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哀しき妻のために 蚊よ、とまれ

夕方に松江を通ると、晴れた日は宍道湖に映る夕日が目に映える。

松江から見た宍道湖の夕日は観光名所の一つにもなっている。晴れの日はその夕日を見るために、地元の人やら県外の観光客でにぎわう。格好の撮影スポットである。

最近は、島根県立美術館ができた影響で、美術鑑賞と夕日がセットになっており、これまた観光客に喜ばれたりしている。

しかし、我々からすると、夕日をバックに映る嫁ヶ島の光景が昔からの絶景スポットとして馴染み深い。

嫁ヶ島は島の名前にまつわる哀しい伝説がある。

昔、姑のいじめに耐えかねた嫁が、ある冬の夜、家を抜け出し実家へ戻ろうとした。ちょうど氷の張った宍道湖を渡っていけば近道と、嫁は湖面を横断して道を急いだ。ところが、何かのはずみで(一説によると、寒さのために嫁が小用を足したためであるとも)いきなり氷が割れ、嫁はそのまま冷たい湖底へと沈んでいったのである。それを見ていた水神が憐れに思い、夜が明けきらないうちに、小さな島を浮き上がらせて嫁の亡骸を湖面へ引き揚げたのであった。嫁の亡骸と共に湖面に現れた島ゆえに“嫁ヶ島”と呼ぶようになったという。

そのことを思いながら、宍道湖に沈む夕日を眺めるのもいいのだけど、古代の出雲(出雲国風土記)では、それとはまた別の名前で呼ばれていた。


「蚊島(かしま)」


蚊のように小さい島という意味である。考えようによっては、これも諧謔精神にあふれており、なかなか趣深いと思うのだけれど、カップルが腕を絡めて宍道湖を眺める風景としては、ちょっとねぇ。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

どちらを好むのかはそれぞれの判断に任せますが、ぜひ出雲に来た際は、この絶景、ご覧あれ♪


ヘッダー画像はkeitaro kitagakiさんの画像をお借りしています。ありがとございました。


こちらでは出雲神話から青銅器の使い方を考えています。

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