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思考のしおり

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#わたしの本棚

見捨てられた絶望:『1984年』

小説は自由である。過去の黄金時代を描いてもよいし、来るべき暗黒を表現しても許される。『1984年』はまさに後者であった。現代の監視社会に対する「予言の書」などど評されることも多い。 しかし一方でこれを単に社会的な寓話として扱うのは間違いである。オーウェルはそのもう一つの代表作である『動物農場』から最後の『1984年』に至るまで芸術を忘れなかった。 オーウェルの巧みなところは「禁じられた恋愛」という、芸術においては定石ともいえるテーマを用いながら、全体主義という政治的に新し

「おすすめの本」問題

趣味は何か、と聞かれれば読書と答える。出費の多くを本に向けているのは事実であり、「読書とは何か」などといった説明も必要ない。しかし、ではどんな本を飛んでいるのか、さらにはおすすめの本は何かと言われるの返答に困ることになる。 ひとくちに本と言っても内容は千差万別である。相手に告げる本を決めるには、まずジャンルを絞らなければならない。そう考えると、気軽に手に取りやすく、専門性が低いものを選べるという点で小説が抜きん出ている。 問題は小説自体がさらに多種多様であることだろう。歴