海外VC の投資分析:Ribbit Capital
こんにちは。いよかん(@iyokan_lib497h)です。
昨今は巷で「フィンテック」という言葉が大流行しており、ホットな分野だと認識されていますが、その背景には素晴らしいスタートアップに出資する、これまた素晴らしいVC(ベンチャーキャピタル)が存在します。
例えば大手VCのSequoia、Accel、Index、KPCBなど、本当に数えればキリがないほどです。
ですが、様々な分野に出資するVCだけでなく、フィンテックに特化した出資を行うようなVCもいます。
この記事では、そんなフィンテック特化型VCの例である、「Ribbit Capital」に注目して、投資分析を行っていきます。
ちなみに、名称の一部であるRibbitはカエルの鳴き声(ケロケロ!)を表すらしく、同VCのロゴにも顔を表していたりもするんです。
Ribbit Capitalについて
設立年:2012年
創業者:Meyer Malka
投資数:97(リード投資34)
ビジョン:"It takes money to change money"
投資先:Funding Circle、Robinhood、Nubank、Figure、Affirm、Revolut、Brexなど
概要:フィンテックに特化していることが特徴のVC。主に拠点の位置するアメリカに、そして中東・アフリカを除く全リージョンの10カ国に投資している。チームメンバーは9人。
創業者のMalkaは金融分野でのシリアルアントレプレナー。1993年(この時は19歳)にインターネット証券・投資ディーラー企業のPatagon.comを共同創業、そして買収によるExitに至る。また2003にはBanco Lemonを共同創業、2008年にモバイル決済企業Bling Nation Ltd.を共同設立、2011年にLemon Inc.やBanco Bracceを共同設立。そして2012年、Ribbit Capitalを創業し、1億ドルの調達を果たす。エンジェル投資家としても、Wonga、TransferWise、Palantir Technologiesなど22社に出資しており、Wongaをはじめとする企業のボードメンバーとなっている。
投資数の推移
出所:Crunchbaseデータを基に筆者作成
Ribbit Capitalが創業された2012年より、年間投資件数はおおよそ増加傾向にあります。最多の年間投資件数は24件(2018,2019年)で、2020年については2020/9/9までの投資件数を表示しています。
Ribbit Capitalは主にアーリー(シリーズA、Bなど)企業に投資を行っていますが、少しずつC以降のラウンドでの出資が増え、直近の3年ではシリーズCが明確に増加しています。
また、シリーズE・Fについても一定の割合を占めるようになっています。
これは、2012年から投資を行い、既存企業に出資するプールが十分に形成されたからでしょう。
出所:crunchbaseのデータを基に筆者作成
この図を見ると、2015年以降既存投資は増加し、2019年には既存投資が新規投資を上回っています。
このことから、シリーズA投資は新規投資時に行われますが、主な投資ラウンドはシリーズB・Cと考えても良いでしょう。
ちなみに単一企業への投資回数は、1回:28社、2回:16社、3回:6社、4回:4社となっていて、もちろん一度のみの企業が最も多いとはいえ、継続的な投資を行なっていることがわかります。
これは、分野特化VCの特徴とも考えられるかもしれません。
投資先(分野)を絞る代わりに、1社々々へのコミットメントを高め、粒ぞろいなポートフォリオを形成する。
これにより、ポートフォリオの規模自体は少ないですが、1社あたりの利益やその実現可能性が大きくなるため、パフォーマンスを高めることができます。
ちなみに、これは新規投資のシリーズ内訳です。興味があればどうぞ。
出所:Crunchbaseのデータを基に筆者作成
投資先のリージョン・国
出所:Crunchbaseのデータを基に筆者作成
リージョン別では、北米が53.7%(29社)、中南米が18.5%(10社)、アジアが16.7%(9社)、そしてヨーロッパが11.1%(6社)となります。
こうして見てみると、勿論アメリカが主な投資国ではあるのですが、北米の占める割合は約5割に過ぎず、様々なリージョンに投資していることがわかります。
出所:Crunchbaseのデータを基に筆者作成
さらに、直近の3年では、アジア・中南米を合わせた割合と北米の割合がほとんど変わりません。
興味深いことに、ヨーロッパの新規投資先がいないのです。
勿論ヨーロッパにこれからも投資をしない、ということではないのでしょうが、アジアや中南米に大きな期待を寄せていることは間違い無いでしょう。
