8.某政党愛媛支部の西条市長に対する批判内容を検証する
こちらのFacebookで某国政政党の愛媛支部アカウントが、今回の件で西条市長を批判しています。
今まで「中国資本の水資源搾取だ」と攻撃していたE社の出資元が、実はニュージーランド企業が香港に作った子会社でしかなく、中国政府の影響が皆無であることが判明した途端、矛先を公人であるところの玉井敏久西条市長に変えました。
その批判内容について、自分の勉強として、ここで反論を考えてみました。
1.井戸水を汲み上げる揚水計の設置義務化を撤廃した
2.排水基準の緩和を行った
合併以前の旧西条市時代に制定された「西條市地下水の保全に関する条例」が、合併後の新西条市でも適用され続けていましたが、これを改正するため市はパブリックコメントを集めるなどして協議を進めています。
この旧条例の適用地域は旧西条市地域で、改正後の条例の適用範囲は市全域となり、今回のE社のある丹原を含めることになります。
条例改正で規制が緩和されたといいますが、それはうちぬきという旧西条の優良かつ貴重な資源を守るために国の法令より厳しくしていた西条独自の条例を、うちぬき以外の地下水についても貴重な水資源と認識し、対象を市全域に広げるにあたって水保全と社会経済活動の両立の観点から緩和するということです。緩和されたと言えるのは実質旧西条市地域内に対してです。
つまり、E社のある場所については、そもそも条例による義務なし→努力義務へと規制が上がっているのです。これは排水基準についても同様、条例による基準がないところに基準を定めているのです。
外国企業の進出を期に緩和した、という指摘は全くの見当違いです。
3/1追記
Twitter上で「(適用地域外でも)事業者(外資系企業)の地下水くみ上げ等々には条例が適応され規制は入るはず」という情報を見つけました。現行条例を再確認していますが、それに該当する部分が私にはわかりません。
引き続き確認しています。
3.周辺の丹原高校の廃校計画に反対しない
全く別の問題です。E社の件に絡めるのは、真面目に問題を考える地元農家の不興を買うだけです。
4.西条市の農道までこの外国企業に売り払っていた
これは6.「農地や農道を外国人・外国法人に売るのは違法」なのかで書きましたが、条件さえ整えば外国資本の企業でも売却できます。
もし外国企業であることを理由に売却を拒否するのであれば、GATS協定に違反していると見なされ、損害賠償訴訟を起こされれば敗訴するのでは無いでしょうか。
差別され傷ついたと言われて法外な慰謝料まで請求されてもおかしくありません。
5.農水省への報告が外国人議決権49%と虚偽報告
虚偽報告であるというなら、そのエビデンスを明示してから批判すべきではないでしょうか。
3/1追記
某政党FBで新しい情報がでてきました。しかし、今のところそのエビデンスとしては「言質をとっている」と曖昧な表現に留まっています。
この言質の内容は、日本第一党愛媛支部長の政党役員の方のブログで述べていたことと同じですので、ソースは同じなのでしょう。「西条の水と未来をつなぐ会」という会が行った説明会なのだと思います。
では、この内容は本当なのか。
農業委員会は「株数」を「議決権数」と誤って認識して、審査を通してしまったのか?
西条市に情報公開をしていると言っているので、その回答が待たれます。
6.地域住民に対し日本企業だと虚偽説明を行っていた
こちらの動画の最初のYoutube投稿は2022年12月28日です。
こちらの3分30秒からのシーンで
と、このように愛媛県議会あさぬま議員は「(地権者が不動産屋から)ニュージーランドの会社だっていうことを言われたらしい(が私が調べたら中国だった)」と説明しています。一方、
その後、政党支部のFacebookでは「(地域住民に対し)日本企業だと説明されていた」と主張しています。
この主張内容の変節は何故でしょうか?
