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少女と虹のエンジェル Ⅲ


 翼が背にあるという感覚は殆どなかったが、呼吸が今までが嘘みたいに楽で、身体がエネルギーで満たされとても軽く・・・自由自在に思うがままにダンスができた

カノンの曲が終わるのがあっと言う間だった エンジェルは微笑みながら拍手をした

「ブラボー とっても良かったよ 合格間違いナシだ」
 照れながら「ありがとうございます。」と深々と礼をした
「一つだけ注意しなきゃいけないことがあるんだ」
「何ですか、それは?」
「この翼は、こゝろと同調していて、心的なエネルギーを全開すると翼
 はそのエネルギーに見合ったぶんだけ限界を超えて跳ぼうとするんだ
 そして翼が全開すると・・・それは人としての『矩』を超えてしまう
 ことになる シンプルに言えば空を飛べる」
「・・・・・・・」
「だから、こゝろの働きをセーブし、動き過ぎてはいけないというこ
 と」
「何だか、怖い・・・」
「大丈夫、選考会まではまだ日がある ここは後何回何時間借りること
 が出来るの?」
「今、吹奏楽部は来月の地区大会の為合宿でほぼ毎日午後一時から五時
 迄借りら れるわ」
「じゃあ 大丈夫 充分に慣れるから心配いらないよ」
「はい、わかりました」

「一つ尋ねていいかな?」 「ええ、どうぞ」
「何故 ダンスなの?」
「あぁ、私、小児喘息で虚弱だったの、学校あまり行けなくて、そのた
 めに虐められて・・・・・・中学生になって喘息がなくなり 身体も
 大きくなって・・・・・・大晦日の深夜に『天井桟敷の人々』という
 映画を視てパントマイムに魅せられて・・・最初はマイムだったのだ
 けど・・・母がシュタイナー教育に熱心で 一時期その学校に通ってい
 たの・・・そこではオイリュトミーっていう舞踏教育があって 身体で
 表現することの歓びを教えて貰ったの・・・」
「いいお母さんだね」
「シュタイナー教育は少し宗教的な側面があって、なんでも神智学って
 呼ぶのだけど、母はそれについていけなくて、半年で辞めたの・・・
 でも身体を動かしたくて・・・クラッシックバレエ・モダンダンス・
 ジャズダンスとかチョイ囓りだけど色々首を突っ込んでね・・・・・
 結局、今のダンスのカタチになったんだけれど・・・なかなか新しい
 境地にはたどり着けなくて、そして足を痛めて最悪の時に今日あなた
 と出会って・・・あなたのおかげで勝負出来そう・・・ほんとうにあ
 りがとう」

エンジェルは微笑みを絶やさず聞き入って何も言わなかった

「でも、あなたがやっぱり心配・・・此処で生きていけるのほんとう
 に?」
「大丈夫、エンジェルは美しい印象の食物で生きているから、物質的な
 モノを口にしなくても大丈夫だし、木の上で眠るから心配せずに練習
 に励んで下さい」
「わかりました 練習見守って下さいね そうしたら安心して跳べるか
 ら・・・」
「勿論、そのつもりだよ・・・じゃぁ、明日又此処で」と言ってエンジ
 ェルは教室の扉を開けて歩いて行った それを視て少女は何だか可笑し
 く笑顔になった                    Ⅳに続く

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