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南伊豆古道を歩く 〜下田ー龍宮窟ータライ岬ー弓ヶ浜編〜

2022年4月14日。昨日の下田までの道の続きを繋げる。本来は続きから歩き始めたいのだけど、今回はまだロケハンなので効率を考えて下田に帰ってくる逆順で歩くことにした。

前回までの記録はこちら↓

本日の道のりはこちら。推定15km、古道の調査なので西洋普請の恩恵であるトンネルはできる限り通りたくない。明治の地図とGPS地図を合わせて見る限り、今回は山越が2回ある予定だ。

下田ー弓ヶ浜

下田駅前の4番バスのりば 石廊崎オーシャンパーク行に乗車。弓ヶ浜から歩くので、最寄駅は休暇村。まずはバスに乗って今回のスタート地点を目指す。

弓ヶ浜

20分ほどで休暇村駅に到着。バスを降りたらもう目の前が弓ヶ浜だ。1kmに渡る砂浜が弓型の弧を描いている。

「日本の渚100選」に選ばれており、水質や浜辺の環境はお墨付き。夏には多くの海水浴客でにぎわう。初夏にかけては、ウミガメが産卵しにくるほどの美しい砂浜だ。

本日の最高気温は17℃。雲があるので暑くなることはなさそうだけど、風が強い。海岸沿いは十分注意が必要だ。早速、タライ岬を目指してスタートする。

弓ヶ浜ヴィラを抜けたら下り坂が続く。風が思ったより冷たかったので、早々にもう一枚重ね着る。

逢ヶ浜

風の音を聞きながら東へ10分も歩けば逢ヶ浜(おうのはま)が見えてきた。弓ヶ浜とは対照的に、荒々しいゴロタ石の磯。弓ヶ浜は女性らしい白浜の女の浜(めーのはま)、逢ヶ浜は男性らしい岩場が多く男の浜(おーのはま)とも呼ばれている。

浜の中央から左にかけて奇岩が浮かぶ。これらの奇岩は海蝕によってできたもので、エビ穴・姑岩・雀岩。雀岩は潮が満ちてくると群れをなしたスズメの鳴くような音を立てるそうだ。

