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この時期に、芝居を観るということ

お久しぶりです。あっ明けましておめでとうございます。
今年もどうぞ宜しくお願い致します。

またしても久しぶりの更新となってしまったのにも関わらず、今日は和文化関連の記事でもなくてごめんなさい。
でもちょっと想いを書き留めておきたくなってしまったので、このnoteに記したいと思います。

シアターコクーンに『フェードル』を観に行ってきました

先日、緊急事態宣言の最中ではありましたが、ものすごく久しぶりに大好きな劇場の一つであるシアターコクーンにお芝居を観に行ってきました。
大竹しのぶさん主演の『フェードル』です。

シアターコクーンは私がお芝居にハマった高校生の時から何度も何度も通っている劇場で、そういえばシェイクスピアやギリシャ悲劇を初めて生で観たのもこの劇場だったなぁなんて思い出しました。ここ数年は訪れていなかったのですが、劇場内に足を踏み入れた時にぶわっと色々な思い出が一気に蘇ってきて、それだけでなんともいえない気持ちになりました。

今、観たかった理由

この時期にどうしてもこの作品を観たかった理由の1つには、6月に世界最高峰の演劇祭であるルーマニアはシビウ演劇祭に、私が所属する破天航路が出演することがありました。
(現在、6月に向けて演出家・末原拓馬さんと共に作品創りを丁寧に行っています。その様子は下記noteにアップされていますのでよろしければ是非!宣伝挟んですみません!)

観客として、この時期に生の舞台を体感することとはどういうことなのか、そして一流の役者陣、スタッフ陣が結集して創られた作品を1つでも多く観ておきたかったんです。
まだまだ知名度のない私たちであってもシビウへは「日本代表」として行くことになる訳ですから、日本の良い芝居や舞台公演(それも多くのジャンルの)をこのタイミングで体感しておくことが重要だと思ったのです。
そして、それはやっぱりその通りだったと『フェードル』のカーテンコールの喝采の中で思ったのでした。

演劇は昔、治療だったということの実感

実は10代の時に見たギリシャ悲劇が若干トラウマになっており(観劇してから暫く芝居に引きずられてしまい、だいぶ鬱々としました)
今回もそんなこんなで陰にひっぱられちゃわないかドキドキしていたのですが、私が年齢を重ねたからなのか全体的に演出が美しいからなのか、やや俯瞰した状態で作品を観ることができ、"悲観"という陰のエネルギーよりも1人1人の生き様の熱量に爽快感さえ憶えた不思議な感覚になりました。
(正しく言うと本作はエウリピデスのギリシャ悲劇から着想を得た、フランスのジャン・ラシーヌが書いたものなのでギリシャ悲劇そのものではないのですが)

それだけ、1人1人の役者さんが板の上で熱く生きていたからこそなのかもしれません。
しのぶさんのお芝居は幾度も拝見していますが、あの湧き出る熱量の凄まじさにはいつも圧倒されてしまいます。今回は有難いことに前方のお席だったのですが、観ているだけなのに心を抉られるような熱さ。

悲劇なのに、作品の登場人物は誰も幸せになってないのに、作品自体が持つプラスのエネルギーを受けて観劇後はとても心が元気になりました。

そういえば、お芝居を観て元気をいただいた...という関連で思い出した言葉があります。とある記事を引用させていただきますね。

これは新垣結衣さんがブルーリボン賞を受賞された時のスピーチですが、ここに登場するなまはげがまさにそのことを仰っていました。

そのなまはげは、「貧しくて病院に行くお金がない人たちがいたような昔の時代、みんな身体を悪くしたらどこに行ったと思う?」と新垣に語りかけてきたそうで、その答えがわからず「どこですか?」と尋ねる新垣に向かって「劇場に行ったんだよ」と返答したのだそう。さらに「うそか本当か分からないんですけど」と続ける新垣は、「そこで笑ったり、泣いたり、感動したり、気持ちが動いて。病は気からじゃないけど、元気になるために劇場に行ったんだ。そういう仕事を君はしているんだ。すばらしい仕事をしているんだ」と、なまはげから言われた
- 引用元 シネマトゥデイ

実はこのなまはげ、私のちょっとした知り合いなのですが、それはさておき...(笑)

『演劇はその昔、治療法の一環であった。症状にあわせた演劇を見せて、病を癒していた。』(諸説あります)
その話は、お芝居関係に携わっているとよく耳にしていますし、特にコロナ禍になってからは殊更にこの言葉を聞く機会が多かったように思います。