批判する側の説明が全く一貫していません。
この2月22日には、西条市長がE社を訪れ住民説明会の開催を要望しています。その後のローカルニュースや愛媛新聞のオンライン記事では、E社を
と説明し、出資元が香港籍ではあるがニュージーランド企業が所有する子会社であることを綿密に説明しています。
その後に上記のFacebook記事が投稿されていますが、あさぬま議員の発言に即してこの6が「6.地域住民に対し、ニュージーランド企業だと虚偽説明を行っていたこと」として書いた場合は、ニュースで流れたことにより、ニュージーランド企業との説明が虚偽説明にならなくなります。
それ故に「日本企業だと虚偽説明した」ことに主張を変節したのではないですか。
それとも「(不動産屋さんは)ニュージーランド企業と言った」「(市は)日本企業と言った」という詭弁でしょうか。
だとしても、E社は日本で法人登記されている会社なので日本企業だと言ってもあながち間違いではないため、その場合でも市の説明は正しく虚偽説明とは言えません。
7.農地法で不許可判断としないで許可を与えている
これも6.「農地や農道を外国人・外国法人に売るのは違法」なのかで書きましたが、行政の側は根拠があり、農業委員会という民主的な議論の場で許可判断を出しています。
不許可判断だというなら、そうだとわかるエビデンスをまずは指摘する側が明示するべきです。
3/1追記
5の追記と同様です。
8.西条市の水源地である場所に農薬を撒く
水源地とは次のことを指します。
一般的に、河川の上流にある、周囲に人家などがない未開の山林などが、我々の想像する水源地だと思います。しかし、このE社の農地の周辺には、他の農業者も同様に農薬散布をする果樹園や住宅地が広がっています。
ここを水源地だと主張するのは些か無理がありませんか。
勿論、もともとE社が買う前の農地でも、地元の農家は農薬を使っていたでしょう。
なぜ同じ場所を購入したE社が、農薬を蒔くことを咎められなければならないのでしょうか。
私の農地でも、その敷地内に灌水用のポンプ井戸を掘っていますし、栽培には農薬を使っています。それも止めろと言うのでしょうか。
それは経済活動を営もうとする他人に対する人権侵害です。
断じて受け入れる必要はありません。
あと、条例案の段階ですが、上図において市が想定している水源域とは緑色のエリアを指し、E社の農地が存在するのは涵養域です。
9.影響が特定できる環境アセスメント調査をしていない
環境影響評価法で環境アセスメントの対象となる事業は、次の13種類の事業です。
この中に、埋立てや干拓を伴わない場合の「農地」に係る事業は含まれていません。
8が当てはまるかと言えば、「土地区画整理事業」は法的には「道路、公園、河川等の公共施設を整備・改善し、土地の区画を整え宅地の利用の増進を図る事業」を指すので、民間人が行う農地開発は、当てはまりません。仮に当てはめようとしてもアセスメントの必要があるか判断の対象となるのは75ha以上からです。
よって環境アセスメント調査は行う必要はありません。
ただし、これは今までの日本農業のモデルケースからいうと、それほど大規模な開発を想定していなかったため、現状のような法になっているかと思います。
今後、国内で規模の大きな農地開発事業が想定されるのであれば、新たに加えるよう法改正も必要と思います。
そうした場合でも、新たに自然林や原野等を切り開いて農地にするようなケースを主な対象とし、以前からあった農地を基盤整備等で区画整理するようなケースには環境負荷に大きな変化がないため対象外とし、農家の負担にならないようしてもらいたいと考えます。
9/23追記
国の法律では上記のとおりですが、愛媛県は条例により、環境影響評価基準を設けていますので、そちらも掲載しておきます。
こちらには、
という項目があります。今回のE社の農地造成事業は面積20haですので、県の条例においても環境影響評価の対象外です。
「計画では150haだから対象内だろ!」という声が聞こえてくるかもしれませんが、そもそもその150haの面積の土地の具体的な位置や開発時期が明確でない、あくまで将来の目標の数字でしかなく、現状の第1弾の農園が20haで完結しているので、県としては「具体的な100ha以上の計画を持ってこないことには、評価対象とする理がない」わけです。
10.地域住民への説明もなく、次々に勝手に行っていた
土地の売買については地権者には説明していますし、開発行為については説明するメッセージが張り出されたりしています。(英語が読めないなどと言う方もいますが、それはご自身で努力してくださいとしか)
市が関わっているのは農道の売却で、それにより通れなくなることの説明が市民に無いというのであれば、そこは市に経緯の説明を求めるべきでしょう。
ですが、E社に関して言えば、法定に従って監督官庁に届出等があるものを除き、民間企業がその民有地内で営む事業活動について、地域住民の納得がなければ行ってはならない、などという道理はありません。
地下水や騒音等という周囲環境に影響があるかもしれない事項については、説明会で詳細が語られると思いますが、そうでないものについては「おれに断りもなしに勝手にするな」などという主張に付き合う義理はないと個人的には思います。