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【鑑賞日記】田名網敬一 記憶の冒険展を観に行った

田名網敬一 記憶の冒険 @国立新美術館

田名網敬一という作家、そのポップでサイケでイカレタ作風からもっと若い作家だと思っていたのです。
ですが、後日プロフィールを知って、そうだったの⁈ とかなり驚いたものでした。
言われてみれば、付け焼き刃ではなくじっくりと積み重ねられた経験などが作品に現れてて、そうかと思うところもありつつ、同時に精神的に若いのだなあ、ということを思ったのです。

そんな作品ですがそのポップさは、感覚だけで表現しているのではなく、意識的に理論的に描いていると思います。

同じような方向性を持っている(と思う)同時代の作家の代表格のひとりに横尾忠則がいますが。横尾忠則が自身の感覚や感情に基づいて作品を描いているのと比較し、田名網敬一は感覚をいったんロジックに置きなおして描いている。
勢いで描くのではなく、なぜそこにそういうモチーフを描くのか、どのように表現するのかを整理してから制作している。そう思ったのです。

今回の展示には、作品の元となる下絵の展示もあり、それをみると氏のロジックを顕著にみてとることができます。もっともそれらは依頼案件の作品だからそうなのかもとも思いますが。

展示会場の中盤には大量の映像作品の展示エリアがあります。
ひとつひとつは短編なのですが、だからこそついつい観てしまいます。
作品の制作年も幅が広く、かなり若いうちから最近まで断続的に?つくられている。
表現すること、それを持続すること、しかも絵画作品も映像作品もといくつもの表現手段に対して興味を持ち続けることができると点それ自体を思うと、本当に若い精神を持っている人なのだなあと敬服するのでした。

作品のモチーフに伊藤若冲がかなりの頻度で登場してきます。またアメリカのパルプ雑誌の引用も多用されています。
このPOPカルチャーと日本の伝統的カルチャーがが同列に存在する感覚。直感的にして論理的。これらが田名網敬一の醍醐味なのだなあと思いました。

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