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100の読書記録

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自分で読んだ本についての備忘録です。本選びの参考にどうぞ。既に読んだものを含めて百冊分になる予定。
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#本

高貴な心で、信条通り正しく:『自省録』

行動と思考は相反するものである。それらに真剣に向き合ったことがあるならばこの両立の難しさは身に染みていることだろう。ところがこの2つは平等ではない。その良し悪しはともかく、思考なしで行動のみという生き方もできるだろう。しかしその逆は不可能である。 これは思考を放棄する理由にはならない。もし直感と経験だけをもとに行動するなら、それはほとんど動物と同じだろう。人間は行動と思考を、理性と感性を天秤にかける。その絶え間ない試みのひとつが表現されているのが『自省録』という本である。

今まで読んだ本を全て公開します

本のリストリストの本は基本的に私が読んだことのある中で、今手元にあるものを掲載しています。読んだことはあっても図書館などで借りただけのものは省略しました。本の記事についている文章は、私のマガジンに投稿する予定の下書きです。 使い方など検索やフィルタリングが可能なので好きな分野から本を探すことができます。グループ化、サブグループ化のボタンから並びを変更することも可能です。 文庫版が存在する本は「文庫本」のタグをつけています。ほとんどの本は一般的な書店やネットで手に入るもので

自分に満足しきった人々:「大衆の反逆」

どんな本かこの本はスペインの哲学者であるホセ・オルテガ・イ・ガセットによって1929年に書かれたものである。日本語訳も行われていて、文庫版も販売されている。 2020年に出版された岩波文庫版は本文に加え、「フランス人のためのプロローグ」および「イギリス人のためのエピローグ」も収録されているこのふたつの章は内容的に興味深いものでもあるので、いまから購入する方はぜひこの版をお勧めしたい。 全体で400ページ以上にもなるため、決してすぐに読めるわけではない。しかし、細かい章立て

「意識と本質―精神的東洋を索めて」を読んで

物事の「本質」というものは時代を問わず哲学の主題のひとつとして扱われてきました。プラトンのイデア論は言うまでもなく、またこれに対する考察だけでも数多くあります。 しかし、同じ「本質」についての議論で言えばイスラーム哲学や中国、日本などでのいわゆる「東洋」の思想について触れた本は比較的少ないものです。「東洋」という分類が正しいかはひとまず置いておくとしても、やはりこれらの思想は馴染みがないという人が多いのではないでしょうか。 また、最近はマインドフルネスや瞑想ブームで禅の考