パンチライン百科事典 p.12 -J Batters-
2020年、コロナ化で多くのアーティストが影響を受ける中、そんな感染症の影響をものともせず作品を連続リリースし、一気にシーンにインパクトを与えた集団がいました。その名もGriselda Recordsです。彼らはニューヨーク州バッファロー出身で、Westside Gunnを筆頭にConway the MachineとBenny the Butcherの計3人がメインアクターを務めています。今回はその中でも特に巧みなペンゲームを魅せてくれるConway the Machineのパンチラインを紹介しようと思います。
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Big Ghost Ltd, Conway the Machine - J Batters 1:04〜
I don't need rap, I just contact my guy
He throwin' bricks like Shaq at the line when he was past his prime
ラップはいらない、俺は俺の男と連絡を取るだけだ
あいつはラインに立つ全盛期を過ぎたシャックのようにレンガを投げつけるんだ
1:04〜
これはConwayが自分のマネタイズ能力をバスケットボール選手の様子と例えてダブルミーニングで表現しているラインです。まず前提知識として単語の意味を整理しておくと、”contact”には「連絡をする」と「接触をする」という意味があり、”brick”には一般的な「レンガ」という意味に加えて、スラング的な用途として、「コカインの塊」という意味とバスケットボールにおける「ミスショット」という意味があります。これらを踏まえて、2通りの見方をすることでこのラインに隠されたダブルミーニングを理解することが出来ます。
まずは見方①
①
I don't need rap, I just contact my guy
He throwin' bricks
ラップはいらない、俺は俺の男と連絡(contact)を取るだけだ
彼はレンガ=コカインの塊(brick)を投げつけるんだ
これは恐らくConwayの「連絡一本で知り合いからレンガ=コカインの塊(brick)をもらえるため、ラップをしなくともコカインの売買で生活できる」という主張だ思います。
次に見方②
②
I just contact my guy
He throwin' bricks like Shaq at the line when he was past his prime
俺はあいつと体を接触させる(contact)だけだ
ラインに立つ全盛期を過ぎたシャックのようにレンガ=ミスショット(brick)を投げつけるんだ
これは一言で説明すると、有名なNBA選手であるShaquille O'Nealがファールを受けたときにもらえるフリースローを外す様子を描写しています。ShaqはNBA史上屈指のパワーとテクニックを持った選手だったのですが、唯一の欠点としてフリースローが下手だという点がありました。そのため、相手選手は、まともにディフェンスをしても彼を止めることが出来ないので、わざとファールをし、苦手なフリースローを打たせることで、失点を回避していました。つまり、ここでの"contact"とは体をぶつけてファールをする「ボディコンタクト」のことを指しており、そうすることでShaqにミスショット(brick)を投げさせるという、あの戦術をこのラインで言及しているのです。
今回のダブルミーニングを整理すると以下のようになります。
意味①
俺は知り合いへの連絡一本でコカインが手に入るため、ラップをする必要はない。
意味②
シャックはファールをしてフリースローを打たせておけば得点することはない。
バスケットボールやアメリカンフットボールといったスポーツに言及をして、詩を紡いでいくスタイルは完全にConwayの伝統芸能なのですが、ここまで巧妙にダブルミーニングとして一つのラインに組み込んでくるとなると、流石に驚きを隠せません。決してこの2つの意味の中に特に深い何かがあるわけではないのですが、純粋に面白さと格好良さを追求したこの言葉遊びはヒップホップらしいパンチラインだと思います。正に彼はパンチライン製造マシーンといったところなのでしょうか。
P.S. Conwayの本名はDemond Priceと言います。クレジットなどには本名で登録されていることが多いので是非チェックしてみて下さい。隠れConwayが見つかるかも。
written by じょん
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