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尾根を落ちてきたのは、何とデカイ〇〇〇〇

山には数えられないほど登っていますが、滅多にしない経験をしたことがあります。今回の話は、その中の一つ。

もう15年位前の晩秋のある日、雲取山を登りました。
男女合わせて総勢15-16人。初日は奥多摩小屋に泊まりました。

普通は奥多摩小屋には泊まれないのですが、何かの行事があったのだと思います。その夜は、みんなで酒を飲んで寝てしまいました。

翌日、雲取山に登ってから南西方向に下って、後山林道をお祭り(地名)に向かってテクテク歩きました。
林道は単調だし、緊張する箇所もないから却って疲れます。

みんなダラダラと歩いて、先頭と最後尾の距離は50mほども開きました。
左側が尾根、右側が谷です。

私は行列の中ほどを歩いていましたが、お祭りの近くまで下ってきた時のこと。尾根の上から、突然ドドーッと大きなものが落ちてきました。

それは、ちょうど先頭集団のところに転がり落ち、飛び上がってよける人もいました。何だろうと思ってよく見ると、何とイノシシ。

そういえば、少し前まで鉄砲の音が聞こえていたので、撃たれたイノシシが落ちてきたということです。
私も先頭集団に追いついてよく見ると、丸々と太ったでかいイノシシでした。

そのイノシシは、はじめ足を動かしていましたが、すぐに動かなくなりました。
みんなでイノシシを取り囲んで見ているうちに、下から軽トラが上がってきて、中から猟師が猟銃を持って降りてきました。

彼は嬉しそうな顔をして、トドメを刺すためでしょう、銃口をイノシシに向けました。
それを見て、一緒にいた女性がキャーキャー悲鳴を上げたので、結局トドメは刺しませんでした。

もし、苦しんでいたら、トドメを刺すほうが良かったんでしょう。
しかし、既にイノシシは動かないし、撃ち殺す場面を見ないですんだのでホッとしました。

しかし、これって我々の感覚は矛盾していますよね。
牛肉だった豚肉だって、スーパーで売られているのは普通に買うし、平気で食べるんです。

猟師が嬉しそうにニコニコしているのも、良い気分がしませんでしたが、この感情も矛盾してる。
イノシシだって間引かなければ里に下りてきてしまう。
だから、狩猟そのものも仕方がない。

感覚が矛盾しているのは、その通り。でも、やっぱり殺すところは見たくない。・・・この矛盾を解決する方法は、多分ないでしょう。
となると、仕方がない!

しかし、せめて食べるものを無駄にしないとか、「すまないね」という気持はもっていないといけないのではないか。
こんなことを考えながら山を下りました。