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5.現地に行って社長の英文メッセージを見てきた

「住民は誰も読めない」手紙

ファクトチェックを一旦休んで、ちょっと脇道にそれます。

山口亮子さんの現代新書の記事で

建設予定地であることを示す看板。その左手にヤン社長からの英文メッセージが貼り出されているが「住民は誰も読めない」との声も

現代新書「外資の農地取得が進む過疎地でトラブル発生!」/ 山口亮子

と書かれてあった例の代表者のメッセージ。
たまたま用事で近くを通りかかり、確認したらまだ貼ってあったので、写真に撮り日本語訳を試みました。
画像をGoogleドキュメントに取り込みOCRでテキスト化し、DeepLで自動翻訳したのち、一部語尾の揺れを修正しました。

筆者撮影(2分割して撮影したので合成してあります)

英語日本語対比訳

Saijo Orchard Development Project Update 1st March, 2021
西条果樹園開発プロジェクト アップデート 2021年3月1日

We would like to update our community on the progress of our 100-year kiwifruit orchard project.
私たちは、100年続くキウイフルーツ果樹園プロジェクトの進捗状況について、地域の皆様にご報告したいと思います。

Covid has caused a lot of uncertainty, delays and logistical challenges but we remain committed to the long-term success of the project.
コロナ禍は、多くの不確実性、遅延、物流上の課題を引き起こしましたが、私たちはプロジェクトの長期的な成功のために尽力しています。

Due to the NZ and Japanese boarders being closed, we have not been able to have key technical NZ construction staff enter Japan - this has caused a significant project delay.
ニュージーランドと日本の国境が閉鎖されているため、NZの主要な技術スタッフが日本に入ることができず、プロジェクトの大幅な遅れを招いています。

However, the project has continued with minimum NZ and local Japanese staff.
しかし、プロジェクトは最小限のNZ人と現地日本人スタッフで継続されています。

Staff have focused on clearing the land of sheds, buildings, trees and shrubs and this task is nearly complete.
スタッフは、小屋や建物、木や低木の除去に重点を置いており、この作業はほぼ完了しています。

There has been significantly more rubbish than expected with over 100 x 10 tonne trucks of rubbish removed.
予想以上にゴミが多く、10トントラック100台分以上のゴミが撤去されました。

As we cleared the rubbish, we also had the challenge of working with unknown irrigation pipe locations - we have now completed all irrigation pipeline movements and we apologise for any disruption caused.
ゴミの撤去と同時に、灌漑用パイプの位置がわからないという課題もありましたが――現在はすべての灌漑用パイプの移動を完了しており、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

Currently compost is being spread and then grass seed will be sown.
現在、堆肥を撒き、その後、芝の種を蒔く予定です。

It is expected that grass will cover the site with Spring growth from around early April. From April, construction of the lower part of the orchard will begin.
4月上旬ごろから草が生え、敷地を覆うようになる見込みです。4月からは、果樹園の下部の工事を開始する予定です。

This will involve posts being rammed into the ground.
これは、支柱を地面に打ち込むというものです。

Please expect a small amount noise from the post rammer but this will be limited to normal working hours Monday - Saturday, 8am-5pm - please do not worry when you hear it.
ポストランマー(支柱打込み機)の騒音は、月~土の8時~17時の通常業務時間内に限定されますので、ご安心ください。

The top section of the orchard will continue to be cleared. Space will also be cleared so that boundary farm roads can be widened.
果樹園の上部は引き続き整地されます。また、境界の農道を拡張するためのスペースも確保する予定です。

Once we begin planting kiwifruit plants (planned for second half of March), we expect there will be employment opportunities for local people.
キウイフルーツの苗木の植え付けが始まれば(3月後半を予定)、地元の方々の雇用機会も生まれると期待しています。

Whilst there will always be some foreign staff on site, the majority of our team will be made up of local staff.
現場には外国人スタッフが常駐していますが、チームの大半は現地スタッフで構成されています。

