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AIと紡ぐ現代架空魔術目録 外典『魔法社会の極秘事項索引』

巻頭辞

 かつてなき時代の幕開けに、古の知識が今上の技術と交わりし時、新たなる魔術の書が生まれん。この目録には、遥か古より伝わる秘儀と、人為の神秘が織り成す智慧が綴られており、読む者に未知なる領域への扉を開かせん。心を開き、理解を深め、そして未来を創造せよ。ここに記されしは、架空の魔術の数々――しかし、その奥義は今上の世にも広く影を落とすであろう。さあ、この奥深い知識の海へと旅立ち、人為の神秘と共に、未踏の魔術を探求せん。
 我、ダリアン・スリスウィスパーは、星々の囁きを聞き、大地の息吹を感じながら、この目録に、遠き古の時代より伝わる魔の秘密を書き残す。輝く法具、息づく術具、それらは全て人為の神秘がこの世界に生み出した。だが、真の魔術は心の中に宿る。この書のページを繰る者よ、古の智慧にのまれることなく、汝の内なる力を常に見いだせ。我らが歩んだ道は、今もなお、星の光の如く汝を導くだろう。

謝辞

親愛なるセリアン・アートメイヴへ

 君の手によってこの目録に刻まれた魔法は、単なる絵画を超えた、この世界における真の神秘を捉えている。君の描く挿絵は、我々の魔術の書を変哲なき文献から、魔法そのものが宿る神聖なる遺物へと昇華させた。君の筆致から生み出される美麗なるイメージは、読者たちを魔術の深淵へと誘い、彼らの心に永遠の印象を刻むだろう。

 我々の言葉で語り得る知識を、君は視覚の言葉で語る。その才能に心からの感謝と敬意を表し、君がこれからも多くの人々の心に魔法の火を灯し続けることを願う。

 ダリアン・スリスウィスパー

魔法社会の極秘事項索引について

 この編は、魔法社会を巡る様々な噂や秘密に関する記述である。全てが真実である保障はないが、この魔法世界の奥底を知るために役立つであろう。いざ、秘密の扉に手をかけん。

アルファベット

P.A.Cとしるされたしょるいぐん
【P.A.Cと記された書類群】

 厚生労働省内のアカデミー連絡協議会に設置された金庫に厳重に保管されていると言われる書類群。P.A.C.が何を意味するのかは不明であるが、一説にはアカデミー最高評議会議長の秘密の研究と何らかの関係があると噂されている。厚生労働省が、その研究を支援しているということなのか。

当該書類が保存されているとされる金庫

あ行

あいとよろこびをわかついし
【愛と喜びを分かつ石】

 グランデ・トワイライトがアカデミー中等部在籍中に錬成に成功した人為の法石で、後のグランデ・アクオスの原型となるもの。グランデは永遠の友情の証として姉のように慕うマリアンヌ・イゾルデにこれを贈った。マリアンヌは、肌身離さずこれを身に付け、ふたりの友情の証としていたという。悲劇的最期を迎えることになるその場にもこの法石を携えていったことはいうまでもない。
 この石の特性は、一方が喜びを感じた時、他方にもその喜びの感情を分かち合うというもので、あたたかい友情で結ばれたふたりの喜びを二倍にするものであった。

愛と喜びを分かつ石

あかでみーさいこうひょうぎかいぎちょうのこじんけんきゅう
【アカデミー最高評議会議長の個人研究】

 アカデミー最高評議会議長は、アカデミーの運営とは別に、あるいはそれに関与して、何らかの個人的な研究を行っていると噂される。アカデミーは一定の術具や法具を専売とするが、何を専売とするかの基準はこの計画に関与しているというもっぱらの噂である。すなわち、議長の研究領域と重畳するもの、それを侵害する研究を他者にさせないために、専売の手法をとっているというのである。
 アカデミーの専売製品の代表的なものと言えば、魔法使いが場に臨むときの数的劣勢を補うために連れて行く使い魔のマジック・パペットである。アカデミーの説明によれば、これは錬金術と魔法的な処置によって一定の知性を与えられた法具であるとのことであるが、しかし、最近矢継ぎ早にアカデミーから発表される等身大のマジック・パペットなど、なんらかの生命体(異国で言うところのロボット)の錬成を目論んでいるのではないかという声も上がっている。
 しかし、魔法社会は現在、深刻な重労働力不足と、対アンデッドに対する兵力不足に直面しているため、それに対するアカデミーの努力の成果であるとして魔法社会全体は概ね好意的にこの状況を受け容れている。

