【有志翻訳】『某某』 第1話 江添(ジャン·テン)


 『あの夏の蝉声はよりさわがしく鳴いていた。教室の窓側に枝が勢いよく伸びていたが、真夏の日差しを遮れない』


 付属で明理楼最上階の休み時間はいつも騒々しくなっている。

 「注目して――、うちのクラスに新入りが来るらしいぞ!」

 二年A組の学習委員が大声で叫び、廊下から教室へ走ってきた。

 「敬事房の宦者さんはまたうそをついてきた」

誰かが学習委員をからかってきた。

 「お前こそ宦者め! っていうか、今回はウソじゃない!」

 「学年中間でもなく期末でもなく。新入りなんてありえないだろう?」

 「転校生だって」


 話が口に出た瞬間、教室にまた寝てない人たちがすぐ元気になってきた。

 「男の子?女の子?本当?」

 「百パーセントに間違いない!さっき私が見たんだ。イケメンで肌が白い男の子だ」

 学習委員が考えながら話を付け加えた。

 「うちらの先生は一体どんな方法を使って、他校のミスコンをうちに納められるんなあ」

 

 話が終わるや否や、やかましい声が一瞬教室の中に広がっていく。何人かの女の子が騒いでいるうちに、こっそりと最後列の片隅を見ていた。そこに、ある男の子が机にうつ伏せたままうたた寝をしていた。片手で頭を抱えて、細い指が少し曲がっていて、きれいな腕骨がはっきりと見える。

 周りがはしゃいすぎで、男の子が起こされた。機嫌が悪そうに髪をかきまわして寝直した。


 女の子たちが視線を戻し、聞く声も柔らかくなってきた

 「って、どこから転校したの?」

 学習委員がノリで学校名を口に出した。

 「何だって?周辺にこの学校がある?」

 「私にも聞いたことがないが、きっと省重点学校でしょう。そんなんじゃうちのクラスに転校できないよ」

 「ちょっとだけ調べて待ってて、先生たちの見張りをみんなに頼むぞ」

 とある子が言いながら、こっそりと机の中にスマホを取り出した。


 この子は素早くスマホでその学校の名前を打った。検索結果が出った瞬間、ぽかんとした。

 「嘘でしょう?」

 「何があった?」

 その子がスマホを周りに手渡し、検索結果を見たみんなも一同に唖然とした。

 沈黙が流れて、誰かが声を出し始めた。

 「ということで、このイケメンくんはほかの省から来たの?高一だけ勉強し終わって江蘇省へ転校する?大学入学試験のために?頭をドアに挟まれたのかい?」


 その頭をドアに挟まれたイケメンくん盛望(ション・ワン)は、いま職員室で先生たちの指示を待っていた。

 蝉が木陰で声をしゃがれたように鳴いている。盛望は少し窓を離れてまたイヤホンを耳に入れた。こうしてお父さんのボイメを聞き取られる。1分からのボイメ三つを続き連続で送るのは盛明陽いつもの癖だ。


 「陳さんはさっき電話をくれた、キミが1人で職員室へ行ったって。何で陳さんに待たないの?新しい場所また新しいクラスメイトなんて、誰が導いてくれたほうがいいだと思う――」

 「前の第一中学に比べて、学校の雰囲気はどうだった?差があり?同じ省重点学校だけど、省が違っていたから――」

 「徐さんにあったか?――」


 職員室のエアコンはちょっと古かったからか、風が当たるところだけ冷えていった。だけど、年に取った人にはぴったりした。盛望は風の出口に立ち、髪先にくっついた汗が風に吹かれて冷たくなった。彼がスマホをいじりながら各ボイメの冒頭を聞いて、思わず白目が剥かれた。だけど、三番目のボイメが耳に流れた時に呆然とした。


 陳さんは彼に新しい学校を送ってくれた運転手さんで、知っているのはあたりまえだ。校内には車の通行が禁止されていて、駐車場も遠く離れていたから。歩いたほうがマシだと、いっそ陳さんを先に帰らせた。

 では……


 「徐さんは誰なの?」

 盛望は送信ボタンを押したままに言った。

 「また冒頭だけ聞くのかい?」

 盛明陽がさっと返信した。

 盛望は襟元を掴め自分へ扇ぎながら、ネットが悪かったそうになったフリをしている。

 