特に、アジア地域への投資は全て直近3年間で行われており、アジアを重点リージョンに据えていることがわかります。
出所:Crunchbaseのデータを基に筆者作成
国別の情報も見てみれば、ブラジルとインドの存在感が目立ちます。
中南米への投資はブラジル、そしてアジアへの投資はインドが大半を占めています。
その中でもインドは2018年に初めての投資が行われ、全体で2番目に多い投資国となっているため、Ribbit Capitalはインドに焦点を合わせていると言って良いでしょう。
ちなみに、ブラジルへの出資は2015年に始まり、2017年を除いてほとんどの年で投資されています。
ポートフォリオの事業カテゴリ
出所:Crunchbaseのデータを基に筆者作成
次に、ポートフォリオの事業カテゴリをチェックしてみます。
ポートフォリオがターゲットにしているのは、2Cが約60%、2Bが約37%、2C/2B(両方展開しているもの)が約3%となっています。
2Cが比較的多くなっていますが、明確な傾向は読み取れません。
出所:Crunchbaseのデータを基に筆者作成
事業カテゴリを見てみましょう。企業が単一の事業を営んでいるわけではないことや、線引きが曖昧であることから、事業カテゴリに分類するのは難しいのですが、大まかに分類しました。
ポートフォリオのカテゴリ内で、最も多いのはレンディング(11社)、ついでペイメント・保険(8社)、SaaS(7社)、バンキング(6社)です。
対して、最も少ないのは送金(1社)となっています。これらは直近3年でもほとんど変わりません。
そして、気になるのがクリプトです。暗号通貨の投資先は2019年までには0だったのですが、2020年になって2社をポートフォリオに迎え入れています。
これは偶然か、投資戦略かはわかりませんが、注目すべき分野かもしれません。
主要な投資先
このセクションでは、Ribbit Capitalの主要な投資先である5社について、簡単にまとめています。
興味のある企業があれば、是非ご覧ください。
①Brex
設立:2017年
所在国:アメリカ
ステージ:シリーズC
総調達額:732.1million
Ribbit Capitalの投資回数:4回
事業概要:スタートアップに特化した法人クレジットカードを提供。個人のスコアやデポジットを必要とせず、迅速に利用開始することができる。また、リワード(ポイント)も訴求ポイントとして用いている。スタートアップがよく利用するサービス(ライドシェア、フライトなど)のポイントを高く設定し、AWS、Wework、Slack、zoomなど様々な2Bテック企業と提携することで、スタートアップに対する訴求力を最大限高めている。スタートアップを支援するスタートアップで、現在はユニコーン。
②Next Insurance
設立:2016年
所在国:アメリカ
ステージ:シリーズC
総調達額:381million
Ribbit Capitalの投資回数:4回
事業概要:スモールビジネスに対し適切な保険を提供。100%オンラインで保険契約を行え、10分以内に完了する。シンプルで明瞭なユーザー体験、カスタム性、低コストを特徴とする。現在はユニコーン。
③Root Insurance
設立:2015年
所在国:アメリカ
ステージ:シリーズE
総調達額:527.5million
Ribbit Captialの投資回数:4回
概要:自動車保険などを提供。アプリ完結であり、アプリ内で支払いなどを行う。。ドライバーはアプリをダウンロードして、通常2~3週間のテストドライブを行う。ドライブ中に、スマートフォンのセンサーが起動し、判定を行う。優良ドライバーと認定されれば、従来の保険会社に比べ50%以上保険料を安くできる。リスク審査にはAIアルゴリズムを利用。他にも、家財保険や住宅保険も提供。
④Raisin
設立:2012年
所在国:ドイツ
ステージ:シリーズD以降
総調達額:206million
Ribbit Captalの投資回数:4回
概要:EU各国に存在する銀行の定期預金金利を比較できるほか、複数銀行の口座管理や預け入れができるプラットフォームを提供。ユーザーは銀行預金の選択肢の幅を広げられ、銀行側はその規模に関わらずあらゆる国のユーザーにリーチすることが可能になる。
⑤Revolut
設立:2015年
所在国:イギリス
ステージ:シリーズD
総調達額:917million
Ribbit Capitalの投資回数:3回
概要:イギリスのチャレンジャーバンク。決済、両替、投資、節約、送金等の多様な機能を内在する。基本的な銀行機能は無料。制限枠以上の引き出し手数料、決済加盟店からの手数料、プレミアム・法人口座の月額利用料が収益源。現在はユニコーン。
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