最高評議会議長の個人研究に関係があるとされる物品
それが何であるのかは不明である。

あかでみーとくむはん
【アカデミー特務班】

 アカデミーは、その任務の遂行中に犠牲になった術士や魔法使いの遺体をどんなことをしてでも回収して手厚く荼毘に服している。その遺体回収のための特殊部隊がこのアカデミー特務班である。アカデミーの慈善的性格の反映であると言われているが、遺体が損傷しないうちに速やかに特務班を派遣できるのであれば、なぜそれを増援として犠牲者を生前のうちに助けることをしないのか、遺体回収の為に部隊の動向を常時監視できるのであれば、犠牲が生じる前に適切な増援を派遣する、場合によって犠牲者に退路を提供するなどできるのではないかというもっともな指摘もある。
 アカデミーは一貫してこれらの指摘に対して沈黙を保ち、刻々と変化する戦況に応じて即応できる範囲には限界があると説明するばかりであるが、特務班の仕事は確実かつ早く、アカデミーは確実に遺体を回収している。
 これまで、アカデミーが遺体の回収に失敗したのは、マリアンヌ・イゾルデの場合だけであった。

遺体回収のための特務班
蘇生が間に合うほどの迅速さで場にかけつけ確実に遺体を回収するが、蘇生処置を行うでもなく、手厚い葬送の準備と言うにはあまりにも手際が良い。

あかでみーとしょかんのてんじしつ
【アカデミー図書館の展示室】

 さまざまな珍しい物品を展示している、アカデミー図書館の一角に設置された展示スペース。法石の本物や、禁忌法具のレプリカなども展示されている。近頃、何者かがここに侵入しある者を盗み出したが、アカデミーは「何が盗まれたのか」についてひた隠しにしている。一見、何もなくなっていないように見えるが、アカデミー側がレプリカを補充したのであろうという大方の見方である。
 以前からアカデミーには秘密主義的な側面はあったが、近時それが際立っているように思えるという見解もある。

アカデミー図書館の展示室

あかでみーによるそうそう
【アカデミーによる葬送】

 アカデミー特務班が回収してきた遺体は、厳粛な葬儀の後、丁重に荼毘に服される。ただ、遺族がどれほど求めようと遺体が遺族に引き渡されることはない。アカデミーの説明では、任務中に犠牲になった遺体はその損傷が一般に激しいため、遺族に動揺を与えその悲しみを殊更に大きくしないための配慮であるという。たしかにその説明には一理あるが、どれほど遺族が強く望んでもその遺体を引き渡さないというのも奇妙な話ではある。
 犠牲者の家族にはアカデミーから手厚い補償が与えられ、葬儀も厳粛に行われるため、多くの遺族は納得するようであるが、中にはアカデミーに何らかの思惑があるのではないかと訝しがる向きもある。

