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タスク管理ってどうしてます?

職業柄パソコンを長時間さわる彼らは、共通の感覚を持っています。それは「仕事が面白いわけではない。仕事を工夫しているときが面白いのである」というもの。そんな彼らが夜な夜な Discord のサーバーに集まって、パソコンやスマホのツールについてたらたらと話をしています。

登場人物

  • イズミ 職業ディレクター。好きなボールペンはゼブラのサラサ。

  • ゲン 職業デザイナー、ボドゲクリエイター。三度の飯よりメモが好き。

  • ピエール 職業コピーライター。めんどくさがり屋。

タスク管理に歴史あり

イズミ : タスク管理ってどうしてます?

ゲン : これもまた永遠の App Hopping 案件ですね。自分はデジタルタスク管理は Things で行っています。それとはまた別にその日にやるタスクは小型のリーガルパッドに書き出して管理していますね。スーパーで買う食材だけはなぜか Apple リマインダーに入れてます。

イズミ : おしゃれなリーガルパッド使ってんな。リーガルパッドって、この薄黄色がちょっとやる気にさせてくれるよね。

Things のグッドポイントを聞く前に、これまでのタスク管理の歴史を教えてもらおうかしら。

ゲン : Hopping した遍歴はこれですね。

Things ← Wunderlist ← Omnifocus ← Clear

大学時代、UI に感動して使い始めた「Clear」が初 Todo App です。新卒の時に知った GTD の考え方に衝撃を受けて「Omnifocus」に傾倒。UI が微妙で飽きて「Wunderlist」へ。そこからはもっと Apple ネイティブなものを探し求めて、2017 年に「Things」に辿り着き、今に至ります。

上記はそれなりに長い間使っていたものを厳選してるので、実はもっと細かく寄り道していて、大体の Todo App は一通り触ってます。Trello、2Do、Asana、Apple リマインダー、無印良品のチェックリストなど。

イズミ : Clear なつかしい!これとソーシャルマガジンの Flipboard が新しいスマホ UI の寵児として躍り出た時代あったね。しかし見事な App Hopper だな。

GTD を一度通っているということは、構造化したタスク管理とかも試して、今は Things に至ってるということですかね。Things の良さはなんでしょうか。

ゲン : Things の良さって言語化が難しいんですよね。他の Todo App と比較して Apple 製品に調和しているから、空気のような存在でいてくれるというか、脳のメモリを食わないでいてくれるところが好きです。あとは機能が必要最低限なところ。「俺らが用意した機能だけで十分。これでやりくりしろ」っていう潔さが気持ちいい。

一度、Things の開発者に機能要望のメール送ったんですが、「意見ありがとうね。要望があったことは伝えるよ。でも俺たちは機能追加には保守的でめっちゃ検討しながら追加してるんだ。でもこういうフィードバックはありがたいし感謝してるよ(超要約)」って返信きたことがあってかなり信頼感増しました。

イズミ : それは確かにファンになっちゃうやりとりだな。

タスクをデジタルで管理するときの派閥として、階層管理する派と階層管理しない派がいると思うのだけど、そのあたりも Things の哲学的にはミニマリズムで階層管理はしない派?

ゲン : メモもそうですが、階層は極力減らすようにする派閥です。整理が面倒なので新しい箱はなるべく作らず、一番近い箱に入れる感覚。

イズミ : 決まった箱はある感じか。 Inbox と Archive とか?

ゲン : ですね。Things にはデフォルトで Inbox や Today といった箱があるので、そこに基本ぶっこんでます。そこから、

  • Focus → やりたいこと

  • Build → 買いたいもの

  • Zen → 無心でやること

などの自分が決めた箱に入れていくという運用です。

イズミ : なるほど、いいね。

これは泉の観測範囲だけの一般性のない話かもしれないのだけど、階層分けをしないシンプルに運用したがる人は、そもそも分類のためにツールを分けている気がしていて、ゲンちゃんもデジタルとアナログを使い分けていたり、買い物メモは Apple リマインダーという分け方をしていたから、そういうタイプかなと。メタアプリなレイヤーで階層を持っているというか。

