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昨日、WOWOWで寺地拳四郎vs矢吹正道の試合を観た件について


  昨日、観た。

   観ました。良い試合でした。意地と意地のぶつかり合う試合を。

ボクシングは子供の頃に漫画「あしたのジョー」を観てから好きになりました。
  そこから、長谷川穂積やらノニト・ドネア、辰吉丈一郎、薬師寺保栄などなど、子供から現在にかけて好きでした。

一時、ボクシング人気が消えかけてましたが、天才!というか至宝、井上尚弥が出てくることで少しは風向きが変わってきた気がします。

と、前置きはこれ位にして、昨日の試合。

寺地拳四郎。童顔だけどファイトスタイルが独特で、いつの間にか勝っているように見える、表情もあまり変わらず、私的には何を考えているのか分からない、そんな印象でした。

そんな彼が試合で負けた、と。相手は矢吹正道という名前でした。

子供の頃に見た漫画「あしたのジョー」の矢吹丈から名前を貰い、紆余曲折が有り、漸く世界戦に辿り着いた苦労人だそうです。

何を考えているのか分からない人vs苦労人、私の中ではそんな印象や妄想で一杯です。しかも、壮絶な内容だったと。

いつの間にか勝利を運んできているように見えた彼がどんな風に負けたのか、彼のタネ明かしをしてくれるような気がして、観たかった。彼の表情を変えない裏に隠された物を観たかった。

試合で観た矢吹正道は一見、矢吹丈のように荒削りで、飛び込んでストレートを放つ。しかし、ガードは繊細に、良く見ていると強打を色んな角度やタイミングで打ち分ける。自分の武器を知って居ながらにして賢く使っていた。

ファイトスタイルが違う物同士が戦う姿は面白い。
そこにその人が反映されているから。

試合は序盤から矢吹が派手なパフォーマンスのようにストレートを放ち、寺地の鼻が腫れる。
漫画の矢吹丈のように何も守る物は無いかのように戦っていた。しかし、矢吹正道は違う。守る物はあった。家族の為に死ぬ気で戦う、と公言していた。

矢吹のストレートが重そうだ。

分かりやすい、攻撃に見えた。

しかし、寺地拳四郎の攻撃は分かりにくい。

しかも、彼の飛びかかるようなストレートで翻弄され、戦いにくそうだ。

初めは王者、寺地拳四郎のスタイルにはめ込もうと自分のスタイルを貫こうとしていた、ように見えた。
しかし、矢吹が研究し、寺地の良さを逆に利用して戦っているように見えた。
リズムで戦う寺地をリズムを崩すことを徹底しているようだった。
今回は4、8Rに試合の判定内容の途中経過を報告するという。4Rが終わり、3人の内2人が矢吹がリードという結果だった。
ここで、表情を変えない王者が攻撃を強める内容に変えた。明らかにリズムを崩して戦っているように見えた。そこに矢吹の重いストレートが入る。

でも、王者の意地がそこから見えた。負けたくない、の顔がちらついた。何を考えているか分からない人の顔が、見えたような気がした。
5〜8Rに入っても寺地は攻勢に掛かるが空回りしているように、見えた。
8Rの判定内容の結果は3人共に矢吹で、この後全てのラウンドで優勢にしないと勝てないという内容だった。
明らかに王者は不利となった。

9Rから死闘になった。

寺地はボディで相手を崩しに掛かった。初めて見せる寺地の本領発揮だ。というか、化けの皮がはげたかのように戦っていた。勝ちたい男の姿がそこにあった。

しかし、死ぬ気で戦うと公言していた男、矢吹正道が立ちふさがる。

彼は言葉通り、死ぬ気でボディ攻撃を耐え抜き、続く10Rの半ばまで我慢して反撃に出る。

今まで崩れなかった王者のバランスが崩れる。そこになだれ込むようにして矢吹のラッシュで試合が決まる。
新王者の誕生だった。

しかし、私には矢吹正道を褒めると共に、何を考えているか分からない男が最後の最後で見せた、本当の顔が、忘れられなかった。

今日、彼は、寺地は強くて、いつの間にか勝っている男では無かった。

今回は負けた。

負けたけど、最後の攻撃が勝ちたい気持ちが表れていて、よかった。

ボクシングは最後に勝者と敗者に分かれる。

でも、そのあとに人生は続く。

この勝敗が二人の人生をどう変えるのだろうか?

そう、思わせる試合だった。

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