私も1人の舞台人として、最近は特に、少しでも皆さんに元気を届けられたらという思いを持って日々活動をしていますが、この度、一観客として『フェードル』を観劇しプラスのエネルギーを浴びた時に「演劇は治療だった」というその意味が、今ようやく実感として染みこんできたのでした。

『フェードル』の感想を書かせてください。

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フェードル 公演情報⬇️
WEBSITE: https://www.phedre.jp/
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いや、ほんとに素晴らしかったんです。(急にどうした)

ちょっとだけフェードルの感想書きますとね(ちょっとだけじゃないかもしれないですけど)
しのぶさんはもとより林遣都さん(イッポリット)のお芝居の熱量にすごく驚きました。ドラマや映画ではもちろん拝見したことがありましたが、あれだけの凄まじいエネルギーを秘めている方だとはつゆ知らず...あと、どんどん滲み出る品のある色気が素晴らしかったです。
フェードルが恋焦がしてしまうのも納得。もっと舞台での彼のお芝居を観てみたいと切に思いました!(マクベスとかどうでしょう。苦悩している姿が似合いそうです。←勝手にキャスティングw)
また瀬戸さおりさん(アリシー)の神々しさと気品よ!出てきた瞬間に劇場の空気感と色がガラっとかわる、(しのぶさんもそうですが、また全然違った色)溢れ出るオーラは圧巻でした。また他のお芝居も是非観てみたいです。
テゼ(谷田歩さん)の大人の色気と貫禄に完全にやられ、エノーヌ(キムラ緑子さん)の最期に一番感傷的になり、テラメーヌ(酒向芳さん)から語られるイッポリットの残像に震え...イスメーヌ(岡崎さつきさん)パノープ(西岡未央さん)もそこで生活し、日々忠義を尽くす姿がありありと見えてくる...

冒頭は台詞を咀嚼するのに必死だったのですが(勉強不足)
だんだんと物語に引き寄せられて行き、最終的に私はフェードルと共に感情が荒波のようにうねりまくってしまったのでした。(終わってから暫く放心状態でした)

舞台上と客席とのエネルギーの交換

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(写真は先日歌舞伎座に行った時のものです。コクーンに行った時に撮影しそびれた...)

この時期ならではということで気が付いたのは、「マスク」をしていることによって"芝居の体温と匂い"が感じにくくなったことです。
例えば劇場特有の匂いですとか、役者から発せられる体温や匂い、普段は当たり前で気がつかなかったことですが今までは嗅覚や触覚(頰などで感じる温度感)なども使ってお芝居を観ていたんだなぁと初めて気がつきました。

ただ、"この時期だからこそ"の特有の熱狂もありました。
芝居が始まってからずっと息を殺して事の顛末を見守ってきた客席が、暗転後のカーテンコールの時に一気にぶわっと湧く瞬間。
もちろん声は誰も出してないですが、(本来だったらBravo!Brava!の嵐だったことでしょう)その拍手が湧き上がる瞬間に、役者・スタッフ・観客が一体となってこの芝居のためだけに空間を占拠できている贅沢さに喜びを隠しきれなかったです。
まさに、「拍手」を通じてのエネルギーの交換。
これはどうしてもオンラインでは感じ得ないものですよね。

もちろんドラマや映画などの映像作品も大好きですが、やっぱり「ライブ」が好きだ!!!!!!!!!!と強く思った瞬間でした。

表現者として、そして文化芸術のファンとしての想い

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(2018年フランスのアヴィニョン演劇祭、法王庁の前で破天航路が公演を行なった時の写真。このアヴィニョン演劇祭でも『フェードル』は幾度も演じられているそうです。)

この記事を書くのを少し迷ったところもありましたが
今現在、どんな形でも公演や活動を続けている文化芸術に携わる方々に対しての心からの敬意と、
それから、残念ながら延期や中止をたくさん余儀なくされてしまったる文化芸術に携わる方々への心よりのエール、そして文化芸術を愛する方(推しを推す全ての人へも!)への想いを込めて投稿することにしました。

とはいえ、医療現場がひっ迫している昨今です。手放しに「文化芸術の灯を絶やすな」とも言えないのも事実です。
文化芸術の活動を行う者として、また一ファンとしても、感染症予防対策を油断せずに徹底して「できることから」活動をしていけたらと思います!

今日はとりとめない記事内容ですみません。

次こそは和文化の記事書かなくては(笑)


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