ラッハ・マク! プカプカ!

 (第一回) 旅の女紙芝居屋

 さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、それじゃあプカプカの話をはじめよう。
 昔々、本当に昔々のおはなし。
 この世で最初にムングの絵札(※1)を作った少女、
プカプカのおはなしをな……。

       *     *     *       
 ンブツ神の源たるゴヌドイル河(※2)、その岸辺の乾ききった大地に、川面を渡って一陣の風が吹いた。
 ひび割れた道を行き来する兵士たちのツァモウ(※3)が巻き上げた土埃で黄土色に霞んだ小さな村を、風は吹き抜けていった。
 細かな砂粒は、彼女の陣取った風通しの良い酒場の奥にまで飛んできた。仕上げたばかりの濡れた絵に容赦なく砂が降りかかって、勝手な模様を描いてしまう。
 流れの弱まった川岸でクァン(※4)の実を採る農家の女たちを描いた絵――石臼で挽かれた粉のクァンしか知らない、遠い南の都人には珍しい光景――旅の紙芝居師にとっては、日々の糧となる芝居絵の一枚だった。
 大判の紙を掲げた紙芝居師の少女――プカプカは、まるで熱病持ちみたいに砂粒の斑点がついてしまった農婦の顔を眺め、やれやれとため息をついた。
 街道では、規則正しい大勢の足音が響いていた。
 集落から駆り出された兵士とは違う、貴人に金で雇われた、生まれながらに武を生業とする者たち(※5)の行進だった。
 プカプカのいる涼しくて居心地のいい酒場の隅にまで、槍の列がギラギラと無粋な光を放って通り過ぎていく。
 光に驚いたのか、茣蓙の上にあった彼女が食べ終えた昼食――散々に交渉して、酒の注文無しで食べられたのは「マママハにジュクナをかけて蒸したもの(※6)」だった――の皿にいた蝿が、ぶうんと羽音を立てて飛び去った。
 戦場は村のそば、ゴヌドイルのこちら側と占いで決まったらしい。敵側のクリルズイル軍はもう、二日も前に浅くなった河を渡り、岸沿いに西へと進んできている。
 乾期だというのに、また戦【いくさ】が始まろうとしているのだ。それも、ずいぶんと大きな戦が――と少女は思った。
 水気のあるものといったら、大いなるゴヌドイルを除けば、店の厨房に並んだハンブ(※7)の大瓶と、今が盛りのハワナマナ(※8)の実ぐらいのものだ。そう、この絵だって少し待てばすぐに乾いたのに……。
 戦は、いつも待ってくれない。何かの拍子に集まっては、蝗のように身勝手に押し寄せてくる。数え切れないほどのムングたちがすることだ、人にはどうすることもできない――そうとしか思えなかった。
 蝗たちが、どこで何を食べるかなど知らぬように、彼らも押し寄せて食らい尽くすだけ。疲れて死ぬまで……。
 ガチャンと乱暴に素焼きの杯がぶつかる音がした。
 そして乾杯の声――。
 騒いでいるのは酒場の兵士たちだ。
 こちらは、駆り集められた地元の者らしく、薄汚れた(恐らくは先祖伝来の)胸当てだけ、潰れたような兜だけ……といった具合に、てんでに半端な格好をして車座になっている。杯に満たした安いハンブを胃に流しこむ前に、彼らはイシュ神――槍を司るムング――への祈りの言葉を唱えていた。
 どうやら、この村に集結した軍勢、つまりハンムー軍は、イシュに頼ってこの戦に臨むらしい。
 もっとも、酒場にはイシュのムングサ(※9)はなかった。あの一本気で“お堅い”槍の神は、彼らの祈りなど聞いてはいないのだ。
 プカプカにさえ――彼女は四六時中ムングに気を配っている神人ではないけれど――それがわかった。
 どちらかというと、イシュ神は「わかりやすいムング」なのだ。
 イシュ様はもう、たくさん見たものね……そんなことを思いながら、彼女は無意識のうちに小さな紙札の束を懐から取り出し、何枚かめくっていた。
 全ての札には、マンガ(※10)の細かな線で縁取られ、綺麗に彩色されたムングの姿が描かれている。丁寧で緻密な絵だ。イシュ神の姿が描かれた札も混じっている。これは紙芝居には使わない。自分のためだけの絵――。
