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パンチライン百科事典 p.14 -TV BOY-

 ドラゴンボールを始めとした少年ジャンプ系の漫画の面白さとは「格好良さ」の徹底的な追求とその誇張によって成り立っていると思います。そして、それはWestside Gunnのペンゲームも同じです。彼の口から放たれる武勇伝の数々はリアリティの無いものも多いですが、ある種Westside Gunnというキャラクターによって魅せられる世界観の作り込みが洗練されていますし、何よりユーモアに溢れています。そんな彼の特徴が顕著に現れているラインが『Hiller Wears Hermes 8: Side B』に収録されている曲の中にあります。今回はそれを紹介しようと思います。

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Westside Gunn - TV BOY 1:43〜

When God made FLYGOD, he ain't make 'em no more
And then the sun shined (And then the sun shined)

神がFLYGODを生み出した時、彼はそれ以上は生み出さなかった
そして太陽が輝いた(
そして太陽が輝いた
1:43〜

 「俺は神によって太陽よりも前に生み出された唯一無二の存在である」。これがこのラインにおいて、Westside Gunnが主張しているメッセージです。ここにはとりわけ複雑な言葉遊びが入っているわけではありません。完全にド直球且つ、内容勝負の一撃必殺ラインとなっています。まず、これを理解するためには、天地創造について知っておく必要があります。既に知っている人もいるかと思いますが、天地創造とはユダヤ教のヘブライ語聖書、キリスト教の旧約聖書にて語られている、神による世界の創造のことです(以下詳細)。

<6日間の天地創造> 創世記1章~2章初め
最初に「カオス」「混沌」がある。神は6日間にわたって世界をつくる。1日目、光と闇、昼と夜。2日目、水を上と下に分け、上が空ないし天とされる。3日目、天の下の水が集められて海になり、乾いた所が地になる。植物がつくられる。4日目、太陽と月と星がつくられる。5日目、水の中の生き物と鳥がつくられる。6日目、地上の生き物がつくられ、人がつくられる。人は「神の似姿」とされ、すべての生き物を支配するとされる。7日目、神は休む。

「名著33 『旧約聖書』:100分 de 名著」より

このように、神は7日間かけて世界を創造したとされているのですが、その4日目、太陽と月と星が作られる前にWestside Gunnは誕生しています(していません)。太陽は誰よりも天高くに位置し、常に光り輝く存在です。そして地球上のあらゆる生物は太陽無しではその生命を存続できないと言っても過言ではありません。では、なぜ神は、世界を創造する上でそれ程重要な太陽を生み出す前にWestside Gunnを誕生させたのでしょうか(させていません)。それは至極単純。彼がそれだけ偉大だからです。そもそも彼のニックネームがFLYGODであることからも分かるように、彼は限りなく神に近い存在として自分のことを表現しているのではないでしょうか。インターネットが普及し、自分のことを発信する場所が増えて来た今、私も様々なセルフブランディングを見てきましたが、ここまで露骨に俺=神なアーティストはあまり見たことがありません。一言で厨二病だといってしまえばそれまでなんですが、Westside Gunnはこの超次元的発言を格好良いものとして伝えるための魅せ方が凄く上手いです。今回の"And then the sun shined"(そして太陽が輝いた)の部分においても、正に彼のドヤ顔が思い浮かぶような高揚感のある歌い上げ方をしています(しかも2回も言ってますし…)。逆に言うと、こういったユーモアを楽しめるかどうかが、彼の楽曲を鑑賞する際の重要なポイントになるのではないでしょうか。


P.S. Westside Gunnっていう名前を初めて聞いた時は、完全にLAのギャングスタラッパーだと思ってました笑


written by  じょん

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