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オイディプスとアンジェラ ⅩⅢ


オイディプスはそう言って小屋の外に出た途端何かが違うと感じた
光が溢れるように差し込み 網膜には遠慮がちに光が集まった
闇を求めて盲しいた私だが・・・今は光が欲しい・・・とても

嗚呼 やはり外でなければならないと鋭く感じ入った
光だけでなく<外>では、風も 香りも 天と地も鋭く感じられる 
舞は夕であれ 夜であれ<外>でなければならない・・・構成などいらない・・・ただただひたすらに感じ入れば良いのだ・・・そうすればどう動くべきかが自然にわかる いや 導いてくれる・・・無になって受け入れれば・・・そう それだけでいいのだ
  
オイディプスはアンジェラを呼んだ
ディプ すまぬが先程の岩場に連れて行ってくれ そこで修練する
ア ン そうですか わかりました カリスも一緒に行きます

理由を聞かずに従ってくれるアンジェラに何か言葉と想いながらも 
言葉が出てこなかった こゝろの裡で深くありがとうと呟いた

岩場に着くと二人に告げた
ディプ 約束事は二つ 一つは私が軆󠄁を動かす時はそれに合わせて合奏
    をもう一つは 私が動きを止めたら 二人でその<間>を好き
    なように埋めてくれ
ア ン 何処までもディプが感じたことをカタチにすると言うことです
    ねそして 私達もディプの動きで感じたことを旋律にする
ディプ そう その通りだ それが自然で一番良いような気がする

カリスがオイディプスに近寄り神楽鈴を渡し 手文字で「舞の終わりが近づいたら どんなかたちでもいいので合図を送って下さい そしたら私が軽く神楽鈴を鳴らし手渡します あるいは音が鳴らぬよう白布で包んで腰に差すという方法もあります どちらかをお選びになるか また別の考えがあるならなんなりとおっしゃて下さい」

ディプ ありがとう ほんとうにありがとう 未だどのような状況でど
    のような<場>かもわからぬ故即答が出来ないが・・・予め用
    意周到に考えておくのはいいことだと想う
ア ン  先にカリスから考えを聞いておりました 私も何か考えます
ディプ 二人ともありがとう 今日は日暮れまで練習して 明日はまず
    Kagura一座のYakamotiに合って話し合おう こちらで一方的に
    考えても受け入れて貰えるかどうかはわからぬ故
ア ン わかりました 練習後Yakamotiに繋ぎを付けて明日の予定を聞
    いて参ります
ディプ うん よろしく頼む
カリス 今夜は小屋でお休み下さいね
ディプ 重ね重ね申し訳ないがそうさせて頂く・・・では 舞を始める 

オイディプスは手足の筋肉を入念にほぐし また呼吸を整え 今立っている この場の世界の波動を軆󠄁全体で受け止めて対話し ゆっくりと軆󠄁を動かした

オイディプス モノローグ
「朝は言葉が発するイメージをを追いかけて軆󠄁を動かした だが言葉に依存すると軆󠄁の動きには限界があることがわかった 言葉ではなく今の今置かれた環境<場>に意識を集中して さらに深く無意識にまで降りてゆきながら舞のエネルギーを掘り起こすのだ・・・多分これが自然で何処でも対応出来るカタチだ・・・・・・それにしても世界は影絵で動く・・・」

オイディプスは右手を差し出し 陽の光を受け取りそれを軆󠄁の隅々まで満たした
そして仕掛かり踏み出した いきなり大きく跳躍し着地と同時に右足で円を描き一回転し両手を交差し後ろに羽根のように広げて羽ばたいた その羽ばたきの動作を繰り返しながら 円を描き舞った  まるで空を跳び立ちたい鳥が跳び立てずに苦悶しながら跳びたつことの夢だけを抱いて生きようとしていた しばらくその動作が続き 少しずつ飛び立つことへの情動がカタチを創り出して来た そしてついに大きな跳躍  軽やかに着地し連続して跳躍を重ねてついに跳びたった姿を軆󠄁全体で現して静かに動きを止めた すかさずカシスが神楽鈴を静かに流しながらオイディプスの方へと寄りそい手渡した オイディプスは柄を右手で掴み場と軆󠄁を浄めるがごとく打ち鳴らし左足で円を描いて神楽鈴を胸に抱き頭を垂れ不動のカタチをとった 

アンとカシスはオイディプスの舞に合わせて合奏が出来なかった 
オイディプスの舞に圧倒されて沈黙の裡で見守るだけだった 終えた後に二人は静かなエンディングの旋律を奏でるのが精一杯だった
                         
                          ⅩⅣに続く


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