愛犬タローの伝説
昔飼っていた愛犬。
その名はタロー。
彼は数々の伝説を残しているが、今は庭の彼岸花の下で静かに眠っている。
この時期になると必ずタローの夢を見る。
タローは殺処分される前に役所から引き取ってきた子だ。
私はまだ小学生だったから、役所には連れて行ってもらえず、姉が選んできた。
姉に命を救われたタロー。
だからなのかわからないが、姉には絶対服従だった笑
もらってきた時タローはまだ子犬だったが、足を引きずり、片目は少し不自由だった。
今となってはわからないが、もしかしたら虐待だったのかもしれない。
タローという名前は親が付けた。
だが私の性格は普通を嫌う。
だからタローというありきたりな名前が嫌だった。
そこで、私がつけたあだ名は
もさみつ✨
もさみつは、甲斐犬という珍しい日本犬の一種だ。
甲斐犬については、こちらの説明をお借りしようと思う。
もし、日本犬を飼いたいと思っている方がいたら参考にしてください。
昔は甲斐の国、山梨の周辺で、猟犬として飼われていて、日本犬の中でも特に野性に近い犬種。
山の斜面を縦横無尽に走り回り、狩りに参加していたという。
その姿は、勇ましい古武士の面影をイメージできるくらい精悍な顔をしている。
そして、国の「天然記念物」らしい。
イノシシやクマのような大型の動物に向かっていくこともあったというから、すごい攻撃力だ。
実は私も何度も噛まれ流血している。
真っ黒い姿をしているが、別名「甲斐虎毛犬(かいとらげいぬ)」と呼ばれている。
基本は黒い毛だが、所々にトラ模様の茶褐色が混じっている。
山の中では、この虎模様が保護色になるそうだ。
彼のことを、私だけがもさみつと呼んだ笑
もさみつ、もさ、と呼ぶと一応振り向いてくれる😆
もさみつの伝説の1つをお話しよう。
私が小学生の時の話だ。
もさみつはかなり大きくなっていた。
ある日大雨の中、もさみつと私は散歩に出かけた。
土砂降りだったが、もさみつは裸、私はカッパを着ていた。
もさみつは家からそう遠くない、近くの公園で用を足している。
その時突然空が割けるような雷鳴が轟いた。
まるでどこか近くに雷が落ちたかのように、心臓をつかまれるほどの音が響いた。
私も驚いたが、それ以上にもさみつが驚いて、綱を持つ私の手を離れた。
彼はまるで弾かれたように、ものすごい速さで逃げ出してしまった。
その時、家とは逆の方向に逃げた。
私は後を追ったが、とても追いつけるような速さではなかった。
なんて速さなんだ、もさみつ。
私も足は速い方だが、その速さは桁違いだった。
『もさみつ!』と名を叫びながら、私は必死に探し回った。
周囲には目撃者もおらず、どこへ行ったのかわからない。
大雨の中、30分程探し回った。
だが見つからない。
焦りと不安で涙が頬を伝う。
気づけば、隣町の公園まで足を運んでいた。
もしや車に轢かれていないだろうかという恐怖が頭をよぎり、ますます涙が止まらなかった。
だめだ、一旦家に戻って大人の助けを借りよう。
嗚咽を漏らしながら、私は家路を急いだ。
涙を流しながら玄関を開けると、出迎えてくれたのは、
もさみつだった笑
なんと、もさみつは私を置いてすぐ、先に家に帰っていたのだ😆
親にタオルで拭かれ、ぬくぬくと玄関で犬用のガムを噛んでいる。
親は私がいないことを気にもしなかったようで、もさみつだけ帰ってきたことに何とも思わなかったらしい笑
私は思わず涙を流しながら、もさみつを抱きしめた。
もさみつは構わずガムを夢中で噛み続けている。
なんなら私を邪魔者扱いする勢いだ😆
しかし、私はほっとした反面、こいつ頭いいなと思った。
それから数年が過ぎ、私も大きく成長した。
もさみつも同様に、立派に成長していた。
たまに彼と一緒に寝ることがある。
その夜も、もさみつと並んで眠っていると、ふとした異変に気づいた。
もさみつは犬ではなく熊だったようだ笑
おかしいな、中型犬のはずなのに😆
刺激しないでその場を立ち去らねば笑
甲斐犬の平均寿命は14年から15年とされるが、もさみつはなんと19年も生きた。
そんな彼との思い出は、私の心にいつまでも残っている。
おしまい。