バスが揺れる

君とバスに乗っている夢を見た
眼鏡をかけて小説をめくる君を
1番後ろの椅子から
ずっと見つめていた
ふと誰かが話しかけて
君が振り返った
見ていたことがばれないように
わざとらしく床の模様を目でなぞった

君が好きだった
その前髪と、明るくも暗くも無い性格と
穏やかそうに見えて熱い心と
あの時坂の途中で話しかけてくれたこと
その全部が好きだった

「矯正外れたらもっとモテちゃうね」
なんてあたかも気にしてないかのように
ふと口をついて出てしまったけれど
本当はそのままでいて欲しかった
あの時の君が1番輝いていた

答え合わせは1年後、古着を着て
髪を染めて、タバコをふかす君がいた
僕は落ち着いて
「大人っぽくなったね」
なんて言ったけど
そんな君がすごく嫌で
僕の好きだった君が可哀想で
それでもやっぱり好きだった

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