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「アソーカ」シーズン1の見所紹介

ディズニープラスで配信中の「スター・ウォーズ」シリーズの傑作ドラマ作品「アソーカ」シーズン1を私なりの見所や楽しみ方と合わせて紹介していきます。

基本的に視聴済みの「スター・ウォーズ」初心者の方に向けた解説記事です。各エピソードのあらすじについてはなるべく「結末は見てのお楽しみ」という形で物語のさわりを紹介していますが、完全なネタバレ回避にはなっていません。

また、アニメシリーズ「反乱者たち」と「マンダロリアン」シーズン3の結末や一部サプライズ要素(公式SNSアカウント等では公開されている情報ですが)にも触れています。以上の点にご注意ください。


アソーカとフィローニの15年

今作の製作総指揮と脚本を務めるデイブ・フィローニは引退した原作者ジョージ・ルーカスから彼と共に制作してきた「クローン・ウォーズ」を引き継ぎ、ディズニー体制以降は複数のスピンオフ映像作品を制作してスター・ウォーズの人気を支えてきたファンからも信頼の厚い人物です。2008年の誕生から現在に至るまでアソーカの物語を主にアニメ作品で描き続けて来ました。

アニメシリーズ「反乱者たち」のメイキングによればデイブ・フィローニは常に先々の事を考えていて、同作が「クローン・ウォーズ」シリーズの制作中から構想されていた事をスタッフが明かしています。

ディズニー体制以降に制定された「正史」の外にあったスピンオフ3部作小説からスローン提督を蘇らせたからには小説と同じような戦いと結末を描くつもりが最初からあり、そこにアソーカを絡ませるという構想は初期からあったのではないかと想像します。

サビーヌ・レンとカイロ・レンは無関係です

2019年から始まったスター・ウォーズのドラマシリーズでは帝国軍残党インペリアル・レムナントの暗躍が描かれてきました。新共和国がまだ戦後の混乱にあるなかで、密かに軍事力を増強する彼らの反撃の要となるのが知将スローンの帰還です。

「マンダロリアン」シーズン2にて、その兆しを察知したアソーカによって捕らえられたスローンの使徒エルズベスが新共和国に移送される場面から物語が始まります。

オープニングクロールは独自に翻訳したもので本編とは表現が少し異なります

第1話

このドラマはジョージ・ルーカスが制作した映画シリーズではあまり描かれなかった「師弟の話」が主題となっています。映画では主に「親子の話」が描かれましたが、両者に共通するのは「遺伝」「継承」(教育)です。このテーマは「マンダロリアン」「ボバ・フェット」「キャシアン・アンドー」でも共通的に取り上げられています。

ルーク・スカイウォーカーにはアナキンにも備わっていた強いフォース感能力が生物的な遺伝としてありましたが、彼の育ての親はラーズ夫妻でありアナキンからの行動的な遺伝はありませんでした。ルークは失敗者である老オビ=ワンと老ヨーダからごく短期間の教えを受け、その他は銀河のジェダイに縁にある場所を訪れて遺物から学びます。その事がグローグーへの不理解や続3部作での物語に繋がっていきます。

アナキンや彼の師匠オビ=ワン・ケノービ、クワイ=ガン・ジン、ドゥークーやそれ以前のジェダイ(特に直感と優しさを重んじる者たち)から継承されてきた教え=行動的な遺伝を継ぐものがアソーカです。彼女もまた自身が学んだ事を新たな世代に託そうとしますが、弟子として選んだのはジェダイの素質が低いマンダロリアンという種族のサビーヌでした。

しかしサビーヌの才能は開花せず師弟関係は断たれ互いの信頼も揺らいでアソーカには迷いが生まれています。

第1話についてはこちらの記事でも詳しく紹介しています。

第2話

サビーヌが所属していた反乱組織スペクターズで母親的な存在だったヘラのサビーヌへの理解度の高さがこのエピソードの見所の一つです。
造船所で交わされるヘラとの会話でアソーカのサビーヌに対する諦め気味な言動や第3話での指導中の振る舞いが対比的に描かれます。

エピソードの舞台となるコレリアはハン・ソロの出身惑星として最初の映画作品「エピソード4 新たなる希望」の小説に登場。実写としては2016年の映画「ハン・ソロ」以来の登場です。造船業が盛んな惑星です。


第3話

ジオノ議員演じる俳優ネルソン・リーさんが仲野太賀さん似で配信時話題に

「マンダロリアン」サーガでも語られますが、新共和国の時代においても銀河の中央政府は辺境での異変に関心がありません。モン・モスマ、ジオノ議員とヘラの会話の様子は「キャシアン・アンドー」シーズン1 第4話における予算の使い道への叱責や当初組織的な反乱の兆候に懐疑的だった帝国保安局のユラーレン提督、ブレヴィンとデドラのやりとりにオーバーラップします。

スローンの生存調査がエズラ捜索とイコールであるために生じた誤解でもありますが、どの作品でもまともなのは常にマイノリティです。
内戦時に亡命し、反乱同盟軍の指導者として第2デス・スター攻略に貢献したモン・モスマはレイア・オーガナとともに再び議会を戦いの場としています。


第4話〜第5話

第5話の邦題は黒澤明の「影武者」由来としても物語の内容から直訳であるべき

第4話、アソーカはエズラ救出より地図の破壊=任務優先する覚悟をサビーヌに強います。その言動に「クローン・ウォーズ」のオビ=ワンやメイス・ウィンドゥなど旧いジェダイの振る舞いが思い起こされます。

