16.某政党が主張する「外国資本に100%議決権があるので農地所有適格法人を認定した西条市は違法」は本当なのか?
某政党の主張
某政党は、E社の株主の議決権が、農地所有適格法人になるための条件である「日本の農業関係者51%・外国資本企業49%」ではなく、「外国資本企業が100%」であり「農地所有適格法人の資格はない」「それなのに西条市農業委員会が見逃して、許可を与え、農地を買えるようにしたのは違法」だとの主張をしています。
こちらの動画の19分35秒あたりからのところにも
この点は、この問題について私も「その追求点はなかなか考えたな」と思っていました。果たして、行政が「株式割合」と「議決権割合」を間違えて認可するなどという単純なヘマをするでしょうか。
意外にも同じFacebook投稿のコメント欄で、この追求点にも鋭い反論がとんでいました。
一般人からの反論
某政党事務局長・松本氏は「外国人側が持っているB種類株式は、すべての可決・否決の権利がある=100%外国人が議決権がある」と主張し、対する鈴木氏は「B種類株式は否決件がある黄金株(拒否権付種類株式)であり、株主総会の決議を強制的に否決はできるものの、強制的に可決する権利はなく、通したい議案は全体の過半がなければ通せない。よって51対49は正しい」と主張しています。
私はこの二者の主張について、事実を確かめたく、松山地方法務局西条支局でE社の履歴事項全部証明書を請求し確認しました。
(※証明書をネット上にアップするのは公文書偽造にあたるらしく、ここで開示できませんので悪しからず)
まず、証明書に書かれている内容は鈴木氏の説明に寸分違わず、このB種類株式は拒否権付種類株式、俗に言う「黄金株」であることに、私は納得できます。
証明書を見る限り、現在の株主が所有している株式に無議決権株式(デイトレーダー等、利益を目的とした株主向けの株式)はないことも確認できました。
この辺の記事を読むと、どんなものか分かると思います。
黄金株についての例え話
少々ややこしいので、すこし例え話をします。
「拒否権」という単語で、私たちがもっとも想像しやすいものと言えば、中国・フランス・ロシア・英国・米国からなる国連安全保障理事会常任理事国のそれではないでしょうか。
そこで、安保理の拒否権を例に上げて、わかりやすく説明したいと思います。
説明の為として、仮に、安保理常任理事国をロシア一国だけと設定します。
拒否権のない10の非常任理事国と、常任理事国には、1つずつの議決権があります。
まず「ロシアはウクライナへの侵攻をやめて直ちに軍を撤退すべきだ」という議案を話し合います。
この議案は賛成10、反対1となりました。本来ならば可決です。
しかし、ロシアが投じた反対票は「拒否権」を伴うものなので、仮に多数決で賛成優位であってもこの議案は否決されてしまいます。
さて、一方のロシアは自らも議案を提出しています。それは「そもそもウクライナという国が存在する事自体が間違いで、あそこはロシアの領土の一部だ」というものでした。
この議案には、賛成1、反対10であっけなく否決されます。
で、強大な権限を持つロシアは、この議案も強引に可決しようとする…かというと、それはできないのです。
「拒否権」には、本来は可決される筈の議案を強引に否決する力はあっても、その逆の、否決される議案を強引に可決させる力はないのです。
(時勢柄、人によっては適切でない不謹慎な例えと捉えられるかもかもしれませんが、ご容赦願います)
私の雑感
さて話を戻しますが。
私は、強い権限を持つ拒否権付株式を所有していたとしても、外国資本が日本人農業関係者側の意向を無視して全て自分の思うがままに定款を変更したりするような100%の支配権がある、という風には感じません。
議決権49%の外国人側が、議決権51%の日本人農業関係者側の権利を侵害する形の議案を提出したところで、可決に至るとは思えないので、このB種類株式を外国資本が持っているケースでも農地所有適格法人の要件はクリアできていると、私個人は考えます。
某政党は「農地法で言う議決権は経営支配権を意味する」「B株式に拒否権があるから実質的に100%支配者だ」と主張されていますが、そうしたことを読み取れるものは農地法の条文のどこにも見受けられないように私は思います。それは独善的な法の拡大解釈ではないでしょうか。
問題が大きくなったあとの3月6日、西条市農業委員会総会における説明においても、行政側は農地所有適格法人の認定に問題はないと説明しています。
――果たしてどちらの説明が正しいのでしょうか。
情報開示請求に対する西条市の回答が待たれます。
この件に関連する続きを、17.B株式を外国法人が持ってたら農地所有適格法人として違法なのか、農林水産省に聞いてみたに書きました。