ゲン : それはありますね。たとえば観たい映画は Filmarks なので Things には入れない、など。

イズミ : そうそうそういう感じ。結局どれを使うかって「なんとなく定着している」という自分史的経緯でしか説明できなかったりするよね。タスク管理に歴史あり。

行動の流れで自然な位置におく

ゲン : 覚えておければどこに書いてもいいですからね。

イズミ : そうなんだよね。Todo はメモやノートよりも使い捨て度の高い情報だから。

ゲン : 管理するのが目的になってる Todo の時期が自分にもありました。

イズミ : わかります。Todo 管理って方法を模索しているときが最も楽しいものの代表。

ゲン : 自分が把握できるリストの量って限度があるので、50 個も 100 個もフォルダがあっても使いこなせなかったという経験があって今があります。

イズミ : 必要な時に思い出せるところにあればよい。そのためには実は階層ではなく、行動の流れで自然な位置にあればよい。ということだろうね。例えばゲンちゃんはスマホを持たないで買い物にいくことはありえないので Apple リマインダーに落ち着いたのが自然な流れだったように。

ゲン : まさにそれですわ。買い物の時って大体片手塞がってたり忙しない状況なので、そんな時に 2 階層もタップしてられない。だから起動してすぐ見られる Apple リマインダーを使ってるんだと思います。

イズミ : 合理的。他にタスク管理でやってるこだわりみたいなのはありますか。Zen という箱が用意されているのは、覚悟のタスク分類で面白いと思ったけど。

ゲン : Zen は我ながら良い名前だと思ってますね。もうやるしかないよねっていう。

それでいうと、「これがタスクだ」というのをキャッチアップするのって個人的にめっちゃ難しくて、さらにそこから「タスクに追加する」という超難関が連続で待ち受けてるのでそのハードルをいかに低くできるかはこだわってますかね。

前者は意識レベルの問題なので「がんばる」でしかないんですが、後者は工夫しがいがあります。例えば、iPhone の背面トリプルタップで「クリップボードの内容を Things に追加」というショートカットを入れてたり。

イズミ : 工夫がテクい。さすがのショートカット巧者。

追加のハードルというのは確かにあるけど、一方で消化のハードルもありますよね。ポモドーロとかワークログとか消化のハードルを下げる工夫もしてたりしますか。

ゲン : ここまで素晴らしい運用だったのですが、なんと、積んだタスク、まったく消化できてないです。まったくはやや誇張ですが、やりたいこととかはどんどん後回しになり、買いたいものリストだけが粛々と減っていく。ここに関してはどうやって消化しているのか聞きたいですね。

消化のハードル

イズミ : なるほど。そうしたら参考になるかわからないけど、ぼくのタスク管理方法を紹介すると、

  • 締め切りがあるもの → Google カレンダーに作業時間と締切を入れる

  • 締め切りがないもの → アナログの手帳に週区切りで管理する

  • 雑用や瞬殺タスク → Google Todo に入れる

という感じで分けてやってます。

よく「緊急度が高くて大切じゃないタスク」と「緊急度が低くて大切なタスク」という分け方の方針があるけど、この分類は直感的じゃないので、ぼくの場合は解釈をやや変更して分類しています。

  • 緊急度が高くて大切じゃないタスク
    → 大切かどうかの判断は無理なので「締切を守らなかったら誰かに怒られるか、誰かの迷惑になるタスク」

  • 緊急度が低くて大切なタスク
    →やらなくても怒られないけど「やったら誰かに喜ばれたり、自分が嬉しくなるタスク」

というように分けている。

そして締め切りがあるものは Google カレンダーに入れちゃう。どうせ時間を取ってやらないといけないものだからその作業時間も入れちゃう。

そして多分ゲンちゃんが消化できないと言っている、積み残しちゃうタスクというのは締切がないタスクだと思うのだけど、それはアナログの手帳で管理するようにしています。ここがちょっとしたポイントなのだけど、手帳で管理するタスクは週区切りで管理するようにしている。

