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リアス海岸が漁業に適している理由をまとめる。

2018.08.06 22歳

【リアス海岸は豊かである】

僕は日本三大リアス海岸のひとつに位置する三重県で漁師をしている。

  1. 志摩半島〜紀伊半島(三重県・和歌山県)

  2. 三陸海岸(岩手県)

  3. 豊後水道(大分県)

日本は水産資源に恵まれた島国だけれど、これらの地域にはとくに恵まれた環境がある。この記事では、リアス海岸とは何か、そしてなぜこの地形が漁業に適しているを解説する。

【リアス海岸とはなにか】

リアス海岸とは、狭い湾や入り江が複雑に入り組んだ地形のこと。

  • 湾…陸地に入り込んだ海

  • 入江…陸地に入り込んだ海や湖

噛み砕いて言うと、海岸線がくねくねしている地形のこと。

リアスさんが命名したからリアスというわけではなく、ドイツの探検家・フェルディナント・フォン・リヒトホーフェンさんがスペインのリアスバハスを訪れた時、海岸線がくねくねしているのを見てリアス式と命名した。

僕が小学生の頃はまだ「リアス式海岸」と教科書に書かれていた。しかし平成20年以降は「リアス海岸」に表記が変更された。年齢がバレないように、今のうちに脳内を訂正しよう…。

【なぜクネクネしているか?】

最終氷期が終わった約1万年前、暖かくなったために大量の雪や氷が溶けて海水面が数百メートルも上昇しました。

その際に海沿いに連なっていた起伏の激しい山々が海に沈むことによって、リス式海岸は完成した。海に沈んでてきたので、沈水海岸ともいう。

同じく沈水海岸として有名なのがフィヨルドで、ノルウェーやアイスランドにあります。氷河(氷の塊)が自分の重みに耐えかねて山の斜面を滑り落ち、地面がえぐられて起伏の激しい地形が完成する。

そしてリアスと同じく最終氷河が終わった段階で氷が溶けて海水面が上昇し、複雑な地形が海に沈んで「クネクネ海岸」が完成していった。

【リアス海岸が漁業に適する理由】

リアス海岸は、起伏の激しい山々が海に沈んでできました。だからリアス海岸のあるところは、海があってすぐ山がある。そのあいだに平地はない。

だからリアス海岸を眺めると、海に面した陸地は切り立った崖になっている。山が沈んでできた地形なので、海岸線自体が「山」ということ。

普通だったら険しい山から水が下り、川が広い平野を通ってから海に注がれるところ、リアス海岸の場合は平野を介さず、山から直接海に水が流れる

【水が豊かだと海が豊かになる】

農業の場合、作物は土の中で育つ。だから土づくりをして作物に適した環境を用意する。これが漁業の場合、海水に置き換わる。当然のことだけれど、水産物は海水の中で育っていく。

海の水は山から土を介して海に注がれる。つまり山と海が隣同士のリアス海岸では、栄養が豊富な水が平野を介して分散することなく「そのまま」海へ流れていく。海へ注がれる水に含まれる栄養素が多いことが、リアス海岸が豊かなひとつめの理由だ。

【海と山の接地面が長いこと】

直線の海岸線と曲線の海岸線を二つ思い浮かべてみよう。直線の海岸線よりもくねくねと曲がっていた方が、海と接している山の面積が多くなる。

接している山の面積が多いということは、山から注がれる水の量も同様に多くなる。より多くの栄養を含んだより多くの水が注がれるところ。

それがリアス海岸であり、魚が生まれ育つ海だといわれるゆえんとなる。

【リアス海岸は天然の防波堤】

リアス海岸の内海。つまり陸地の入りこんだ海は、山々に囲まれているために風の影響を受けにくくなる。自然の脅威にされされる一次産業の現場は、自然災害に備える必要がある。

船や養殖の生け簀など、海に浮かべているものはすべて、台風などが接近したときに安全な場所へ避難させる必要がある。リアス海岸の内海はその条件をクリアした場所となる。

だからリアス海岸は漁業、とりわけ養殖業が盛んに行われている。

【生き物が育つ海の条件】

栄養素が豊富な水だと、どうして魚が育つのかを確認しておく。海中に含まれる栄養素を餌にして成長する植物プランクトン。彼らは海を漂い光合成をすることで有機物質をつくり、海のなかのバランスを調節してくれる。

その植物プランクトンを食べる動物プランクトン。動物プランクトンを食べる小魚。小魚を食べる大魚。

大魚が死ぬと、その死骸をバクテリアが分解して無機物質をつくり、その無機物質がまた植物プランクトンの餌になる。こういった循環のことを、食物連鎖という。

海中の栄養素が多いほど植物プランクトンが豊富に育ち、生き物が育ちやすい海になっていく。

【きれいな海≠豊かな海】

人間よがりの視点から海を見ると、やはり透き通るくらいきれいな海が良い。でも水が濁っているということは、植物プランクトンをはじめたくさんの生き物が住んでいるということ。

事実僕が暮している海は、生き物の活動が活発になる春・夏は海が濁っているのに冬は海底まで見通せるくらい透き通る。だから漁業に適した海とビーチに適した海は異なるわけだ。

【地形は産業の土台】

リアス海岸は漁業に適している。今回はその理由を解説してきた。

農業にしろ漁業にしろ、何においても地形によって決められることは多い。

リアス海岸だけでなく、たとえば能登半島のつけ根にある氷見はブリが有名な漁師町である。これは南下してくるブリの大群が半島に遮られて行き場を失うからであり、だから富山湾は天然の生け簀と呼ばれている。

その土地に合った特産品が生まれる背景には必ず理由があって、その最たるものが地形なのである。

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