オィディプスとアンジェラ Ⅶ
碧い海 漣 光の乱反射は網膜に影の綾を奔らせる
周りの世界に気を配らなくとも必要なことだけが<知らせ>として入ってくる
その流れが少しわかりだしているディプは以前より遙かに世界と対峙している
感覚が鋭敏になって時折深い眠りに誘われるが・・・それは漣の潮騒と陽の光彩が織りなすリズムが心地よいせいかもしれないと感じながら
・・・・・
ディプ独白:
ほんとうを云えば・・・私はあらゆる世間の漆喰から逃れて遥か群衆を離れて 一人乞食の道を歩むべきなのかも知れぬが・・・群れより離れればただの浮草 それが相応しいとも想えるがその道はまた閉じられた私の内的世界の自己満足でしかないように想える・・・だが そうであってはならない どんな身になろうとも 微かなる光の恩寵、これに突き動かされて何かを為すことこそ真(まこと)あるいのちの在り方に違いない
この微かなる光でしか視られない世界は 私がほんとうに視る必要があるものだけを感じさせてくれるに違いない 私は私のこの生を拓いていくだけだ・・・・・・だがほんとうは完全に盲いた闇の世界に生き・・
・・・・・・ただ音と気配だけを頼りに生きるべきではないか?
いずれにしろ私はオイディプス王ではなく・・・薄明と音と意識と撓む新感覚によって新たな生を生ききる他はない・・・不思議に不安はなく むしろ高揚感で一杯だ・・・どのようなカ・タ・チであれ生きて在ることほど素晴らしいことはない!
アンジェラの独白:
ここまでついて来られた・・・<義>・・・ご一緒するのが義と自然に言葉が出たが・・・ほんとうの処 何処までお役に立てるかが気がかりだった・・・いや それでは駄目なことがわかった 主従の関係で甘んじてはいけない ほんとうに世界を切り開いていくのだ 私もまた私自身の世界を見事に作り出そうではないか!私は私の人生を輝かせる!
ア ン 島影が見えました
ディプ 上陸すれば、忙しくなるな アンよろしくな
ア ン はい この島にはもしかしたら遠い妹が居るかも知れません
ディプ そうか アンジェリーターに会えたら良いなぁ 同じ歳だか
ら・・・
ア ン 二十歳です
ディプ 目映い歳だ うん 彼女も一座に参加というのはどうだ?
ア ン 有難いお言葉です ですがアンジェリーター次第と云うこと
で・・・
ディプ わかった 廻り逢いがすべてを決める さて ロードス島だ!
第一部 完
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