ゲン : ふたつの分類いいですね。参考にしよう。ここまでは管理の方法ですよね。これからどう消化に繋がっていくのか。

イズミ : 消化については、この週区切りで管理することが効いていて、毎週金曜夜か月曜朝に、週を跨いだタスクについては手作業で移すようにしています。

手帳の最後のページにこういう凡例を貼ってるのだけど、週を跨いだタスクを移す時に「移す」か「諦める」を判断して記号で整理していく。

タスクの整理って「やる」か「諦める」のどちらかのゴールしかないのよ。だから締切のない「やったら誰かに喜ばれたり、自分が嬉しくなるタスク」については自分のやる気に訴えかけるしかない。

やったら誰かに喜ばれるっていうのは、大袈裟にいうと自分の中のサプライズ心であったり、いたずら心を刺激しないとやる気が起きない。やったら驚かれる顔とか、やったら嬉しい自分の気持ちを想像して盛り上げたい。なので仕事時間内よりも、休憩時間や寝る前、朝のプライベートな時間に、パソコンを閉じた状態で、白湯でも啜りながら気持ちを盛り上げるために眺めたい。そういう理由で締切のないタスクについてはアナログ手帳で管理するようにしています。

ゲン : めっちゃいい。タスク管理を人の気持ちの側面で見たことなかった。

諦めるという管理

イズミ : まとめると、タスクが積まれて消化されない人へのアドバイスは、

  1. 「諦める」という仕組みを週のどこかに入れる

  2. 締切のないタスクは、心に火をつけるためにプライベート時間で気持ちを盛り上げられるツールを使う

という、二点かな。

ゲン : 毎週手作業で移すことで、それでもやりたいタスクなのかっていうふるいにかけるのは良いですね。

イズミ : そうそう。手作業のめんどくささを利用するという。

忙しい時期は、めっちゃ諦めるけどね。それでも手帳には残るから「諦めたなーこのとき」って振り返って 100 に 1 つくらいは蘇生したりするし。

ゲン : 例えば「世界一周旅行に行く」のような長期的だったり、いますぐにはできないタスクはどうしてますか?一旦移して諦めるんですかね。

イズミ : それは週管理じゃなくて、手帳を跨ぐかどうかで判断する「大事なこと」という特別な項目が手帳の一番右のページにあります。手帳を跨ぐほどのことかどうかで諦めるか判断をする。5〜10 個くらいが引き継がれ続けてます。なので手帳については、ほどよくサイクルする薄さがいいというのがあって、いろんなサイズや厚さを試したけど、ここ数年はコクヨの測量野帳に落ち着いてます。

手帳のチョイスは、前回のデジタルノート回でゲンちゃんが言っていた「ずっと使えるのか」と同様で、どこでも買えるの?いつまでも買えるの?という選定基準はある。モレスキンなんかはいつまでも買えるだろうけど、貧乏になったら買えなくなるので却下とかも含めて。

全然デジタル文具のはなしじゃないけども、手帳を使う上で、ダイモのテープライターおすすめです。新しい手帳を下ろすときガチャコンと文字を打つと気持ちが上がるので。

ゲン : ダイモのテープライターは最高!

手書きのアーカイブは記憶にも紐づきやすそうだから「大事なこと」の管理にはいいのかもしれないと思いました。諦めたりしても残っている安心感。

イズミ : 諦めたタスクも愛おしいよね。

ゲン : そうですね、自分も「Focus」に入れた中でキャンセルしたタスクを見返したら、何とも言えない心地よい感情になりました。

イズミ : I shall return と心の中で呟き、そっと閉じる精神。いつか迎えにくるよ、と。

ゲン : 諦めてこう!

イズミ : 諦めてこう!

タスク管理はモチベ管理

イズミ : ピエールさんのタスク管理についても聞いてみたいです。ピエールさん、みんなから頼られるから、ぼくやゲンちゃんとは性質の違うタスク管理が必要そう。

ピエール : お二人のタスク管理力半端ないですね。

イズミ : ピエールさんはタスク管理しない派ですか。

ピエール : します。でもぼくの管理術は本当にザルでして。お二人のを拝見していて、そういうふうにすればいいのか、と感動してました。僕はタスク管理に挫折したことしかなく、どうすればいいのか、ずっと模索しています。