シンに指揮を命じ「お前なら出来る」と励ましつつ失敗を確信しているベイランは悪い師の形ですね。自身の目的のためにシンの「力」への強い関心を利用しているようにも見えます。
たとえ新共和国に変わろうとも中央政府が機能不全に陥っている事をベイランも憂えていて、その解決がスローンがもたらす再度の破壊=大義だと信じているらしいことがその台詞から覗えます。

第5話は中盤のクライマックスでした。
長年アニメシリーズを追ってきたファンにはご褒美的なエピソードであり、アソーカが修行を全うする重要な回となりました。カット単位で様々な時期のアナキンの容姿が見られるのも眼福でした。
アソーカが体験するビジョンではライロスの戦いを思わせる戦場が。実際のエピソードではアソーカは地上には降りていないのでアナキンとアソーカの記憶が融合した世界と言えます。

アナキンの教えは「生きる」こと。アナキンはアソーカに生きて欲しい。それはアソーカ初登場の映画作品「クローン・ウォーズ」から一貫しています。

かつての定型的なジェダイのように聖者(=生命としては脆くなるという矛盾を抱える)であろうとするアソーカですが、裏を返すとアナキンと同じ道を歩む事への反発と恐れとも取れます。また「テイルズ・オブ・ジェダイ」ではアソーカの母親パヴ=ティが赤子のアソーカにこう教えます。

「死」に対しての、また自分がアナキンと同じ道を歩むかもしれないという「恐れ」という自分のなかの暗黒面と向き合い強い意志と直感でそのバランスを制御する事が重要であるということなのだろうと思います。

救助され面具を外したアソーカの姿はやはり「テイルズ・オブ・ジェダイ」の赤子の姿が想起され、彼女がビジョンの中での修行を完了し、再誕した事を表現しているように見えました。アニメにおける虎との交流が、パーギルとの交信成功の伏線だったことも解ります。


物語の舞台は遙か彼方の別の銀河へ。
ペリディアに追放されるも生存していたスローンは何らかの方法で蘇らせた魔女と結託し、元の銀河に帰還するための計画を進めていました。

マンダロアのベスカー/アーマーにせよカミーノのクローン技術にせよ現地の文化を利用して最終的に奪うのが帝国のやり口です。しかしベイランの指摘のようにスローンには魔法が支配するアウェイな環境から逃れようとする焦りが感じられます。

サビーヌは解放されエズラ捜索へ。早々に手がかりを見つけるのはご都合的ですが、全ての生命に宿るミディ=クロリアンを通じてフォースの意志が作用したと考えればパーギルや狼がその媒介になっていると見ることができます。狼といえばケイナン・ジャラスが連想されますが、フォースの一部となった彼の導きもあるのではと仮定すると感慨深いものがあります。


ベイランと別れたシンの行動はシスの起源の再現のようにも

全てのシリーズの基礎となっている映画第1作目の「スター・ウォーズ (エピソード4 新たなる希望)」の構成要素をざっくり分類すると主に「神話」「ファンタジー」「戦争」「テクノロジー」「日本の時代劇」「西部劇」「海賊映画」「ディストピアSF」などが挙げられます。

スピンオフ作品ではこれらの要素の配分量の違いで作品の個性が別れていて、ドラマシリーズは差が顕著です。「アソーカ」では「神話」や「ファンタジー」の濃度が特に高く、物語の中においてもこうした魔法的/超常的な文化の起源がペリディアのある「彼方の銀河」にあり、そこが元の銀河とは理のやや異なる世界であろう事がベイランや魔女達の、あるいはジオノ議員のセリフからメタ的に示唆されます。(個人的には「ウィロー」の舞台もこちらの銀河にあったら良いなぁ。)

そして物語はクライマックスへ。
型破りなジェダイの継承者、マンダロリアン・ジェダイ、元盗賊ジェダイのコンビネーションがスローンの計画の阻止に挑みます。

エンドクレジットの星図はペリディアへの道程を表しているようですが、それがパーギルの渡りルートなのか、太古のペリディアからの入植経路の逆行なのか詳細は不明です。「反乱者たち」で激戦が描かれたガレルやマンダロア、アソーカの最初のマスターのプロ・クーンが命を落としたケイト・ニモーディアなど登場人物たちと縁のある惑星の名前も見られました。


記事の解説は私個人の考えが含まれています。人それぞれ、様々な捉え方ができる作品ですね。ご覧になった方はどんな事を感じられたでしょうか。
本作も賛否あるようですが、私にとっては最高に楽しめる作品でした。ありがとう!デイブ・フィローニ!

アソーカの物語は複数の作品のクロスオーバーによって出来上がっていますので、もしこのドラマでアソーカ・タノに興味を持って頂けましたらぜひ関連する他の作品のご視聴も強くお薦めします。

スローンに協力する魔女達の目的とは?地下墓地から持ち帰ったものの正体と用途とは?ベイランが目指す先にあるものとは?そしてアソーカとサビーヌの運命は?制作が発表された「シーズン2」と帝国軍残党との戦いの完結篇となる映画作品も大いに期待しています。



アソーカ非公式ガイダンス

この記事で紹介した作品のあらすじと補足情報をまとめたガイダンスはこちらです。

2023年はコロナ禍の遅れてきた影響もあって公私でかなり厳しかったもので、記事作成に大分時間が掛かってしまいました。スター・ウォーズの国内普及の応援を目的としつつ私にとってはストレス発散&癒しの趣味でもありますから、ゆっくりとですが仕事の合間で続けていきたいと思いますので本年もどうぞよろしくお願いいたします。


アソーカ・タノに欠かせない10のエピソード