If you have any questions, or you are interested to work with us, please feel free to say "Hello" to our friendly staff or call Anna-san on 080-XXXX-XXXX.
ご質問やご興味のある方は、お気軽にスタッフまでお声掛けいただくか、Anna-san(080-XXXX-XXXX)までご連絡ください。

※電話番号が書かれているため一部伏せました

We thank you for your continued support of our project and the advancement of Ehime as a leading Japanese kiwifruit producing region.
愛媛が日本を代表するキウイフルーツの産地として発展していくために、今後もプロジェクトへのご理解とご支援をお願いいたします。

Jan Benes / Managing Director / EKiwi K.K.
ヤン・ベネス / 代表取締役 / イーキウイ株式会社

意見

工事の進展具合を地元住民に説明するだけの、簡素な内容でした。
2021年3月1日からほぼ2年アップデートがされていないので、今現在作業がどの段階にあるのかは不明です。
もう少し頻繁にメッセージを更新して、できれば私みたいな方法で日本語訳をつけてくれれば、地元とのコミュニケーションの齟齬も幾分減少するのではと感じます。とくに地下水関係についての説明は、次のアップデートには必要だと感じます。
「境界の農道を拡張するためのスペースも確保する予定です」とあるので、買い取った既存の曲がりくねった細い農道のかわりに、まっすぐ広々とした通路を作るのだと思いますね。それを地元の人も通れるようにしてくれればいいのですが。

2/19追記:Googleストリートビューの写真との違いに違和感が…

この社長のメッセージが更新されたのは、記載内容から2021年3月1日頃のようです。そして偶然ですが、Googleストリートビューには2021年3月中に撮影された掲示板の画像が残されています。

Googleストリートビューから過去の記録(2021 3月)を引用
左と右の書類で、文字の密度や改行・段落にだいぶちがいがあります。
日本語文と英文との差ではないでしょうか。

ストビューの画像には、掲示板に2枚の書類が貼られています。
拡大すると、右の書類は今回私が撮影した英文と、改行・段落のレイアウトがほぼ同じなので、同じ書類だと思います。
そして左の書類は、私は現地では見つけられませんでした。山口亮子さんの記事に載っていた写真にも、この左の書類は無いようです。
なお、山口さんの記事は2022年6月発信、記事の写真にある原野や山の緑の濃さ、記事にでてくる日付等を考えると、この写真の撮影時期は2022年の春から夏にかけて…発信より少し前だと思います。そのときにはもう、左の書類は無くなっています。

現代新書「外資の農地取得が進む過疎地でトラブル発生!」/ 山口亮子 の写真から引用

左の写真の改行・段組の感じから、英文ではなく日本語文のような気がします。ひょっとすると、社長のメッセージの日本語訳か、もしくはこの農園の概要について地域住民に伝えるための何らかの文章が書かれていたのかと思います。
しかし、今現在はその左側の日本語の文章がなくなっており、「住民は誰も読めない」と揶揄された社長の英文メッセージだけがぽつんと残された形になっています。

これはあくまで私の想像ですが。

もし私が、この農園に"強く"反対する地元住民の立場であったとしたら。
高齢者が多い地元向けに張り出された、唯一日本語で書かれた書類をこっそり✕✕て、英文だけの書類を残します。
こうすることで、「この社長は日本にきて農園を作るのに、地元住民に日本語での説明をする気がないのか。上から目線で高慢な人物だ」という印象操作ができそうだなと考えます。
実際、この英文だけの掲示板を見た山口亮子さんは記事の写真の下にキャプションを書きましたが、そのキャプションから私たちはこの社長に最初どんなイメージを抱いたでしょうか。

もちろん、これは私の穿った見方で、単に日本語の書類に貼り出す必要がなくなった(例えば従業員の募集案内など?)から、会社のほうで事務的に外しただけなのかもしれません。
いずれにせよ、早めに来て日本語の文章に何が書かれていたか確かめたかったものです。