心理支援サービス付きシングルマザー向けシェアハウス

シングルマザーの居住貧困とシングルマザー向けシェアハウスが注目されている今、運営上の課題解決としても、また、シングルマザーと子どもを地域が支え合う持続可能な社会デザインとしても、遠隔心理支援サービス付きのシングルマザー向けシェアハウスは取り組む価値がある。

シングルマザー向けシェアハウス?

シングルマザー向けシェアハウスが注目されている。シングルマザー向け市エアハウスのポータルサイトがある。

住まいと仕事を探し直し、子育てをするのはたいへんだ。経済的な困難と不安があり、子育てが一筋縄にいかないとき、メンタルヘルスの危機が生じ、解決の行動が起こしにくくなる。子どもにも影響する可能性がある。

しかし、公営住宅は倍率が著しく高い。シングルマザーにとって、生活の資源や環境が適しているなら、シングルマザー向けシェアハウスは一つの選択肢として有用である。

本著者である葛西先生曰く、シングルマザー向けシェアハウスでは、運営上の課題として、恒常的な見守り・相談、人間関係の仲裁、及び精神疾患等の対応が必要になるため、ソーシャルワークやメンタルヘルス支援との連携が重要になる。先行研究をみてみよう。

 ※先行研究はざらっと一見した程度なので、引用間違いや訳間違いなどあるかもしれません。詳しくは原典にあたることをお勧めします。

シングルマザーの精神的健康

シングルマザーの精神的健康については、非シングルマザーと差がないと示されてきたが、ここ10年の研究では、再び、精神的健康・心理的な幸福感が低いことが示されはじめている。最新の研究では、シングルマザーの44%が心理的な苦痛を抱えていることが示されている(Rousou, Kouta, Middleton, & Karanikola,2019)。

そして、母子家庭の割合が着実に増加していることから、この脆弱なシングルマザーとその子どもを支援するために、コミュニティレベルでの介入や戦略の必要性が強調されている(Rousou, Kouta, Middleton, & Karanikola,2019)。

子どもの適応への影響

シングルマザーになることが子どもに及ぼす影響はどうだろうか。

実は、シングルマザーの子どもたちは、母親と父親がいる場合に比べて、心理的問題を経験する可能性は高くない(差がない)と言われている(Golombok, Zadeh, Imrie, Smith, & Freeman,2016)。

ただし、経済的に困難で、子育てストレスが高いと、子どもたちの感情的・行動的問題のレベルが高くなることが示されている(Golombok, Zadeh, Imrie, Smith, & Freeman,2016)。

経済的な困難さは、離婚したシングルマザーや未婚のシングルマザーの子どもの心理的問題の主要な予測因子の一つである(Hetherington & Stanley-Hagan, 2002; McLanahan & Sandefur, 1994; Pryor & Rodgers, 2001; Amato, 2000, 2005; Golombok, Zadeh, Imrie, Smith, & Freeman,2016)。

また、一人親家庭での子育てに関連したストレスも、子どもの適応問題と関連する予測因子の一つである(Amato, 2000, 2005; Dunn et al., 1998; Hetherington & Stanley-Hagan, 1999; Pryor & Rodgers, 2001; Golombok, Zadeh, Imrie, Smith, & Freeman,2016)

 ※ ただし、Golombok, Zadeh, Imrie, Smith, & Freeman(2016)が強調しているように、シングルマザーの家庭は、経済的苦難、子育てストレス、子どもの適応問題との関連において、二人親家庭と差がなく、これらの危険因子は、どのタイプの家族において同様の方法で作用しています。つまり、経済的困難、子育てのストレスは、どの家庭にも共通して、子どもの適応問題を予測する因子のようだ。

低収入の母親の抑うつ状態

この研究は、シングルマザーに限定した調査ではない。未治療の女性のうつ状態は、その女性と子どもたちに悪影響をもたらし、経済状況の改善能力を低下させることが示唆されている(Levy & O'Hara,2010)。

心理療法的介入の難しさと可能性

うつ状態にある低所得の女性に対する心理療法的介入に関する文献をレビューしたLevy & O'Hara(2010)によると、低所得者層の女性は、うつ病の罹患率が非常に高く、心理療法の治療を求めたり、受け入れたり、参加したり、恩恵を受けたりすることができないような、多くの独自の障壁に直面している。うつ病が治療されていない場合には、女性とその子どもたちに有害な心理的影響を及ぼすことが多く、経済的な状況を改善する能力を低下させることもある。

うつ病や低所得の女性が心理療法に参加することは非常に困難であるが、標準的な心理療法のアプローチの多くは有望であることが示されている。ただし、現在利用可能な介入の多くは、このような人々が治療に参加することを妨げている障壁に十分に対処できていないことがわかっている。さらに、治療への参加率や離脱率が保たれるなら、臨床的改善が見込めることが示されている(Levy & O'Hara,2010)。鍵は、心理支援のサービスを受けれる環境設計にあるかもしれない。

心理支援サービス付きシングルマザー向けシェアハウス?

心理支援サービス付きシングルマザー向けシェアハウスがあれば、どうだろうか。毎日忙しいシングルマザーが、心理支援サービスにアクセスするには容易でない。ならば、遠隔でのサービスが良いかもしれない。遠隔心理支援サービスについては、金子書房の記事が詳しい。

たとえば、「年に3回、子育てと対人関係の悩みをはじめ、どんなことでも相談できる」などのサービス付きであれる。空き部屋があるなら、子どもが寝静まった時間帯にビデオ会議ツールで相談することもできる。

これなら、運営上の課題となっている、「恒常的な見守り・相談、人間関係の仲裁、及び精神疾患等の対応」(葛西先生、講演より抜粋)にも応えることができる。できるだけ安価にサービスが提供する工夫として、また、先端的な取り組みとして研究と兼ねて、パイロットスタディとして無償提供できる可能性もあるかもしれない。