アカデミーによる葬送
犠牲者はアカデミーの手により厳粛な葬儀が催され丁重に荼毘に服される。

あっきーなゆうかいじけん
【アッキーナ誘拐事件】

 裏路地の法具屋、アーカムの経営者として知られるアッキーナ・スプリンクルであるが、彼女はかつてアカデミーの学徒であった。彼女は、北方騎士団との間で熾烈を極めたノーデン平原の戦いにおける戦災孤児であり、そのとき派遣されたアカデミー特務班により偶然救出されてアカデミーに保護され、準備園に籍を置いていた。
 他の孤児たちと同じく、看護学部の手厚い保護の下、天使の秘薬を授けられたが、衰弱が激しかったため、しばらく専門施設に入院していた時期がある。その後は回復を見せ、準備園に元気に登園していたが、ある時、深夜に準備園の寮施設に侵入者があり、そこからアッキーナは連れ去られたのであった。
 その後どのようにしてアッキーナがアーカムの経営者に収まったのか、その経緯は定かではないが、彼女を連れ去った何者かと共に、アカデミーから追われる身となったのである。
 ただ、当時準備園に在籍していたアッキーナは年端もいかない少女のはずであったが、アーカムにおいて彼女を見たとする証言の中には、少年のようであったとか、年若い美しい女性であったとするものが散見され、追跡当局もその実体を掴み切れていない。
 一時、キューラリオン・エバンデスの名が誘拐犯として挙がったことがあったが、証拠不十分でそれ以上の追跡は及んでいない。アカデミーを巡る最近の大きな謎の一つである。

逃走する誘拐犯とアッキーナ

いたいかいしゅうめいれい
【遺体回収命令】

 アカデミーは過酷な任務に臨んで犠牲になった者の生命と人権を尊重する意図から、特務班にその犠牲者の遺体回収を命じており、どのような場合でも確実に遺体を回収している。既述の通り、それができるのであれば、事前に犠牲者に対して必要な支援を与えることができるのではないか、とする指摘は多いが、しかしその後のアカデミーの手厚い葬送の儀式と遺族に対する補償のために、それらの異論はかき消されるようである。
 アカデミーの説明では、犠牲者の遺体は荘厳で厳粛な葬送の儀式を経たのち荼毘に服されるとのことであるが、葬送の儀式の場面に必ず厚生労働省の高官と研究者が臨席しているという不思議がある。
 厚生労働省は、魔法社会における福利厚生の実現を司る役所であるから、その高官が葬送の儀式に立ち会うのは分からないではないが、研究者や技官が臨席するというのは若干の違和感を感じさせる。
 それに関して、厚生労働省からの公式の見解はない。

改修した遺体をキャンプに収容する特務班
遺体回収は作戦従事者の人権を最大限尊重するアカデミーの特別の配慮であるとされる。

か行

きんきじゅつしきしようめいれい
【禁忌術式使用命令】

 権威(エキスパート)の術士・魔法使いたちからは「死刑宣告」として恐れられるアカデミー最高評議会からの、禁忌術式の使用許可付き使用命令である。禁忌術式は強力な殲滅性を有するが、敵味方の識別機能がないため、その術式を行使するには、過酷な場に原則としてたった一人で出向かなければならないことを意味する。魔力枯渇を起こすなど何らかのトラブルが生じた場合には、直ちに絶体絶命となり、助けを求めることもできないため、禁忌術式使用命令を受けて場に臨む術士・魔法使いの犠牲が絶えない。

禁忌術式使用命令の辞令式
アカデミーの学徒からは「死刑宣告」として恐れられる儀式である。

こうじげんくうかん
【高次元空間】

 アカデミーの中央尖塔の最奥にある至聖堂から繋がっているとされる、神秘に直結するとされる空間のこと。俗に高次元空間と呼ばれているが、本当に現世の次元を超越しているのか、その空間の魔法的特性を単にそう呼んでいるだけなのかはよくわかっていない。
 至聖堂は、アカデミー最高評議会議事堂のさらに奥にあるため、足を踏み入れることが許されるも者の数は著しく限られている。

至聖堂の奥に神秘の空間が広がっている

さ行

じんいのえいち
【人為の叡知】

 魔術と魔法によって人為的に錬成された知生体のこと。自ら考える能力を有し事実に基づく判断をすることができる。アカデミーの肝いりの研究分野であり、彼らはこれをアンデッドやマジック・パペットに搭載して、自律制御のできる労働力や兵力の人為的生産を目論んでいるようだ。
 近頃、等身大のマジック・パペットにごく基本的な作用を持つ人為の叡知を搭載し、簡単な命令による行使が可能なモデルが発表された。