 盛明陽は早速電話をかけてくれて、仕方がなくように言い始めた。

 「徐さんは教務主任だ。背はあまり高くないが、顔つきは端正で、時々厳しさをつくかもしれません。迎えに来てはずだのに、会ったか?」

 盛望はお父さんの話を考えながら思いを徐々に浮かべた。

 「そうなの?さっき迎えに来た先生はにこやかな顔をしていて、ずっと笑ってくれていたんだよ。まるでポールフランク、あの大口猿みたい」

 背も低くて、大まかに見ると、自分の肩と並べていた。話をした時もちょっとだけ顔を仰いだ。自分を職員室に置かれて、誰かに教材を取り出しに行てくるって階段を降り去ってしまった。


 盛明陽はすぐ状況を理解した。

 「ならばいい、たぶんあの人だ」

 「……」

 少し考えてみると、盛望がからかうような口調で言う。

 「父さん、私はどう?顔つきも端正なの?」

 盛望をぶん殴りたい。

 商人としての盛明陽は口がうまかったが、息子に対する時に舌が回らないんだ。


 ドアの外から人声がやって来た、盛望はドアの方に振り向いて一目で見た。

 「猿、いいえ、徐主任が来ました、切ったぞ」

 その話を聞いて、盛明陽が突然ハイスピードで話を言い始める。

 「わかった、しっかりやるね!初日で先生にいいイメージを残してあげるぞ。あだ名なんて呼ばないで」

 「うん―」

 盛望はズルズルと返信した。

 「夜、陳さんに迎えに行かせてくれ、俺もその時家に帰ってくるんだ、あと一緒に――」

 盛明陽は一時にためらったが、すぐに気軽いふりをして話し続けた。

 「一緒に江おばちゃんにご馳走しましょうか、前に相談したあの事だって、いい?」

 盛望は思わず唇を噛んだ。


 江おばちゃんの名前は江鷗(ジアン・オウ)であり、息子が1人いる。盛望は直に江おばちゃんに会ったことはないが、大ざっぱに二、三枚の写真くらいを見たことがある。

 この一年にその名前が途切れ途切れに聞こえてきた。最初の時2ヶ月か3ヶ月に1回を話しに出てきて、だんだんとほぼ毎日の話しに出てきた。もう慣れてきそうだった。盛明陽はこういうところにいつも申し分がなく、欠点にも指摘できない。こうして盛望はいくら怒ろうにも怒られなかった、爆発のいいタイミングもすでに逃されたんだ。


 先月、盛明陽は下半期が非常に忙しくなり、家にいられないことは普通になっていくと言って、また江鷗おばちゃんのほうにもなんの事情が起きて元の家に住まれないと言った。そこで、江鷗おばちゃんをうちに引っ越させてきたがった。こうして居場所もあるし、自分の世話も手伝ってくれる。

 世話を手伝ってくれるのはただの言い訳だ。掃除か料理をすることはすでに専門の家政婦おばさんに任せていた。そして、なんの事情が起きるのも事実ではない可能性があり、ただの引っ越させてくるの言い訳だ。たとえ最後に同棲したら彼らに追い返せることができるわけにはいかないんだろう?


 引っ越すのは相談があると言っても、実際に盛望の同意を得る前に、家に新しい生活用品が次々に出てきた。すべてはあの女を迎えるために用意したものだ。そうね、あの女だけでなく、女の息子もいる。

 今夜の晩餐を食べるか食べないか、結果も同じである。


 しばらく待っても盛望の返事はこなかった。盛明陽は電話の向こう側に名前を呼び始めた。

 その時、大口猿に似ていた徐主任が職員室に入って来た。盛望はちょっと呆れてからまた電話を切った。

 転校になる初日だから、教務部の徐主任はまだ微笑んでいる。「家族との電話?そんなに忙しく切らなくても大丈夫だ。彼らに安心してあげるのはあたりまえのことだ」

 「ありがとうございます。もう話が終ったところです」

 盛望は頭を振り向いて、若々しく笑って言った。 


 徐主任は盛望を指しながら後ろに立った先生に頷いた。さっき階下でほかの先生に転校生のこともう話した。新しく来た転校生は女の子が心に惹かれた顔を持ていたが、いい子だと一目でわかって、悪いことは決してしないって。


 「ここに座って」

 徐さんはさっき運ばれて来た教科書を指しながら盛望に言った。

 「これは理論的に今学期に使用された教科書だ、捲って見ても構わない。」

 理論的にってどういうこと?

