見出し画像

21.参政党と同調する経済安全保障アナリストの「致命的」な分析間違いを指摘


こちらの動画の文字起こしと、平井氏の誤った分析について指摘していきます。

「JACEは本社が香港だ」という誤った分析

(動画の24:35から)

平井宏治氏(以下H) 
で、このイーキウイの親会社はどこかっていうことで調べてみたんです。
それが20番のスライドで、これがですね、ここに香港って書いてますね。
登記。つまり、これ香港にある会社なんです。
じゃあ、ニュージーランドだって言い張る人もいるんですけど。
実はこれ21番のAと書いてあるスライドを見るとですね、実はニュージーランドにもあったんです同じ会社が。
ところが2011年の12月にですね、これDissolutionって書いてて、つまり精算されてるそうです。
もうないですね、ないんです。
さっきのこの20番のスライドに戻るとですね。これちょっと面白いのは。
設立は確か1998年って古いんですが、Previous Namesで以前の社名を追ってくと、下から2番目にね、ジュエリーカンパニーリミテッドって書いてあるわけですよ。
つまり私はねこれ多分、香港にあった宝石商の会社が買収されて、そして事業内容が今の形に変わったんだと思います。
だから、元々は多分ニュージーランドにあったんでしょうけれど、香港に本社を移し、香港で宝石商の会社を多分買収して、そっちに本社をね。定款の内容を変えて、事業やってる。
つまり、香港の会社なんです。

Youtube 【特番「平井宏治氏に訊く!これでいいのか!?外国人による制限なしの不動産取得」経済安全保障アナリスト 平井宏治 × 松田政策研究所 代表 松田学】より引用

この箇所では、E社の親会社であるニュージーランドのJACEについて、会社登記を調べたことを述べています。

1つ目の「香港にあった会社」とは、JACE GROUP LIMITED(中国名:
精誠集團有限公司)(会社番号 0647168)
です。この会社は元々、SUN SANG JEWELLERY COMPANY LIMITED(中国名:新生珠寶有限公司)という名前の宝石商の会社です。
2つ目の「ニュージーランドにあった会社」とは、JACE GROUP LIMITED(会社番号 1213312)です。こちらはなんの会社かはわかりません。
このニュージーランドのJACEが2011年に精算され、香港に移って宝石商会社を買収し、JACEと社名を改め定款も変え、ニュージーランドでキウイ栽培をしているのが、E社の親会社である現在のJACEだと、平井氏は主張してます。

これをファクトチェックします。
上記の香港JACEのリンク先にある会社情報から、社名の履歴がわかりますが、1988年に最初の「SUN SANG JEWELLERY COMPANY LIMITED」が設立されたあと、1998年にすでに「JACE GROUP LIMITED」の社名が使われています
さらに言うと、「ニュージーランドのJACE GROUP LIMITED」の設立が2002年なので、それ以前からJACEの名前を使用しています。
2011年に「ニュージーランドのJACE GROUP LIMITED」が香港企業を買収して本店を移しJACEの社名に変わったという平井氏の主張は、時系列的に全くの誤りです。

ltddir.com より引用

また、2002年設立・2011年精算された「ニュージーランドのJACE GROUP LIMITED」の会社情報を見てみますと、最終的な代表株主は Stuart William MILSOM という名前のようです。
現在のJACEの主要株主であるJan Benes氏やCraig Lemon氏とは、全く別の人物です。
このことから、「ニュージーランドのJACE GROUP LIMITED(2002-2011)」は、E社の親会社であるJACEとは関係のない、偶然同名の別会社だと思われます。
日本にだって「田中商事」「昭和産業」といった、ありきたりな名前ゆえ、同名だが別業種の無関係の会社は山程あります。こういった例があっても何らおかしくありません。

opencorporates.com より 会社提出資料の欄より引用

JACEの社名について、JACEグループのWebサイトに次のような情報があります。

Maunt Pac & Cook Website より引用
Maunt Pac & Cook Website より 自動翻訳済

「JACE」という社名は、創設者3人のイニシャルが元であるようです。
そして、Jan Benes氏、Craig Lemon氏らによる「JACEグループ」の設立は2003年です。
先程の別会社とは、全く違うことは明白です。

JACEグループの株主に中国人はいるか?

