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パティシエが現場でリアルに愛用している器具10選

これから紹介する10のアイテム、使わない日はありません。現場で活躍しているものばかりです。
全てAmazonで購入できるものに限定し厳選しました。気になった商品があればチェックして下さい。

ドリテック  キッチンスケール

私たちパティシエの仕事は計量から始まります。料理人よりもはるか多くの計量をこなしています。粉、砂糖、卵、乳製品などの無形の食材を基本的に扱うからです。
そう、キッチンスケール選びでつまずくことはできないのです。
丸みを帯びた掴みやすいシンプルなデザイン。180×120というサイズでありながら3kgの計量をこなします。これは一般的に1〜2kgスケールのサイズ感です。コンパクトでパワフル、ほとんどの計量物がこの一台で事足りています。多少重たいボールや鍋を置いて計量してもキャパが大きいのでびくともしません。さらに1kgまでは0.5g単位で計量できる正確さも兼ね備えています。
無駄な機能がなく、ボタンは電源と風袋だけ。無駄な機能とは例えばmlモードやカロリー計算などです。誤押をすればトラブルの元です。ちなみに私のルセットは液体も固体も全てg表記で統一しています。
そして物理ボタンなのはやはり良いです。打鍵感”カツカツ”もお気に入り。風袋を押した時の反応の早さも申し分ありません。
公式の使い方ではないかもしれませんが、電源オフの状態から計量する容器を置き電源を入れると風袋され、ゼロ表示からスタートしてくれます。この表示までの時間が早いです。他のメーカーのスケールは表示が極端に遅かったり、中にはこの使い方に対応していないものもあります。少しのことですがこの機能は重要です。この機能があるないでは5秒ほど計量に取り掛かるまで差が出ます。5秒は大きな差です。
※この使い方には賛否あるようです。スケールに負担をかけるという声も聞かれます。ちなみに私は日々この使い方をしていますが3年前に購入して今のところ何の不備もありません。
このスケール、自宅で使ったら最強だと思っています。まず計れないものはないでしょう。私自身、自宅でも使っていることは言うまでもありせん。

マイクロプレイン  ゼスター

素晴らしいのはこの切れ味。主に柑橘類果皮の処理に使います。擦り心地が驚くほど軽く滑らかです。そしてこの切れ味により果皮の水分が出ないのですり下ろされた皮はフワフワ。すりおろしの表現にフワフワってないと思います。しかしこのゼスターはそう表現させてくれます。
クレープシュゼットのオレンジバターを仕込む際、一度に40個のオレンジを処理しますが、あっという間に片づきます。労力軽減、腱鞘炎リスク軽減にも一役買っています。
チョコレートやナッツのような硬い食材もフワッとすりおろしてくれるので仕上げの表情づけにも最適です。一般的に色味のピスタチオはアッシェ(みじん切り)されますが私はこのゼスターを使いデザートに直接すりおろして振りかます。立体感が出てとても美しいからです。

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ハンドルのグリップ力、フィーリング、適度な太さからもメーカーの信頼と信用を感じます。業界の中でもゼスターと言えばマイクロプレインと皆答えるでしょう。
お店では目のサイズの異なる3タイプを使い分けています。お勧めはリンクの商品です。

マトファ  ホイッパー

若き頃、製菓専門書を読みあさっていた日々。製作工程の写真に何度も写り込むこのホイッパー。マッドなブラックのハンドルにワンポイントのイエローカラー。このデザインに惚れ込みどこのメーカーの物かと調べる。フランスの調理製菓器具老舗ブランド、マトファ社のホイッパーでした。
初めてフランスに渡航した際、パリのMORA(モラ)という製菓器具店で2つのサイズを購入しました。現地で購入すると日本の半値ほどです。

https://note.com/iwmerci30/n/nf3d3b39ef8be


憧れとデザイン性だけで購入したこのホイッパー、使ってみてもやはり満足でした。特に全長25㎝サイズを強くお勧めします。コンパクトで軽いのにとても頑丈。ワイヤーの数は少なく丈夫で且つしなやかです。購入して10年以上経ちますが今尚現役です。
クレーム・パティシエール(カスタードクリーム)のように粘りのあるクリームを火にかけ混ぜる際、しっかりと受け止めながら滑らかにワイヤーを抜けていきます。ワイヤーの硬さが絶妙なのです。
ハンドルは細く鉛筆持ちで混ぜる際もスムーズです。鉛筆持ちとは固さの無い軽い生地やクリームを混ぜるときの持ち方です。仕込むパーツの固さに応じてホイッパーの持ち方、持つ位置を変え、手首や腕への負担を軽減しています。