 盛望はその話しの意味をしばらく理解できなくて、一番上に置いた化学書をめくっていた。前に勉強した内容に比べて、関連性があり、そして大まかに見て差がなくて、勉強するのは問題なしだと思っていた。


 「この前の資料を見たんだ。転校することはちょっと多くない?」

 「うん、何回目があります」

 盛望はこくりと頷き答えた。基本的に盛明陽の仕事に応じて転校した。

 江蘇省で小学校に通っていたが、中1から高1まで2回転校したことがある。今回は3回目の転校だ。いろんな転校のおかげで、盛望はどこにも感情がない。だって、すぐに離れるんだ。


 「成績表も見たんだよ、とても優秀な学生で、基本的にテストの時学年トップ3を落としたことはない。学力はきっと大丈夫だ。でも、両方の学校は課程の計画や配列などにちょっとした差がある」

 徐主任は話を言いながら、盛望に人差し指と親指で1センチぐらいの間を作った、また慰めるように話かけた。

 「転校するのは多少こんな問題にあったね。少し工夫をすれば、きっと追いかけるんだ」


 学業においては順風満帆の盛望は、今まで勉強に向き合った時、つらさを一切感じることはなく、恐れるはずがない。けど、今の場合は謙虚にしなければならなくて、盛望もしばらく天狗にならない方がいいだと思った。

 「学校に来る前に心底からもう準備しました、できる限り皆さんに追いつきます」


 そんな言葉を聞いた徐主任は、顔が前よりにこやかになってきた。

 「高1の時、分科選択したことがあったかい?」

 「ないです。けど、前の学校が一学期の総合選択制を実行したことがあります」

 「そうなんだ」

 徐主任がうなずきながら言いつけた。

 「実は俺らも選択制で、形式はちょっと特別けど……」

 盛望は少しぽかんとした。

 「特別?何のところが特別ですか?」


 「それはね。キミがもうすぐ入れるA組は高2の理数強化専攻クラスで、半学期に一回選択する。毎学期は学年中間テストと期末テストがあるじゃん。そこに最下位の三人はB組を選ばされて、また学年順位に最上位の三人をA組を選ばされる。という選択制だ」

 「……」

 簡単に言うと、ほかの学校の選択制は科目の選択で、こちらはクラスの選択だ。落ちるやつは直ちに出てゆけの選択だ。


 からかうような口調で脅し話をいっぱい言った後、徐主任はようやく盛望を教室のほうへつれていこうと決めました。

 彼は盛望をつれて花が満開した廊下を通って明理楼に向かていく。ある栄誉賞の展示エリアが通りかかった時、そこに展示された栄誉学生の写真は指名手配犯に似すぎていたから。盛望も思わず何回も目をやった。

 この学校の美意識はやばくない、と盛望は心から呟いた。


 徐主任はちょっと胸を張って、得意になり、すこぶる誇りをもって言い始める。

 「高1で参加できるコンクールの数はあまり多くないが、俺らはいい成績を収めたよ。このエリアに展示されたほとんどの学生はこれからキミのクラスメートになり、事前確認しても構わないんだ」


 盛望は顔を覚えるのが苦手で、事前にクラスメートを確認することなんても興味ない。だけど、ただ1人だけを覚えていた。

 一つ目はこの方の繰り返し率が高すぎで、一人で展示エリアの大半を占めていた。二つ目は彼の姓が江で、名前は江添だという。

 重点は二つ目だ。

 盛望は自分が王様になれるなら、きっと愚王だと自覚していた。連座するのが好きで、心も狭いし、どうせ最近江という姓を持つ人を気に食わないから。


 徐主任は繰り返しで展示エリアを鑑賞していて、突然顔をひそめた。江添という栄誉学生の写真に近づいて、手を伸ばして何回を拭いながら怒った口調で言った。

 「誰が展示エリアで勝手にハートを描いていたの?完全にみっともない!」

 「そうそう、どうやら描いていた人は1人のみならず」

 盛望はすぐ側から相槌を打って話を言い添えた。


 この学校のカメラマンさんの個性が強すぎで、撮られた人もそのままにオリジナルの特徴を保っていた。徐主任の話で言うなら、それはどこにいても女の子が心に惹かれた顔だ。でも、盛望はそうではないと思い、そんなクール男はたぶん枠がりくんだと思っていた。

 今後の生活はこの方に関わらないように、と盛望が心から祈る。そうでないと、いつかささやかなことでこの方とケンカを売る可能性もあるかもしれない。


 だけど、祈りが終わった5分後に、徐主任はクラスの整体レベルを追いかけるのは難しいから、一番良い方法は同席の人に問題を聞いたほうがいいと理屈をつけて、盛望を本物の枠がりくんの隣で座らされた。

 「高2生全員の中で、江添以外同席にふさわしい人はいないんだ」

 話が終わるや否や、クラスの全員が息を呑んで、窒息のような視線で盛望を見つめる。


 盛望も無言で大口に一瞥をして、もういい加減にしてくれよと心から呟いた。

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