平井氏は次のようなフリップを作成し、あたかもニュージーランドのキウイ生産企業が中国の傘下であるかのように印象操作しています。

Youtube 【特番「平井宏治氏に訊く!これでいいのか!?外国人による制限なしの不動産取得」経済安全保障アナリスト 平井宏治 × 松田政策研究所 代表 松田学】より引用(30:07)

JACEの子会社は、全て香港企業のJACEの傘下であるという図式ですが、これは明確な誤りです。
まず、中核となる親会社の名前は「JACE GROUP LIMITED」ではなく、「JACE INVESTMENTS LIMITED」です。Investments Limitedは「投資会社」であることを示します。
このJACEグループの株式の保有状況を図式化したので、拡大して確認してください。

opencorporates.com にて筆者が調査のうえ作成

緑色の枠内が、JACEグループの親会社・子会社です。
なお、この会社登記検索サイト上では、日本のマイキウイ、イーキウイ、香港にあるとされる傘下のENDEAVOUR FRESH JAPAN LIMITEDについては、株式の状況はわからないのでここには記載していません(ひょっとしたら、枠外のJACE JAPAN LIMITEDという会社が中間会社なのではと類推します)。

上図の水色着色の個人名が、JACEグループの代表者Jan Benes氏、Craig Lemon氏です。それ以外にも、複数のTrustee Limited「信託会社」を通じて、複数の個人出資者が「JACE INVESTMENTS LIMITED」の株主になっています。
これら各個人の名前・住所を確認してみましたが、いずれもニュージーランド国内在住者らしく、少なくとも検索サイトの情報を見る限り、中国系と思われる人物、中国系投資会社の介入は見受けられません。

また、図の左上の「SHARP TUDHOPE TRUSTEE HOLDINGS LIMITED」という信託会社の出資者は弁護士の会社のようです。JACEグループは、国際企業に相応しい堅実な法務体制を整えていると考えて差し支えないでしょう。

私が考える正しい組織関係図はこちらです。

Youtube 【特番「平井宏治氏に訊く!これでいいのか!?外国人による制限なしの不動産取得」経済安全保障アナリスト 平井宏治 × 松田政策研究所 代表 松田学】内(30:07)の
フリップを元に、筆者が補筆

れっきとしたニュージーランド発祥のキウイ生産会社を、あたかも中国共産党の手先の中国企業であるかのようなデマを放言し、民間企業の業務を妨害し続けるのは、本当にもうやめたほうがよろしくないですか。

黄金株について

黄金株についてはすでに
16.某政党が主張する「外国資本に100%議決権があるので農地所有適格法人を認定した西条市は違法」は本当なのか? 
17.B株式を外国法人が持ってたら農地所有適格法人として違法なのか、農林水産省に聞いてみた
で書いているので、これが反論になります。

そもそも、日本人農業者(議決権51%)と農業者以外の外国人出資者(議決権49%)が物事を決めるときに、

外国人にデメリットがあり、日本人にメリットのある議案→日本人が賛成するが、黄金株所有の外国人が反対→否決

外国人にメリットがあり、日本人にデメリットのある議案→日本人が反対するが、外国人は黄金株所有してても賛成に覆すことはできない→否決

となるので、結局は双方にメリットがある議案しか可決することしかできないのです。
つまり、双方がメリットのある最良の決定のために、互いに協力し歩み寄る必要がある企業体制が求められるわけです。
それができずに否決、否決ばかりで何も決められない企業になれば、どのみち破綻し崩壊してしまうでしょう。

それを「外国人が黄金株持つ農業法人は問題だ!」と言い続けるのは、その人の心根が「誰も信じない、誰とも協力しない、歩み寄ることができない」人物であることの現れだと私は思います。