夏の日の干潮時には奇岩にまで歩いて行けたり磯遊びが楽しめそうだ。

それにしてもエビ穴の海蝕、いったいいつまでこの姿を保つのだろう。今にも崩れてしまいそうだ。

タライ岬遊歩道

逢ヶ浜はタライ岬遊歩道への入口が見えてきた。伊豆半島の絶景を眺めながらトレッキングを楽しめるコース。2021年5月にSatoくんと訪れた印象的な場所だ。

さっそく馬頭観音が現れた。安永4年と刻まれていたので西暦で言うと1775年、比較的新しい石碑だ。

細く整備されアジサイに囲まれた緩やかな登り坂が続く。

ここでタライ岬遊歩道の分かれ道。人生は迷ったらロックな方を選べ。迷わず健脚コースを選ぶ。

遊歩道はアップダウンが続く。そのうち身体の内側から熱が湧いてきて、肌寒いと思い羽織った上着を早速脱いでしまった。見通し良いところに出ると海が見えてきた。

再び、森の中へ。道中には程よくベンチもあり、良く整備された遊歩道だ。

タライ岬に到着。当たり前だけど、人工の音は一切ない。風が強まり、波が荒ぶる。人よりも虫と植物の方が圧倒的に多い。毎度だけど、自然の中では私は客人なのだと感じる。

大自然と向き合うと、天からの優しさを素直に受け入れることができるようになる。

タライ岬から海岸コースへ下る。

岩石海岸沿い、海の辺路を往く。そういえば下田の白浜神社あたりでもこんな道を歩いた。雨がぱらついてきたが太陽は出ている虹のチャンスか。

再び、山の中へ続く整備された遊歩道。水の溜まる足元が悪い場所には橋がかかっていたりする。次の集落・田牛まであと2kmだ。

遊歩道は椿の絨毯が仕上がったロードへ突入。花首から落ちる椿、大きな花になると私の拳より大きく開いている。

道はアップダウンを繰り返し、殉国者慰霊碑を過ぎると、細いアスファルト舗装の道になった。緩やかな下り坂が続く。

この辺りの岩にはトカゲのようなアートが施されてる箇所がある。一風変わったお家もあるので、作者がどこにいるか想像できそう。

アート岩の先に、山に向かって真っ直ぐ延びた道がある。この道は合っているのだろうか?わからないけど、興味をそそる道をしているのでGPS地図を見ながら進んでみる。

しばらく登ると年代、用途不明な謎の石碑があった。やっぱり古道として合っているのだろうか。わからない、でも祈りの道として相応しい道だと感じた。その後、道を見失ったので、藪漕ぎ失敗。元の道に戻ることにした。

しばらく往くと、幅は3m弱だろうか。GPS地図に記載がなかった巣ぼりの小さいトンネルが見えてきた。ここまで迂回できそうな道が見当たらなかったので、悔しいけど今回はトンネル内を歩くことにした。

龍宮窟

トンネルを抜けると、田牛(とうじ)の集落に入る。ここまでは1時間半、約4キロ。漁師の宿が多いのでここを一つのゴールとして良いだろう。

下田市の最南端の田牛ビーチ。車道は田牛が終点なので、一層秘境ムードが漂う。夏には海水浴に良さそうな砂浜が広がっている。

南伊豆の人気ジオポイント龍宮窟へ。海食洞の天井が一部崩れ、直径50mもの大きな天窓ができている。押しては返す波音に寄り添い小休止。

龍宮窟から吉佐美・大浜方面はトンネルなので、道を戻り伊豆峯次第の拝所・長谷寺へ。平安時代末に流れ着いたと阿弥陀如来座像を本尊とされている。伊豆半島の沿岸部に良く見られる漂着伝説の一つだ。

途中、山から降りてきたお爺さんに声かけられた。道を歩いていると出会う人と話し込むことがある。必ず聞かれるのが〝なぜ歩いてるのか〟

古道の調査をしていることを話すと「この道も古道だ。」と言って背負いカゴに入ったタケノコをいただいた。昔はみんな山を回っていたそうだ。

しばらく平地が続く。風も収まり、鶯の鳴き声が聞こえてきた。カエルの鳴き声も聞こえてきた。やがて山道へ。明治19年の測量図では山林に入らず道があるはずなのだけど、今回は見つけることは出来ず。

やがてトンネルが現れ、抜けるとダイナミックな竹やぶが見えてきた。

風はさらさらと、こんこんと竹同士がぶつかる音。ここからは下り坂。タケノコが目に入るようになった。

気づくと道は穏やかに下り、やがて平らな道となる。大浜の集落だ。

本来は山の根方を回るように歩く道なのだけど、ここもトンネルへ。完全巣ぼり、触ると手に土がつくモルタルで固めてないトンネル。公園の砂場で作ったトンネルのように手作り感があるのでこのトンネルは好みだ。

伊豆峯次第のチェックポイントとなる拝所・八幡宮。

大賀茂

吉佐美から大賀茂川沿いは平らな道が続く。内陸にある次の拝所・走湯神社へ。すでに切られてしまったり、空洞ができて向こう側が見えている老木が多いが、社は古いながらも丁寧に管理されていた。

ここからは県道119号線を往く。季節を感じる鯉のぼりの群れ。

緩やかに登り坂が続く。県道の先にあるトンネルを避けるため、別荘地区へ。(しかし、後に調べたら古道ではなかった)

県道119号線は下田市街に近づくにつれて細道になるが、地元の抜け道なので交通量が多い。昨日のゴールとなった岩下の交差点で本日の調査終了。


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