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意外と知らない、柿の葉寿司の歴史のお話。

「ゐざさ」中谷本舗の中谷です。

初めてのnoteは、色々な方面から反響をいただきました。
私たちの思いを少しでも多くの方にお伝えできたのなら、とても嬉しく思います。

さて、2回目です。
何を書こうかと悩みましたが、私たちは「柿の葉寿司」屋。
意外に知られていない、柿の葉寿司の歴史をご紹介することにしました。

奈良は「海なし県」。
海が無いのに、なぜお寿司が名産に?と思われる人も多いですが、海が無いことが、柿の葉寿司の歴史を考える上で重要なのです。

熟成して食べる寿司

今では、お寿司といえば新鮮な魚を美味しく食べる料理、と考えられることも多いですが、その歴史を紐解けば、元々は保存食でした。

今のお寿司の原型は「なれずし」です。
貴重な動物性たんぱく質を保存し摂取するため、魚を塩と米飯で漬けて数ヶ月~数年発酵させたもので、1000年以上前の文献にも登場します。
今でもその形を残しているのが、滋賀県の「鮒ずし」。いわば魚の漬物です。

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今のようにご飯も一緒に食べるようになったのが室町時代。
発酵の時間を約2週間~1ヶ月で切り上げる「生なれずし」が生まれました。

実は酢を使うお寿司が生まれたのは江戸に入ってからだとされていて、
柿の葉寿司の始まりは、この「生なれずし」だったと考えられています。

柿の葉寿司の起こり

では、柿の葉寿司はいつどうやって生まれたのでしょう?
実は「いつ」というのはよくわかっていません。

柿の葉寿司は奈良県の中南部・吉野地方の郷土料理です。
今でこそ、「さけ」や「たい」、あじなど様々なネタがありますが、元々は「さば」のみ。
この地域は山深いところも多くあり、貴重な魚である「さば」を美味しく食べる方法として、柿の葉寿司が編み出されたのでしょう。

作り方はいたってシンプル。
塩が施されたさばを薄くスライスし、ご飯を大きく握ったものの上に載せ、柿の葉で包む。
それを四角い木の置けに隙間無く入れ、重石を置き、1ヶ月ほど熟成させたといいます。

それが次第に魚を酢で締め、ご飯も酢飯を使い、1日ほどで味を馴染ませる今の形に近いものに変わっていったのです。

海から遠く魚が乏しい山村では、柿の葉寿司はごちそう。夏祭りなどの「ハレの日」に食べるものでした。

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では、なぜ、柿の葉を使ったのか。

これも明確な理由はわかりませんが、奈良は柿の一大産地。
手近に柿の木はたくさんありました。
それに、柿の葉には防腐効果があるとされる「タンニン」が含まれています。柿の葉の香りは、さばの魚臭さを和らげてくれる。
先人たちはもちろん、柿の葉に「タンニン」が含まれているなどは知らなかったでしょうが、手近にある柿の葉を使うことで、美味しく日保ちがすることを学んだのでしょう。

さて、もう一つの疑問。
なぜ、山村ばかりの吉野地方で、さばを使ったお寿司が郷土料理になったのか?です。

もう一つあった「鯖街道」

「鯖街道」と聞けば、福井・小浜と京都を結ぶ道を思い浮かべる人も多いと思いますが、実は紀伊半島にもう一つの「鯖街道」があったのをご存知ですか?

起点は、三重・熊野市や和歌山・新宮市で、終点は定かではありませんが、奈良・桜井市などにあった魚市場とされています。
この道中、行商人たちは吉野地方の村々でさばを売り歩いていました。

紀伊半島沖の熊野灘で獲れたさばは、すぐに浜塩を施されます。
当時は今のような冷蔵・冷凍技術はありません。腐りやすいさばは、水揚げ後、すぐに浜塩をすることで、劣化を防ぐことが出来ます。
時間がたつにつれ、味がなじんださばを、行商人が吉野地方の村々で売り歩いていたそうです。

「鯖街道」のルートはいくつか説がありますが、その一つに「東熊野街道」があります。

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三重・熊野から奈良の下北山村、上北山村を通り、川上村を経る道です。
ゐざさが創業した上北山村を通るこのルート。急峻な山々が多い山間地域を抜けていきます。
今でこそ、道路が整備されましたが、当時は極めて厳しい道中だったでしょう。中には命を落とした人もいるかもしれません。
険しい道中を売り歩いた行商人がいたからこそ、柿の葉寿司は生まれたのです。

でも、なぜ行商人たちは危険な目に会いながらも、鯖を売り歩いたのでしょうか。
それは、紀州の殿様が熊野の漁師に重い年貢を課したので、そのお金を捻出するために、塩で締めたさばを吉野地方に売りさばいたという説が一般的となっています。

熊野はサンマずしが有名ですが、さばのお寿司はあまり作られていません。
もしかすると、さばは大切な商品として売られていたのかもしれません。

そして今

奈良の伝統的な郷土料理である柿の葉寿司ですが、時代に合わせて進化しています。
シャリの大きさも食べやすい大きさに変わり、ネタもマイルドな味わいになりました。

そして、ネタは「さば」だけではなく、ゐざさでは「さけ」や「たい」「あじ」とバリエーションを増やしています。

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それに加え、季節限定の柿の葉寿司も販売。
夏は、暑い時期でもさっぱりと食べやすく、「さば」はわさび入りのシャリ、「さけ」はゆずを混ぜ込んだシャリ、「あじ」は赤しそのシャリ
と、それぞれシャリに一工夫加えた柿の葉寿司をご用意しています。

そして、満を持して発売したのが、【冷凍】の柿の葉寿司
「焼さば」「さけ」「あなご」「豚蒲焼」「金目鯛」の5種類で【冷凍】の柿の葉寿司「蒸し柿の葉寿司」を開発しました。

電子レンジで数分加熱して召し上がっていただく「蒸し寿司」タイプ。
吉野地方では、柿の葉寿司を葉っぱのまま軽く炙って食べる習慣がありますが、温かい柿の葉寿司は酢飯の味がよりマイルドになり、シャリもふっくら、柿の葉の香りも漂って、とても美味しいんです。
冷凍なので、好きな時に好きなだけ召し上がっていただけるのも、ご好評いただいています。

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時代とともに変わる柿の葉寿司。
これからも、私たちがその歴史を紡いでいきたいと思っています。

※ご紹介した「夏の柿の葉寿司」「蒸し柿の葉寿司」は以下のリンクより、ご購入できます。ご興味ある方はぜひ、ご覧下さい!



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