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紅茶の勉強を始めるにはどうしたらいいか?


「紅茶を本格的に始めるにはどうしたらいいですか?」という質問を受けました。
筆者は超マニアという訳ではありませんが、紅茶が中心の喫茶店の店長をやっていたことがあります。このときに、詳しい人に教えてもらって詰め込みで勉強をしました。勉強のなかから紅茶の面白さに気がつき、日々も楽しむようになりました。

まず、そもそもとして、紅茶の楽しみかたはたくさんあります。
知り合いは「アフタヌーンティ」を巡って都内のホテルなどに足を運んでいます。「一つのメーカーのだすフレーバーティを順番に楽しむ」知人もいます。「華やかな茶器を楽しむ」人も「福袋で買った紅茶を消費する」「紅茶にあうお菓子を作る」人もいます。どんな楽しみかたをしたっていいのです。趣味というのは本人がテンションが上がっていればすべて正解です。紅茶を楽しむなら、あなたにとってアガるものを楽しんでください。

たくさんの楽しみ方の中で今回筆者が書くのは「産地ごとの茶葉の味の違いを楽しむ」というものです。正直紅茶全体のなかでみても、ちょっとマニアックです。筆者が産地ものが好きなのでその布教に努めるわけですが、1度わかってしまうと長く楽しめるものですので、地味だけど楽しいぞ、といっておきます。



産地ごとの味の違いを楽しむとは何か?

ワインやコーヒーなど嗜好品の世界では「産地ごとの味の違いを楽しむ」というものがよくあります。ブルゴーニュのピノノワールの2018年がよかった、みたいなやつです。紅茶にもこうした楽しみかたがあります。

紅茶では「品種」「茶園」「シーズン」で決まっています。


これは「ダージリン」という品種で、「キャッスルトン」という産地の2022年の夏摘み紅茶です。紅茶界のなかでは「BUMP OF CHICKENの新曲」「トヨタのレクサス」「野球の巨人軍」かのようにど真ん中の定番ダージリンです。これさえ飲んでおけばOKで初心者もマニアも納得のスタンダード。


これは「カングラ」という地方の紅茶で、「ダラムサーラ農園」という産地の2022年の茶葉です。かなりマイナーな地方で、紅茶好きでも知ってるかたは少ないとおもいます。筆者は今回初めて知りました。茶葉の味もかなり独特で、「雑草でも摘んできたのか」というような野性味あふれる青臭い味がしました。音楽だと「マイナーな変拍子の楽曲をやってるバンド」みたいなかんじです。しかし不味いわけではなく、独特のパワーとオーラがあります。

紅茶には「美味しい紅茶」と「変な紅茶」があります。産地ごとの味の違いを楽しむというのは、この後者のような個性を楽しむものです。

「美味しい紅茶」は、50gで1000円くらいで十二分に美味しいです。リプトンの青缶と呼ばれているセイロン紅茶は本当に品質が高く、トヨタのカローラみたいな味がします。自分は普段使いの紅茶として毎日飲んでます。最高。


ダージリンならLUPICIAのザファーストフラッシュが最高です。50g800円とはとても思えない素晴らしさ。自分は30種類くらいダージリンを飲み比べたあとにこのブレンドを飲んで衝撃をうけました。青い鳥は自宅におったんや! と叫ぶくらいに、スタンダードなのに十分です。

「変な紅茶」は50gで2000円くらいしたりします。しかも美味しいというよりも「キャラクターがはっきりしていて面白い」もので、毎日飲みたいわけでも、他人にお勧めできるわけでもありません。紅茶好きが集まっても「これは個性的ですねえw」と個性を楽しむ会話になります。M-1の予選から見るようなもんだ。

コーヒーでもワインでも産地ごとの味を楽しむ、というのは好奇心を満たすという遊びです。この面白遊びとしては、紅茶は手軽で安いという魅力があります。産地ごとの個性を楽しもうとおもうとワインは1瓶5000円~だったり、コーヒーも1杯あたり豆が10g程度必要で、1杯あたり2-3gの紅茶の3杯くらいの値段になります。茶葉は酸化が起きにくく、封をあけてもワインやコーヒーよりも管理が簡単です。ちょっと楽しむには、コスパが良いです。

キャラクターの濃い産地ものの紅茶に出会うと「その紅茶が生まれ育った現地のオーラ」みたいなものを受け取っている気持ちになり、元気が出ます。個性を知るごとに、他の個性も見てみたくなって、せっせと紅茶を集めることに。こうしたマイナーを楽しめるかたには、おすすめです。



