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夜の汽笛

夜、床に入ると、昔聞いた夜汽車の汽笛のことを思い出す。

寒い部屋の中で布団にもぐりこみ、あたたまってくると、一人で寝ていることに気がついて静かな覚醒を覚える。

しばらくすると、必ず夜汽車の音が聞こえる。国鉄の線路からはかなり離れているはずなのに、こんな遠くまで聞こえてくる。

黒い汽車が遠くからやってきて、遠くに去っていく。去ってしばらくすると、眠りにつく。

両親は朝になると必ずいた。だから眠る時に不安はない。

鋼の肉体と不屈の精神の父。だから、帰ってこないことはない。

父をどこまでも支え、不平を言うのを死ぬほど恥とするかのように、内なる炎を燃やし続けた母。

だから、ひとり寝の夜に全く不安がない。

そして寝ていると夜汽車が走りかかる。

夜汽車の音がこだまして聞こえてくると、その姿が目に浮かんでくる。目は閉じていてもその様子が浮かんでくる。頭の片隅に貼りついたみたいに。

夜はさみしい。

夜汽車の走る姿も暗く、孤独で、寂寥な影が深い。多分。

でも、夜汽車の走ってくる夜の床、その音を遠くで聞く床でさみしいと思ったことは、なぜかないように思う。

その風景が、さみしい夜汽車の音が、ヒリヒリと、今もとても懐かしい。

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