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使い心地の良さに自宅でも一本購入しました。日本で購入すると割高です。

ビストロ  ステンレス鍋

シンプルで無駄のないデザイン、優れた熱伝導性、そして軽量、文句なしです。
厨房ではこのビストロシリーズの鍋を各サイズ取り揃えています。私の使用頻度が最も高い15㎝の鍋。先ほど紹介したマトファ25㎝のホイッパーとの相性は抜群で、この組み合わせで日々多くの仕込みをこなしています。
そして他の鍋に比べ焦げ付きが明らかに少ないことが挙げられます。クレーム・パティシエールもツルッとキレイに炊き上げられます。牛乳のタンパク質は非常にこげつきやすいのですが、この鍋なら心配ないでしょう。
最も優れている点は耐久性です。とにかく強い。作業台から何度か落下させてしまいましたがびくともしません。10年以上毎日使い続けています。おそらく一生使える鍋だと思います。
もちろん電磁調理対応。あらゆる熱源に適合しています。

ブラウン  ハンドブレンダー

様々なメーカーからハンドブレンダーが販売されていますが、最も有名なのはバーミックス。可動したときの音が静かで食材を滑らかに回します。プロ用と家庭用がありインテリアにももってこい。私も以前使用していました。
しかし使っていてとても不自由に感じるのです。それは先端を取り外せないこと。そして重心が上にあるのでスタンドには重さが必要です。(多めの水をはったポットなど)スタンドは重さがないと不安定で倒れます。そんなシーンを何度も見てきました。さらに刃が露出しているがどうしても気になります。
そこで私が愛用しているのがブラウンのハンドブレンダー。
先端が取り外し可能でアタッチメントの種類も豊富、刃は囲う形状となっています。
レストランでは仕上げ用の泡の攪拌に使用。きめ細かで繊細に泡立ちます。

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その他ガナッシュやクリームの乳化にも使用しています。キレイな艶が生まれ、乳化がより密に仕上がります。
この商品、握る圧によって回転パワーがコントロールできる優れもののようですがその機能はあまり使っていません。いつも握りきっています。
付属のフードプロセッサーはピスタチオのアッシェや試作で少量の生地を仕込む際に重宝しています。
バーミックスに比べてしまうと繊細さは多少欠けますがが許容の範囲でしょう。使い勝手の良さを優先しブラウンを愛用しています。

浅井商店 銅製カヌレ型

ピンポイント過ぎるので紹介するか少々躊躇いましたが解説します。
レストランのお茶菓子で提供しているカヌレ 。美味しいカヌレ を焼くための必須条件は銅製のカヌレ型を使うことです。シリコン型などに比べれると焼き上がりの差は歴然です。クラスト(焼き目)のパリッとした食感が最高に心地良いのです。そして中央の窪み部分まで均一に色を付けてくれます。
一度銅型でカヌレを焼くと他の安価な型には戻れなくなってしまいます。
優れているのは銅の熱伝導性にあります。200°を超える高温のオーブンで素早く均一に熱を与えてくれ高温を保持します。焼成中、生地は沸騰し続けていることが重要。この沸騰により気泡ができもっちりとした食感が生まれます。銅型が選ばれる理由です。

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お店の後輩料理人がこの型を使って自宅で焼いてくれました。レシピと作り方の手順は私が焼いているものと同じです。
10年以上前に購入した家庭用のオーブンですがレストランで出せるレベルで焼けていると思います。古いオーブンでも銅型を使うことでしっかりと生地に熱を与えてくれます。焼き色を見ればそれがわかります。
型は小のサイズを使っています。レストランのお茶菓子であまり大きくできないからです。他に大サイズとトールサイズがあります。個人的には大きな型で焼く方が焼き目の食感ともっちりの対比をより感じられると思っています。

