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ドイツ留学記録(2021年11月~)

コロナ禍にドイツへ臨床研究留学をした、しがない医者の記録です。
医局からの派遣でもなく、特にコネもなく、アラフォーで学位取得後の臨床研究留学ということで、近くに同じような留学をしている人がいなかったこともあり、すべてが手探りでした。
自分自身の記録とともに、これから留学を考えている人の少しでもお役に立てばと思い、少しずつ記載していきます。

まず、基本情報。
 ① 日本の私立大学病院医局所属、講師(+留学前は教育主任)。
 ② 医師免許+国内学会の専門医、指導医資格複数+産業医。
 ③ 家族:配偶者+犬。

留学までの、おはなし。
 おそらく私の留学までの流れは、医者の中ではあまり一般的ではないと思うので、ご参考までに医者になってからの話を書いておきます。
 日本では医学部卒業後2年間の臨床初期研修医を終えたのち、やりたいことが決まっている人は専門の科を決めてその基礎研修を行います。私はすでに初期研修医の段階から臨床でやりたいことがあったので、その道で著名な、師事したい教授がいる大学病院の医局に入りました。
 その教授は臨床(患者さんの治療)第一の人で、臨床を基にした研究報告などを行っていたこともあり、私ももれなくそのような形の働き方になりました。もともと勉強は好きではなかったこともあって、体を動かしつつ、直に患者さんやご家族との交流を持てる臨床は自分に向いていたのだと思います。

大学病院で働く医者について。 
 大学病院で勤務されている方は分かると思いますが、大学病院で(研修後に)勤務する医師の役割は3つあります。
 ①臨床 ②教育 ③研究
 私の中での比重はやはり臨床が中心で、正直、自分が研究をして論文を書いたり、学会で何か発表したり、それこそ留学だなんて、医師になりたての頃は考えてもいませんでした。そういうことは頭のいい、小難しいことをいつも考えているような先生がやることであって、私のような遊び(旅行)好きのふらふらしている人がやることではないと思っていました。

 とは言っても、せっかくだから毎年新しいことに挑戦していこうと思った私は、専門医資格を取得する、指導医を取得する、学会参加・発表する(国内、国際学会)、論文を書いてみる、などなど毎年新たなことを経験するように日々過ごしていました。
 そうこうしているうちに、専門医(いわゆる内科とか外科とか)に加えたサブスペシャリティの資格も取ってみようかしらと思うようになり、こちらもいろいろと試験や講習を受けて勉強した後に無事いくつかのサブスペシャリティが出来ました。
 不思議なもので、専門性が高まってくると、その分野の仕事も増えますし(専門医試験を作ったりとか、教育する方になるので)、そちらのことについていやでも詳しくなります。年を重ねればどんどん後輩も入ってきて、医師だけではなく学生の教育にも関わるようになります。こういうのが好きではなくて、とにかく臨床だけやりたいと思う人は、だいたい6-7年目くらいで大学病院はやめていきます。私の同期は7人いましたが、私以外みんな、資格を取得した後は辞めて、市中病院に移っていきました。(大学病院の医師は基本的に教職員扱いなので給料が市中病院よりも少ないのもその理由かもしれません)
 私は臨床が好きだったのですが、やはり、やるならば最先端の知識、そして可能であれば今やっていることよりもより効果的な、低侵襲な介入方法を臨床場面で見つけていくことができればと思っていました。そこで始めたのが臨床研究でした。

臨床研究とは?
 言葉の通りですが、臨床を土台にした研究になります。「医療における疾病の予防方法、診断方法及び治療方法の改善、疾病病原および病態の理解並びに患者の生活の質の向上を目的として実施される医学系研究であって、人を対象とするもの」を臨床研究と呼びます。おそらく、一般的に研究と言って思い浮かぶのは、なんかビーカーとかで混ぜ混ぜしたり、機械を使って何かを解析したり、マウスとかに何かお薬飲ませて効果を見たり、そういうイメージが強いのではないでしょうか?こちらの方は基礎研究と呼ばれると思いますが、正直私の頭ではついていける気もせず、あまり興味もありませんでした。
 臨床研究の良いところは、臨床場面に近く、生の患者さんの意見や、反応も取り入れた上での研究であり、結果そのものが自分自身の今後の臨床につなげられることだと私は思っています。やったらやっただけ、自分のスキルにもつながります。そしてその結果をまとめて論文などで世界に共有すると、違う文化圏での臨床状況を学べたり、意見を交換することもできるようになってきます。
 結果的に、私はこの臨床研究で、医師歴10年ちょっとで医学博士号を取得することができました(大学院には行っていません)。

やっと留学の話。
 前置きが長くなりましたが、医者を10年くらいしていると、大体のことは何とか臨床場面では対応できるようになります。しかし、臨床の場面で「日本ではやられていないけれど海外では有効」と報告されているものがとてつもなくたくさんあることも知るようになってきます。薬だけではなく、様々な治療法が、まだ日本ではできないけれどほかの国ではやられていて、しかも良いらしい!という情報を知るにつれ、私は、それを知りたい、日本との違いは何なのか、自分が今やっている治療法と国外の患者さんの反応の違いなどを学んでみたいと思うようになりました。
 異なる文化圏、患者背景が今現在の臨床でどのような差を生んでいるのか、日本に取り入れられるものがあるか、知るためには現場を見てみたい、見るためにはそこに行かねばならない。そう思い始めた時、ようやっと留学を考えるようになりました。

いつでも遅くないし、チャンスがあれば行ってみるのもひとつ。
 留学をしているほかの周りの人を見ると、当たり前ですが、自分より若い方が大半です。私は若い時期(今もですが)、本当に日本で楽しく過ごしていて、海外は旅行するので十分かなと思っていました。正直、留学している今でも、すぐ帰れるなら、日本で普通にコンビニやドンキに24時間行きたいときに行って、夜は居酒屋やカラオケ、ライブに行って、週末は温泉に入ったりしたいです。日々、日本のありがたみを実感しています。しかし、せっかく得られた機会なので、少しでも多くのことを学んで経験して帰国できればと思っています。
 おそらくこれを見られている方の中には、留学をしたいけど、滞在方法が決まらないからできないという人もいるでしょう。私自身、ドイツに来てからも数か月はどのような形で滞在許可証を得られるかもわかっていませんでした。30歳はとうに過ぎているのでもちろんワーホリもできませんし、当初は語学滞在ビザの申請をするかとも思っていました。現地に来てみて、いろいろとつながりができ、研究滞在許可証を得られました。
 
 これから、それぞれ行った手続きなどをまとめて記載していこうと思いますので、ご興味があれば読んでいただければと思います。

 


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