大な人員というリソースが費やされ、さらに開発陣自ら「Bethesda史上30年ぶりの完全新規作」「1000以上の惑星となる宇宙が舞台」と大いにオーディエンスを盛り上げていたことで、2023年にもっとも期待される作品の一つとなっていた。 しかしながら、実際に発

『SANABI』の真実 韓国文化と韓国社会から考察する「韓国ゲーム」の達成

2023年には多くの韓国発のビデオゲームが話題になった。インディーゲームとしては異例のヒットとなった『Dave the Diver』、リッチな表象でソウルライクを再解釈した『Lies of P』、ダンジョンクロールを対人ゲームとして落とし込んだ『Dark and Darker』などだ。しかし、こうした韓国産ゲームの中で筆者個人が最も評価しているのが『SANABI』である。 『SANABI』は韓国のインディースタジオ「Wonder Potion」によって開発された、ワイヤーフ

『The Last of Us Part II』の真実

過去10年で最も盛んに批評されたビデオゲーム作品といえば、2020年にNaughty Dogから発売された『The Last of Us Part II』だ。 発売当初の本作への評価はまさに賛否両論で、絶賛するレビューもあれば、激しく批判するレビューもあった。中には出演者への脅迫さえ行う者もあらわれ、一口に批判と言っても、明らかに品質の低いゲームに向けられる失望以上の「憎悪」に満ちたレビューが多かった。しかも前作『The Last of Us』は満場一致で絶賛され、世界中の

100本以上ゲームを遊んだJiniが選ぶ、2023年のゲームランキングTop10

2023年は21世紀のゲーム史においても2004年、2007年、2017年に匹敵する豊作の一年であったことは記憶に新しい。数々の話題作が発売され、一本がソーシャルメディアでバズっては、また別のゲームがその話題を塗り替え、そして忘れられていくサイクルを何度も目にした。 そうした一年の中で、私はのべ100本以上のゲームをプレイした。そしてこれほど遊んでいると、その中には言葉に窮する平凡な作品も多々あったのだが、ごく一部、こうした「バズ」の如何に関わらず、純粋に今も記憶に留まるゲ