「おい、そこの娘!」
 不意に声がした。
 店の中に女は自分しかいない。見上げると、目の前に若い兵士が一人で突っ立っていた。彼女と同い年か少し年上ぐらいの年頃の若者だった。兵士とわかったのは、粗末な黒い石の槍(※11)を持ち、布製の胸当てをつけていたからだ。
 彼は、大人ぶった仕草で唇の端を歪めてみせた。
「おまえ……紙芝居屋だよな?」
「ええ、そうよ。旅の紙芝居師、プカプカと申します」
 にっこりと笑ってから、渦巻きみたいにくるくるとよく動くプカプカの大きな目が若者の瞳の奥をのぞきこむ。
 相手は少し気後れしたようだったが、それでもお返しとばかりに、じろじろと彼女を眺め回していた。
 無理もないわ……とプカプカは思う。
 ずっと南から旅をしてきた彼女の姿は、ハンムーの辺境に住む若者には奇妙に映るはずだ。
 砂漠での強い日差しをよけるための、柔らかく厚い生地でできた土色のホィリィ(※12)は、この辺りの服装ではない。その下は、ありふれた意匠のツンクェロ(※13)だったが、こちらは色彩が少し変わっていた。カナン海に浮かぶ島、プトの染めもので、深い藍色と白っぽい黄色とが混じり合う不思議な模様に染め上げられている。
 それに、彼女の顔や手足にある魔除けの刺青だって、ハンムーのそれとはずいぶんと違う。小さい頃、死別した両親に施されたものだ。それがどこの模様なのかは、カナン中を旅した彼女自身にさえいまだわからないのだ。
「それで、兵隊さんが紙芝居屋に何か御用?」
「ええと、その……おまえは、やるのか? ほら、あの、女紙芝居がやるやつだ、一人相手の……」
 うつむき加減で語尾を濁らせる若者。
 プカプカは言った。
「もしかして、バナンニのこと?」
「そうだ、それだ、バナンニ……できるか?」
「そりゃまあ、あたしは女だし、紙芝居師ですからね」
 ホィリィの頭巾を脱いだプカプカは、改めて彼を見つめる。
 そこで初めて、彼女が少女といっていい年齢だと気づいた若者は、何度も咳払いをして顔を赤らめた。
 さっきまでイシュに祈って乾杯していた兵士たちが、若者を指さしてはうなずき合い、ドッと笑う。「やれやれ生意気な若僧だ」だの「色気づきやがって」だの「戦の前に支給金の無駄遣いか」などといったささやきが聞こえた。
 バナンニとは、一人向けの小さな絵を使う特別な紙芝居だ。
 演者と観客とで小さな紙芝居台を挟んで布をすっぽりと被り、ハラガドウ(※14)の明かりの中で演じられる艶っぽい絵物語――もちろん、紙芝居師ごとに絵柄も内容も異なるが、たいていは妖艶なミリ神(※15)の物語が多い。
 若者は、冷やかした兵士たちを無視して言った。
「金ならある。戦の前にバナンニを楽しむのは縁起がいいからな。俺は、いつもそうしてるんだ」
 うわずった声だ。
 プカプカは笑いをこらえて、さりげなく聞いてみた。
「いつも? これが初陣じゃないの?」
「えっ? ああ、そうだ……」
 自分が矛盾したことを言っているのにも気づかずにうなずいた若者は、ひしゃげた豆みたいな銀の粒を床に放った。
「ほら、これで足りるだろ」
 どうしようか――少し考えてから、プカプカはもう一度、若者を見上げた。じっと相手の瞳の奥をのぞきこむ……。
 今のところ、旅の蓄えはあるから仕事の必要はない。特にバナンニは気が進まない。でも……。
 そう、この気配だ。もしかしたらこの人は……?
 彼女は小さくうなずいた。
「いいわ。それじゃ、あなたの名前を教えて」
 バナンニでは、物語の主人公は客の名がつけられるのだ。
 槍を傍らに置いた若者が、床に胡座をかく。
「俺の名はスアミルだ。ツビ村のスアミル」
「スアミルね……」
 答えながらバナンニ専用の芝居台を手早く組み立て、布を用意したプカプカは、彼の耳元で思わせぶりにささやいた。
「では始めましょう。昔々のお話。戦上手の武人スアミルと古城の王妃のお話を……!」