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デバイヤー シルパット

エンジ色の外周にベージュ色の本体、このデザインがシルパットの定番で飽きがきたのデバイヤーのシルパットを購入しました。デザインだけで購入しましたが使っていてとてもタフです。だいたい1年も使い続けるとフチがボロボロになりだすのですが3年経って今のところそれがありません。
生地離れが非常に良く、焼きあがった生地が簡単に剥がれるのも魅力。

ラバーメイド ゴムベラ

パティシエにとって必須器具のゴムベラ。
扱う生地やクリームに応じてゴム部分の固さやサイズを変えて仕込みをします。このゴムベラは適度に固さと弾力があり反発がしなやかで驚くほど扱いやすいゴムベラで愛用しています。
注目すべきはゴム部分の窪みです。これはボールのフチにフィットします。つまりフチについたクリームもキレイにかき集められる特殊な形状なのです。ボンボン・ショコラのコーティングもこのゴムベラで行いますが、フチについたチョコレートを一瞬で拭き取ったかのようにキレイにかき集めてくれます。この機能、一番のお気に入りポイントです。おそらくこの形状のゴムベラはラバーメイドだけのものでしょう。
耐熱温度は260°で高温のキャラメルにも使えます。仕込みに制限がないのもメリットで最も使用頻度の高いゴムベラです。
同じようなデザインでマトファのゴムベラがあります。これは柔らかすぎて私には扱えませんでした。


ラバーメイド ゴムベラ(大) 

再びゴムベラを紹介します。
始めに紹介しゴムベラの(大)サイズもあるのですがそれは使いやすいとは言えませんでした。メーカーは同じですがこちらのゴムベラのしなりが絶妙だったのでこれを多用しています。ヘラの部分の面積も広いので一度に多くのクリームをかき集められます。混ぜの作業もしっかりクリームを面で捕らえキレイに分散してくれます。
ボールの直径が30㎝を超えると大きいサイズを使います。ボールに見合うサイズのゴムベラを使いましょう。目安としてボールの直径に対して1〜1.5倍が適性サイズです。これはホイッパーも同じことが言えます。
耐熱温度は100°ほど。絶対に火を使う仕込みに使ってはいけません。
主に生菓子の合わせや熱を持たない生地の混ぜに使っています。
ゴムベラ選びはとにかく自分がしっくりくる固さであることに尽きると思います。大のゴムベラはこれが最も使いやすく10年近く愛用しています。

ミソノUX-10  ペティナイフ

パティスリーからレストランの世界に飛び込み、驚いたのは料理人の包丁の切れ味でした。気持ち良いほどよく切れる。包丁の刃が触れているだけなのにオレンジの皮が削がれていく、世が世であれば立派な凶器です。
そんな料理人の先輩たちが挙って使っていた包丁がミソノのUX−10シリーズです。このシリーズのペティを求め合羽橋に駆け込みました。
先に紹介したカヌレ型もそうですが、器具選びで料理や菓子が美味しくなるというのが多々あります。よく切れる包丁を使うこともその一つです。よく切れる包丁は食材の繊維を壊しません、美しく断ち切るので美味しさを逃しません。パティスリーにいた頃、それほど包丁に意識を向けていませんでした。パティシエは料理人に比べ包丁を使う仕込みが少なく拘りも薄い。しかしレストランで働きその大切さとこの発見から包丁を大切に扱っています。
騙されたと思って自宅によく切れる包丁を備えてみてください。料理が楽しくなります。間違いなく楽しくなります。お約束します。
"切れない包丁使っている奴、だいたい仕事できない"
昔グランシェフに言われたこと、今でも鮮明に覚えています。

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良い道具を厳選し使いこなすことで作業効率が上がり生産性が飛躍的に向上します。さらに菓子たちは劇的に美しく美味しく仕上がります。
ここで紹介した器具を菓子作りに携わる全ての人にお勧めします。一つでもお気に入りが見つかれば幸いです。参考にして下さい。

ありがとうございました。


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