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#28 小説『メディック!』【第5章】5-7 (宗次×亜希央)+ 俺 もう一人の同期

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 訓練終了後、勇登は宗次に呼び出され、橋の上に来た。

「浅井さんって、扉全閉してても、勢いだけでぶち破ってくるような人だな」
 宗次が呆れ顔で、でも少し嬉しそうにいった。

「俺、そういう人、他にも知ってる」
 勇登には母の顔が思い浮かんでいた。
 ただ、彼女の場合は、開かないドアは開くまで執拗にノックし続ける感じだろうか。それはそれで恐ろしい。
「WAFはそういうやつが多いのかもな。自衛隊だし」

 勇登はそういって笑うと、宗次も笑顔でいった。
「でも、今回は本当に助かった。今度、お礼しなきゃな」

 目の前の誘導路を、真っ赤に染まったC-130が滑走していく。今日の飛行場地区はどこか美しく見えた。

 しばらくすると宗次が口を開いた。
「勇登にさ、試験の日に俺が感動したって話しただろ。それまではただ強くなりたいって漠然とした想いだったけど、あの日目指すべきビジョンがはっきりと見えたんだ。入校してみて、急にあんな風になれるわけじゃない、って痛いほどわかった。苦しいし、つらいけど、あの光景が俺を支えた。だから、絶対にやめたくなかったんだ。今回の訓練が終わって、怖さや不安を乗り越える勇気のある人が、強い人間なんだって思うようになった」

「そうだな」

「……あのとき、浅井3曹のロープ、すっごくきつく縛ってあった。俺、信用してもらえたのかな」

 それをきいた勇登は、男らし過ぎる亜希央にちょっと嫉妬した。
「そうかもな。でも、俺ははじめから宗次なら大丈夫だ、って思ってたぜ」

 宗次は苦笑いした。
「ほんとかよ。俺のことストーキングしてただけな気がする」

「ひっで、俺はなあ……!」

「わかってる。そばにいてくれたんだよな。ありがとうな。勇登」

 あまりに素直な宗次の言葉に、勇登の顔も赤くなった。
 それを見て宗次は笑ったかと思うと、急に真顔になった。
「なあ、勇登」
 宗次は勇登に一歩にじり寄ると、目をじっと見てきた。

「な、なんだよ」
 勇登は心の中を見透かされそうな気がして、目を逸らした。

「愛してるよ」

「――なっ!」
 勇登が耳まで真っ赤になると、それを見た宗次は、腹を抱えてげらげらと笑った。

 5枚目の写真撮影は、吉海の提案でプールの前ですることになった。プールサイドでは亜希央が待っていた。どうやら、吉海が手配したらしい。

「なんだ、こいつは関係ないだろ」
 そういうジョンを、剣山が穏やかに絞めた。
 亜希央は「やっぱり、帰る!」といい出したが、吉海がうまいことなだめて、撮影に持ち込んだ。

 海パン姿の男五人と、作業服でそっぽを向いた亜希央の写真は、宗次にとって思い出の1枚となった。

第6章へつづく

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※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、組織、名称とは一切関係ありません。

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