(さて、王妃を乗せた優雅な輿が、戦に大勝したスアミル将軍の宿舎を訪ねたのは、もう日も暮れようという時分でありました……)
 プカプカの声が暗がりの中にささやくように響く。
 スアミルは、すっかりバナンニに魅せられていた。輿から降りる王妃の絵から目が離せないでいる。
 兵士になれて良かった――と、彼は思った。
 俺は掟を破ったのだ。もうツビ村には帰れない……戦の噂を聞き、密林の奥の集落から着の身着のままで飛び出してきてしまった。でも俺は運がよい。流れの傭兵だと言い張って、この村の貴人になんとか雇ってもらえた。良いムングがついているのかもしれない。本当の俺も、この物語みたいに敵の大将を倒して大手柄を立て、大国ハンムーの武人になれるかもしれないし、人の多い村にいればこうして紙芝居を楽しむこともできる。金だってもっともらえるはずだ……。
 若者の野望が膨らむうちにも、物語は進んでいく。
(王妃は誘うように小首を傾げました。「はて、妾には見当がつかぬ。いかにしてそなたが戦場で勝ちを得るのか。どうか妾に詳しく話してくりゃれ……」 ウナレ王妃は、そう仰せられ……)
 バナンニの筋書きは、有ってないようなものだった。
 ただ、プカプカのそれは、絵師の勝手な想像で妖艶な美女として描かれるありがちなミリ神は登場しない。あくまでも人と人の物語――どこの国とも知れぬ大きな城に住む貴人の王妃と、彼女が出会った武人の恋物語だ。
(「まあ! なんとたくましい腕! スアミル、妾に触らせてはくれまいか」と、王妃は身を乗り出し……)
 なんとも艶めかしい線で描かれた王妃の肢体が、紙の向こうのぼんやりとした赤いハラガドウの光に浮かび上がる――スアミルは、ごくりと生唾を飲んだ。王妃の白い指が、見ている自分の腕をそっと撫で上げたような気がしたのだ。
 フラマロ(※16)に身を横たえた王妃は、王に仕える忠義者の武人「スアミル将軍」を執拗に誘惑する――。
 絵の中の彼女が身につけたニェリィリィ(※17)は、本物の薄衣を台紙に張り付けたものだった。しかも話が進むにつれ、ニェリィリィの布地を割って、すらりと伸びた二本の白い脚がくんずほぐれつ、武人を誘惑して蠢くのだ。まるで、目の前に本物の小さな王妃がいるかのように!
 王妃の真っ白な脚――それが台紙に開いた穴から突き出されたプカプカの指なのだとは、とても思えない。
 それに、たとえ指と気づいても興冷めすることはなかった。むしろ興奮をあおる。その巧みで滑らかな指の動きが、今度は「バナンニのあと」を期待させるからだ。
 バナンニのあと――そう、交渉次第ではそのままクームワ(※18)に早変わりする女紙芝居師も多いのだ。
(「嗚呼、スアミル! どうか察してくりゃれ……!」)
 王妃の誘惑は最高潮に達し、ニェリィリィもすっかりはだけてしまう。次の絵では、必ずや二人は閨で重なり合っているはずだ……。
 と、不意にハラガドウの火が消えて、真っ暗になる。
 二人を覆っていた布も、パッと取り払われてしまう。
 スアミルが呆気にとられていると、絵の向こうからヒョイと顔を出したプカプカが、うってかわって明るい声で言った。
「はい、お話はこれでおしまい!」
「おしまいだって?! 続きはもっと金を出せってのか?」
「ちがうわ。あたしのバナンニは、ここまでなの」
「な、なるほど……客を焦らしておいて、『バナンニのあと』へつなごうってわけか……」
 見かけに寄らず商売上手な娘だ。
 懐に残っているのは、糧食を買うための支度金だが、なに、もう少しぐらいなら……と、若いスアミルは、興奮に任せ、期待に胸を膨らませる。
 だが――。
 プカプカは顔を赤らめ、ブンブンと首を振ったのだ。
「嫌あね、『あと』なんてないわよ! これでおしまい! ラッハ、マク!(※19)」