予算と道具

さて、紅茶を楽しめるようになるまでの予算は2万円程度です。
まずは道具で6000円くらい必要です。残りは茶葉です。
道具は「テンションが上がるもの」を買ってください。紅茶はエンタメであり趣味なので、値段に負けてテンションが下がるものを買ってはいけません。別にテンションが下がらなければ100円ショップでもなんでもOKです。



キッチン用温度計 1500円くらい。100度のお湯を計るために必要。


キッチンスケール 1000円くらい。0.1g単位で茶葉を計るのに必要


キッチンタイマー 1000円くらい。3分間を計るのに必要。スマホでもよいが、1つもっていると便利。


ティーポット 2500円くらい。丸ければなんでもいい。お茶の違いを楽しむためには、2つあるとおもてなしのときに良い。

ティーカップ。なんでもよい。筆者は適当なマグカップで飲んでいる。紅茶の香りは淡いため、コーヒーと違って「薄口で、浅くて、大きい」ものが良い。


茶葉を買う

もしも東京に在住でしたら、何も言わずジークレフさんに行っていただくのが最も良いです。吉祥寺や阿佐ヶ谷にある茶園ものの茶葉の専門店です。

ジークレフさんには紅茶マニアの店員さんがおり、暇な時間にお邪魔すると試飲をさせてくれます。前いったときは50g2000円くらいの紅茶が次々とでてきて5杯くらいいただきました。そして気がついたら茶葉を数千円分買っていました。

非常に紅茶に詳しい専門家が情熱をもって全力でもてなしをしてくれるので、そのオーラに圧倒されておすすめされるがままに買うのが一番良いです。「紅茶の茶園についてこれから勉強したくて、何を買えばいいでしょうか。予算は6000円ほどです」といってスタートすると、あとは全部完璧にアレンジしてもらえます。

茶葉は最初は3~5種類買ってください。というのも、茶園ものはキャラクター性を楽しむものなので、1種類だと初心者は特にその味がよくわからないところがあります。ダージリンだけで3種類とか、キャラクターの差がわかるように買うと面白みがわかります。

通販で始めるなら、シルバーポットの茶葉のセット(2800円)か、ルピシアの茶葉のセット(1200円)あたりがおすすめです。そのほかにも、通販限定でお試しセットをだしているお店がありますので、それを試してみてください。フレーバーティ(甘い香りの紅茶)とストレートティ(特に香り付けをしていない紅茶)の2種類があり、人によって大幅に好みが分かれます。個人的にはストレートティの個性を楽しむことが好きです。

お試しセットをいくつか注文して20種類ほど飲むと、茶葉の好みや個性がだいたい把握できます。そうすると自分にとっての楽しみ方が見えてきます。まずはたくさんの茶葉に触れることがおすすめです。


紅茶を美味しくいれる

紅茶を美味しくいれるには、重要なこつがあります。ちゃんと計る、ということです。

紅茶は「3gで、150ccの100度の湯で、3分」が基本です。これを守ってください。茶葉ごとに差はあるのですが、それはパッケージに書かれています。必ず守ってください。

この基本が意外にみんなできません。お湯が多すぎてぼんやりとした味になったり、お湯がポットで冷めてしまって香りが弱くなったり、3分のはずが5分いれて渋みが出すぎたりします。

多少面倒くさくても毎回必ず計ってマニュアル通りに入れる

これが一番重要です。ポットのなかでジャンピングがどうこうとか、どうでもいいです。紅茶は、コーヒーや緑茶と比較して美味しく淹れることがかなり簡単だといわれています。ちゃんと計れば、大丈夫です!


紅茶の味を言葉にする

最初のころは、紅茶を1度に2種類飲むことがおすすめです。お客様にお出しするときも2種類お出しするほうが楽しんでいただけます。(そのためにもポットを2つ購入することをおすすめします)

何度も書いているように、茶園ものというのはキャラクター性を楽しむものです。その差が一番わかるのは飲み比べることです。紅茶ってこんなに違うんだな~ ということが楽しめます。

そして、それをちょっとメモしたり、会話の種にして言葉にしていくとより楽しめます。渋みがクリアなもの、色味が赤いもの、茶葉が開くもの、香りが華やかなもの……さまざまな紅茶の特徴を言葉にできると、同じ特徴に出会ったときに思い出すことができます。そうすると紅茶の解像度が上がっていって、よりキャラクター性を楽しむことができます。


おわりに

紅茶の茶園ごとのキャラクターを楽しむには、20種類くらい飲め! というのが乱暴なまとめになります。AKBやサッカー選手の顔を覚えるがごとく、一番最初に主要なキャラが理解できると、その世界をずっと楽しむことができます。体育会系で申し訳ないのですが、マニアックな趣味の世界はどうしてもこういう部分があります。きっと期待は裏切らないので、たくさん飲んでみてください。

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