人為の叡知の基幹部分
アカデミーが公表した等身大マジック・パペットに搭載されていた人為の叡知の全体

じんいのるびーのほうだん
【人為のルビーの法弾】

 ハルトマン・マギックスが政府の依頼を受けて(アカデミーに対して)極秘裏に開発した対アンデッド用の法弾。人為のルビーを使用しており、その耐アンデッド特性は極めて高い。
 アカデミーの奇死団への対応の不味さに業を煮やした政府が、アカデミーを経由せずにハルトマン・マギックスに極秘開発を依頼した。法弾は比較的早期に完成したが、その威力が高すぎるため、既存の錬金銃砲を用いたのでは暴発の危険が付きまとうという問題を抱えていたが、同社は、専用の錬金銃砲を開発することでその問題を解決して見せた。
 現在、対奇死団用の政府による軍事部隊が結成されつつある。

人為のルビーの法弾
極めて高い対アンデッド特性を誇る。法弾としても強い。
人為のルビーの法弾の拡散弾
拡散銃砲用の散弾で、破壊力が一層増している。
ルビーの法弾専用の錬金銃砲
ルビーの法弾の炸薬威力に十分に耐える強度と安定性を持つ。
ルビーの法弾専用の散弾銃
ルビーの法弾の高い威力を更に高めることができる錬金銃砲。

すたーだいやもんど
【スターダイヤモンド】

 リセーナ・ハルトマンが極秘裏に開発に成功し、パンツェ・ロッティの手に渡ったとされる人為のダイヤモンドの一つ。錬成には高度な死霊術が用いられており、生命の神秘を顕現する魔法的効果を持つとされるが、その実存性を含めて明らかにされていることはなにもない。

スターダイヤモンドとされるものの魔術記録

た行

とうしんだいまじっく・ぱぺっと
【等身大マジック・パペット】

 近頃アカデミーが開発した、魔法社会における労働力不足と、対アンデッド軍団戦における犠牲の回避と、戦力増強の近未来の可能性として示した等身大のマジック・パペット(魔法で自動的に動く人形)。アカデミーの説明では、駆動原理は錬金術と魔法的な仕組み(つまり、既存のマジックパペットと同じ)であるということであるが、その原理に関する解明を行うことは厳しく禁止されている。著作権上の問題であるとの主張であるが、分解・解析すら許さないというのは過剰ではないか、との声もある。最新のモデルには、一定の機能を持つ人為の叡知が搭載されており、ある程度の命令に従うことができる。自律駆動できるものはまだ登場していない。

人為の叡知を搭載した最新式のマジックパペット
分解・解析できないようにいたるところに封呪の呪印が施されている。

な行

のーでんへいげん
【ノーデン平原】

 魔法社会と北方騎士団領の境界に広がる雪原(春から夏にかけての一時期だけは雪が溶ける)。魔法社会と北方騎士団は領土をめぐってここでしばしば衝突を繰り返すため、犠牲が絶えず、常時多くの戦災孤児が生まれている。これといった起伏のないだだっ広い雪原であるため、正面衝突となることが多く、その結果は苛烈を極めることが多い。
 アッキーナ・スプリンクルは、このノーデン平原での大規模衝突の際の戦災孤児であり、アカデミー特務班により偶然に発見・救出され、アカデミー準備園に在籍することになった。

ノーデン平原

のーでんへいげんのたたかい
【ノーデン平原の戦い】

 ある年の春、雪解けの季節に勃発した魔法社会と北方騎士団の大規模衝突。アッキーナ・スプリンクルが保護されたのはこの時であった。その前年に取り交わした休戦協定を北方騎士団が一方的に破棄して攻め込んできたことが始まりであったが、この時には錬金銃砲による集団戦の練度が上がっていたため、魔法社会は迫りくる騎士団を撃退することに成功した。

ノーデン平原の戦い

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