 世にも不満そうな顔のスアミル――。
 ああもう! あたしのバナンニって、いっつもこうなのよね……プカプカは深いため息をついた。だからバナンニなんかやりたくなかったのだ。筋書きも芝居も自己流だし(流儀に従ったミリ神の物語は、本物にあまりに失礼だ。かの女神はただ、とてつもなく自由奔放なだけなのだから!)。
 それになにより、「もっと続きを」なんて言われても、どうしたものやら……知らないのだから書きようがない。
 普通の女紙芝居師なら師匠がいて、こういうことも詳しく教わるのだろうが、あいにくこちらは両親と死に別れてこのかた一人旅の紙芝居師なのだ。もう一つ、深々とため息をついた彼女は、さっきもらった銀の粒を取り出して声を上げた。
「おじさん、ハンブを持ってきて!」
 「あいよ」と酒杯を手に現れた店主に、「そんなんじゃなくて、瓶ごとよ」と注文し直す。枯れ木みたいに痩せた酒場の親父は、目を白黒させて大きな瓶を二人の間に運んできた。
 プカプカは、ざぶりと柄杓をハンブに突っ込むと、怪訝そうにこちらを見ているスアミルに言った。
「はい、中途半端なお芝居のお詫びよ。好きなだけ飲んで」
 バナンニをすると、結局こんなふうに客に酒を奢ったりして機嫌をとるはめになる。まあ、それがきっかけで、仕事でない「お目当て」のほうがうまくいくこともあるのだが。
 このスアミルの気配、どうも気になるのだ。
 なみなみと杯に注いだ『プカプカのハンブ』を一息に飲み干したスアミルは、ようやく高ぶっていた気持ちが落ち着いたらしく、苦笑まじりにつぶやいた。
「やれやれ。往来で紙芝居もせず、昼間から酒場の隅で座ってるわ、バナンニも途中で終わりで『あと』もなしだわ……なんだか、変な紙芝居師だな」
「あら、兵士だっていつも槍を振り回してるわけじゃないでしょ。食べ物を集めたり、得物を研いだり、戦う練習をしたり、陣地を作ったり……色々とするじゃない?」
「そ、そうなのか。あ、いや、そうだな」
 スアミルが慌てて言い直す。
 プカプカは、くすくすと笑った。
「でしょ? 紙芝居だって同じ。何か事件を嗅ぎつけて、調べて、絵を描いて、お話をつけて、お芝居はそれからよ」
「だったらこの戦の話を描けばいいじゃないか。さっきの強そうな傭兵団を見たろ? 村の領主様が雇ったんだ。今度の戦じゃ、本国のハンムー家の太子様まで来るって噂だ。国の一大事だ。俺は手柄を立てて、武家に取り立ててもらうんだ」
「そうね、でも戦に興味ないの。どうせ他の人が絵にするし。それにあたし、これから東へ行くのよ。ここじゃ、クリルズイル(※20)の悪い噂ばかりでしょ? あっちへ行ってそんな紙芝居やってごらんなさいな、あって間に吊されて、花の女神の殿様(※21)に連れてかれちゃうわ」
 あまり会いたくないムング――死を司るラノート神も、イシュ神と同じく顔なじみだった。プカプカはもう、幾度となく彼の姿を絵札にしている。
 初陣に水をさされたスアミルが、ムッとしたように言った。
「だったら、なんでこの村にいるんだ?」
「戦場にはムングが集まるからよ」
「ムングが、なんだって?」
「戦が崇高で素晴らしいものにされたり、反対に、悲しく惨いものとされたりするのは、色々なムングが現れるから。で、あたしは、まだ見てないムングに遭いたいってわけ」
「ムングを見ると死ぬ……村の呪い師はそう言ってた」
「あら、あたしは何度も見てるわよ。ムングの姿を絵にするために旅をしてるんだから」
「そんなことしたら罰が当たる! 生きてられるはずがない」
 強情に言い張るスアミル。
 ムッとするのは、プカプカの番だった。
「ほら、もうこんなに沢山のワダンムング(※22)を絵にしてきたわ。こうして札に描いて集めてるんだから……」
 床に広げた札を一つ一つ指さして札の説明を始めると、スアミルは信じられないと言うように目を丸くする。
「俺が子供の頃、変わり者の文人が密林に来たことがある。そいつは虫やら草やらを絵にしてた。それみたいだ」
「うん。似てるわね。でも、こっちのほうが大変よ……」と、上目遣いに彼を見上げてプカプカは続けた。「あなたみたいな人が見つかる機会は、そうはないんだから」
「どういうことだ?」
「あなたには珍しいムングサがある――戦についていけば、新しいムングに遭えそうなのよ……」
 そう言いうとプカプカは、絵札を集めて丁寧にしまいこみ、満足そうに微笑んだ。

