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1980年代に言われた“世界最高の生活”とは?

私がジャーナリズムの仕事に就いたのは1986年。前年のニューヨークでG5(先進5か国・蔵相・中央銀行総裁会議)が「プラザ合意」で“円高ドル安容認”を打ち出したことから日本はバブル経済に向かい始めていた。当時、金融業界で言われていた“世界最高の生活”とは?35年経った今、改めて考える。

〇1980年代の“世界最高の生活”

アメリカと中国は今や世界の超大国だが、トランプ大統領と習近平国家主席は先日、オンラインで開催された国連総会でも相手国を非難するという対立が続いている。1986年のことである。アメリカと中国とイギリスと日本の4つの国を引き合いに出して“世界最高の生活”とは、こういうものだという話を耳にした。35年間のことなので時代錯誤的な見方があるが容赦願いたい。それは「アメリカの給料をもらって、中国の食事をとり、イギリスの家に住んで、日本の女性と結婚する」というもの

〇1980年代の世界情勢は…

アメリカは当時、レーガン大統領が打ち出したレーガノミクスと呼ばれる経済政策を推進、ライバル国であるゴルバチョフ書記長(後に大統領)のソビエト連邦よりも国力を持ち、名実ともにナンバーワンだった。一方、中国の最高実力者は鄧小平氏で改革開放路線を進め、社会主義市場経済を導入し始めたばかり。イギリスは鉄の女と呼ばれたサッチャー首相が「新自由主義を唱えたものの、経済の立て直しはうまくいかず、福祉国家であるはずのイギリスは失業者が溢れる事態になっていた。イギリスの住宅は世界でも評価されていて今も築100年から200年の家で人々は暮らしている。日本は中曽根首相の時代。

〇“世界最悪の生活”と格差拡大

これとは逆に“世界最悪の生活”というのもあった。これも同じ4つの国を引き合いにして「中国の給料をもらって、イギリスの食事を食べ、日本の家に住んで、アメリカの女性と結婚する」というもの。現在と比較すると状況は全く異なっている。中国はGDP=国際総生産で言えばアメリカに次いで世界第二位、近くアメリカを抜く勢い。最近まで“爆買い”で日本の消費経済を支えていた。アメリカの女性というのは、当時の言葉で“ウーマンリブ”のことを指しているのだろう。そもそも今は性別でものを考える時代ではなくなっている。イギリスの食事は確かに“フィッシュ&チップス”と言われるものくらいしか思いつかない。日本の家は昔から“ウサギ小屋”と言われ世界と比べると小さくて狭い。これは今も変わらない。家賃も高く住宅事情は一向に良くなっていない。一つ言えるのはアメリカでも中国でも日本でも確実に格差が拡大しているということだ。トランプ大統領政権はアメリカ社会の格差問題を悪化させたという批判がある。一方、中国共産党の上層部が今一番心配していることは中国で共産革命が起こることだと言った政府関係者がいた。特にコロナ時代の今、格差が広がっているのは間違いない。

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