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【鑑賞日記】宇野亞喜良展を観に行った

宇野亞喜良展 AQUIRAX UNO @東京オペラシティアートギャラリー

なにより驚かされたのは絵の上手さでした。プロに対して上手いというのは、おこがましいにも程があると承知してはいるのですが、とにかく「上手い」としか言いようのない衝撃があったのでした。
単なる巧さではなく、ドライブ感というかケレン味というか、描かれた線ひとつひとつに必然がある。そして紙面全体の構成力。ため息漏れるばかりでした。

自分にとって、宇野亞喜良といえば耽美、退廃的、サイケデリック、エロティック、そんなイメージだったのですが、本展で宇野氏の作品を概括することでその印象は間違いだったと知りました。

確かに耽美でエロティックな作風がもっともキャッチーではあるのですが、カートゥーン調のコミカルな作風写実的デッサン風と、実に多彩。しかもそのどれもが超一流。以前みたことのあるあのポスターや本の表紙って宇野作品だったんだ! という驚きがありました。

さらに驚いたのは、宇野氏の絵が若かりし頃からすでに完成されていたという事実。たとえば習作的な作品がないのです。はじめからクライマックス。恐ろしい。
なので、デビュー当時から現在に至るまで作品の変化がない。その確固たる作品群は常に最高のまま。
普通なら歳を重ねるごとに絵柄の変化が出るものだと思うのですが、宇野氏の場合それがない。当然劣化もないのです。表現のアレンジの引き出しは増えているのですが、本質的な部分は変わらないというのはすごいことだと思うのです。

宇野氏はアーティストではなくイラストレーターなのではないでしょうか。そして自身それを意識しているのではないか。だから自己の作風を変化させるのではなく、イラストレーションとして求められているものを最高品質で描き出すことに注力しているのではないかと感じたのです。

とにかく作品の量と質に押しつぶされるような展覧会でした。

ところで、最初から完成しているアーティストという感想、つい最近感じた記憶があるなあ、と思ったのです。それは伊藤潤二展。
で。そしたらなんと宇野展と伊藤展ってプチコラボしていたんですね。なんか納得です。

宇野氏と伊藤氏のもうひとつの共通点をみつけました。猫好きなところ。宇野氏の描くリアルな猫絵がすごく愛おしく可愛かったなあ。

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