       *     *     *       
 おっと、今日はここまでだ。
 つづきはまた今度。
 ラッハ、マク!

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(第一回の注釈)
※1:色々な神が描かれた小さな四角い紙片。占いや神事に使われる。紙片の種類や枚数は地方や神殿によって異なる。旅の絵師プカプカが作ったとされる。
※2:ンブツは水全体を司る神。ゴヌドイルはカナンほぼ横断して流れる大河。古くからの文明を育んだ。
※3:足を覆う靴。貴人配下の兵士がサンダルではなく靴を履いていた。
※4:香辛料の名。その香辛料を司る、同じ名の神もいる。
※5:流浪する傭兵たちは、その集団の中で次代の人材を育成する。カナンにおける傭兵の歴史は古い。
※6:「淡水魚の切り身に米の粉をかけて蒸したもの」とでも言えばいいか。
※7:穀物から作られる発泡酒。庶民に最も親しまれている酒の一つ。
※8:低木。実は香料の原料となる。青い美しい花を咲かせる。カヤクタナ北部が原産地。庭木などとして一般的。
※9:「神の気配」ぐらいの意。ムングとは「神」のこと。
※10:カナン全域の森林に生息する小さな昆虫及び、それから作られる液体。マンガをつぶしてできる黒い液体は、画材や筆記用の墨として使用される。高級品。
※11:辺鄙な地域では、まだまだ石器も普通に使われている。
※12:フード付きの外套の意。ホィが帽子で、リィが上着。
※13:半袖の服と短パンのズボンという出で立ちのこと。ツンクとエロを合わせた言葉。
※14:提灯。竹のような植物と紙とで作られた照明器具。
※15:女性を司る女神。愛や美を女性に与え、同時に、わがままや浅慮も与えた神。人間の男と交わっては数多くの英雄や怪物を産み出したとされる。ギリシア神話におけるゼウスを思わせる神。
※16:楕円形のクッション。簡易寝台にも座布団にもなる。高級品。
※17:浴衣やナイトガウンに似た形状の寝間着。
※18:娼婦、流浪者。ここでは主に娼婦の意で使われている。
※19:祈りの言葉。魔除けの言葉。とっさの一言。物語終わりなどにも用いられる。くわばらくわばら。
※20:前228年、旧ウラナング帝国領に建国。
※21:死の神ラノートのこと。直接名前を呼ぶのを避けた言い方。彼が花の女神ミトゥンの夫であることから。
※22:人と関わりの深い神という意味だが、ここでは「人と出会うとき、こういう姿をとることが多いとされる神の形状」を指す言葉ともとれる。

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 (第二回) 戦場に現れた神

 さあさあ子供たち。
 みんな集まったか?
 よしよし、それじゃあ、つづきをはじめよう。
 昔々、本当に昔々のおはなし。
 この世で最初にムングの絵札(※1)を作った少女、プカプカのおはなしをな……。

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