マガジンのカバー画像

教員のための「総譜」

16
教員として働く中で、どんな価値基準も持つべきなのか、どんな語彙を持つべきなのかを考えていくマガジンです。もうすぐ教員生活も10年目を迎えてしまうので、今まで出会ってきた言説をまと…
運営しているクリエイター

記事一覧

なぜ生徒に「かわいい」と言ってはいけないか

 今日は短めに。「かわいい」という言葉の正体についてです。ちなみに、ルッキズムの話ではあ…

小田垣有輝
2週間前
6

ナショナリズム幻想と「発話」による排除

「〇〇人である」という規定の不可能性 「日本人」とは一体誰なのか。  結論から言えば、「…

小田垣有輝
3週間前
9

名もなき「当意即妙」のために

 「当意即妙」…その場にうまく適応した即座の機転をきかすさま。  この当意即妙の様が主題…

小田垣有輝
5か月前
8

教員の「問い返される」権利

いつだって、教員は生徒から「あなたの言葉は正当なのか」という問いをつきつけられている。 …

小田垣有輝
5か月前
11

無言を分かつ ~小池陽慈『ぼっち現代文 わかり合えない私たちのための〈読解力〉入…

 みなさんもご存じの通り、小池陽慈という作家は「学習参考書の皮を被った哲学書」をバンバン…

小田垣有輝
8か月前
25

「べき論」を恐れる必要はない

noteを書くときにデフォルトで表示されている「ご自由にお書きください」って文字を見るたびに…

10

「弱さ」をシェアするチームになる

「弱さ」を受け入れるための「強さ」  生徒と信頼関係を築くためには、教員が自身の不安と向き合い、時にはそれを生徒に吐露することも必要である。これはこのマガジンの最初の記事でも書いている。教員がいつでも正しくいようとするがゆえに、自己の不安を抑圧し、生徒を支配していく。  しかし、自分の弱さや不安と常に対峙することに必要なエネルギー量は膨大である。自分の行っていること・言っていることは間違っているのではないか、生徒の言っていることの方が正しいのではないか、と自己の言葉を常に相

「文学教育」の領域はどこからどこまで?

 これが発端だったわけだけど、やっぱり『高瀬舟』で安楽死を論ずるのはかなりやばい営みだと…

42

生徒が教員の言うことを聞かないのは正しい

 教員になってから「どうして生徒は言うことを聞いてくれないのだろう」と悩むときが来る。し…

11

「やれ」と「やってみよう」はいずれにしても「やらない」を許さない

 むかーしの日記で尾崎豊の歌詞を引用した気がしたのですが、やっぱり学校にあるものはどこま…

11

グローバル社会を再検討するための「遅さ」

 前回の記事では、教育現場における「遅さ」の重要性について論じてきた。  良質な議論を形…

6

「遅さ」に重点を置こう

 先週の記事では、決断することに疲れているのではなく、合議することに疲れ、忌避していると…

3

道綱母を見習って「合議」の道へ

決断ではなく「合議疲れ」  「決断」という言葉に着目して今のところ議論を進めているけど、…

3

決断を忌避する「男」たち

 前回の続きですが、『メロス』に登場する暴君ディオニスこそ、「決断疲れ」に憑りつかれた人物だったように思える。どの人間を信じていいか、疑っていいかわからなくなり、すべての人間を疑うようになってしまった者。これがすべての他者を信じることによって決断疲れを回避するのであれば他者に及ぶ危害は少なかったかもしれないが、残念ながらディオニスにはすべての他者を信じつくす勇気は備わっていなかった。  目を転じてみれば、学校の国語の授業で読む、いわゆる「定番教材」には、「決断することの恐怖