Things、Wunderlist、Omnifocus、Clear。このあたりのサービスは全て使いましたし、課金もしてきました。ただ、タスクを分解してビッシリとならべたところで満足してしまうフシがある。こんだけのタスクわけれた!すごい!というように。

で、全部締切が過ぎて翌日まで期日を引き伸ばしていくうちに、毎日のタスク管理で一番行う作業が、期日を翌日にズラすということになり、なんのためにやってるのかわからなくなってしまうんです。

ゲン : 期日伸ばしがちなのほんとわかります。

ピエール : あれこれやったなかで、僕のタスク管理は、モチベーションをあげることに行きつきました。どれだけタスクを積んでも、やる気が出ないと消化しないんです。企画を出すのも、やる気があれば 1 時間で終わるし、やる気がなければ 10 時間かかっても終わらない。なのでタスクは、

・スラックで自分にメンションをつけて書いておく
・それを見て、やるんだなぁ、と思って気合いをいれる

みたいになってます。

イズミ : タスク管理ってそもそもモチベーション管理ですよね。

ピエール : あとは案件ごとのタスクだと、やることを全部グーグルスライドのページで穴埋め問題にして、それを消化していくようにしています。

イズミ : それぼくもやります。穴埋め問題として「ここにテキスト書く」や「ここに画像貼る」というレベルで要素だけ配置していって、あとはそれを埋めていく。明日の自分のやる気が信じられないから、できる限り作業的なお膳立てを先に終わらしておきたい。

ぼくはさらに、一人だと諦めちゃうかもと自信がないときは、本当は自分ひとりで全部つくれる資料でも、1 割くらいのパートを他の人にお願いするページにしちゃい、共同で完成させることにしたりもします。お願いをして人を巻き込んだのだからやるしかない。という追い込みかた。

ピエール : 人を巻き込むモチベーションアップ術は、追い込まれますね。

イズミ : そうなんですよ。言い出しっぺという責任感は強力。

粒度問題

ピエール : ちなみにお二人は、どれぐらいの粒度でタスクにしてますか?予算を組むという大きな粒度もあるし、参考になる案件の予算を調査するなど細かく分解もできるだろうし。デザインという作業も、資料を集めるとかブレークダウンできると思うのですが、どこまで細かくするのか気になります。

イズミ : ぼくは大体 1h〜3h くらいで終わる粒度にしてるかもです。もし 1h 以内で終わるのであれば、Google Todo の方に入れて、瞬殺タスクとして機械的に消化していく。

ゲン : 自分は Todo App を備忘録として使っている側面がある。なのでブレークダウンできるタスクもそのまま入れちゃいますね。思い出すトリガーになればいいと思っているのかもしれません。ブレークダウンは実際に作業するとき、適切なところに書き直している気がします。

イズミ : 細かいブレークダウンは、コーディングならコードの中にコメントアウトで Todo を書いたり、Figma なら Figma の中に Todo というページを用意してそこに書いたり、スライド作成ならデッキの構成を作ることが Todo になりますよね。なので作業のブレークダウンは、作業しているファイル内に書くのが適切な位置なのかもしれない。

ピエール : たしかにです。タスクを細かくしすぎないって大事ですね。いっぱいタスクがあるとクリアするモチベーションもありますが、他方でこんなにやるのか、とやる気がなくなる側面もある。

イズミ : ちなみに一瞬で終わるタスクはちょっと放置してもいいと思ってます。瞬殺タスクは一気に終わらす気持ちよさがあるので、ある程度を溜めてからゲームのタイムアタック感覚で消化すると楽しかったりする。

ピエール : 瞬殺タスクは一気に終わらすと気持ちよい。この気持ちよさがモチベーションになって、タスク消化できそうですね。

そういえば、後輩ディレクターのおーじゃんは紙でタスク管理をしていて、タスクを終えたらシュレッダーかけることに気持ちよさを感じてるっていってました。

ゲン : シュレッダーいいですね。自分かねてから「タスクが書ける日めくりカレンダー」があったらめちゃいいなと思ってました。

イズミ : シュレッダーのアイデアいいですね。気持ちよいインタラクションをモチベにするというのは、ゲームフルデザイン的発想。

今回のテーマ「タスク管理ってどうしてます?」については、こんなところですかね。

では、また次回。

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