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からっぽサンタ

「やってしまった…。」

サンタはうなだれていた。
秋から始まるおもちゃの準備
大忙しのサンタさん
プレゼント入れる大事な袋
ほつれに気づきやしなかった。

今日は12月24日の夜。
一軒目に到着するまでは順調だった。
袋を取ろうとした時に、大変なことに気づいた。


袋のほつれが広がって
破れた穴からおもちゃが全部
袋を飛び出し消えてった。


「おもちゃが、一つもない…。」


困ったサンタは考えた。

「どうしようどうしよう。
 毎年やってるクリスマス
 おもちゃがないとは一大事」


トナカイのベルがささやいた。
「あんた毎年やってて、えらい
 今年くらいはおもちゃ無くても
 誰もあんたを責めないヨ」

もう一匹のトナカイの
スズがすかさずこう返す。
「だけどやるって決めた以上は
 できなかったじゃ済ませない
 きちんと全部お家を回って
 ごめんなさいをしに行こう」


サンタは、ママとパパに謝るために
一軒一軒お家を回ることにした。

「ごめんなさい
 袋をうっかり破いてしまい
 おもちゃが全部なくなって
 今年はおもちゃがありません」


サンタは、一生懸命、そして素直に謝った。

するとママもパパも微笑んで
「礼儀正しいサンタさんだねえ。
 子どもからも愛されるわけだよ
 今年くらい、いいんじゃないの?
 いつもありがとう。
 良かったらこれ、おひとつどうぞ」
そう言って、クッキーを差し出してくれた。


「いいんですか。本当にありがとうございます!来年こそは、素敵なプレゼントを用意します」

サンタは泣いて喜んだ。


その後もちゃんと一軒一軒まわったサンタ。

「毎年ありがとうね。
 これ、少しだけど、キャンディをどうぞ」

「今年くらい、いいんじゃねえか?
 あんたその手袋もほつれてんじゃあないの。
 この手袋やるよ」

サンタは涙が止まらなかった。

「元気を与えようと思ってやってきたのに、僕がこんなにも元気をもらえるなんて」


サンタは、全てのお家を周り終えた。



朝になり、大慌てでベルがサンタを起こしに行った。

「大変だヨ!町中に子どもがたくさん溢れてるヨ!」

「どういうことだい?」

空飛ぶソリから落っこちたおもちゃが
町のあちらこちらに散らばって、みな思い思いのおもちゃを手に取っていたのだった。


どこからか声が聴こえる。

「今年くらいは、こんな特別なクリスマスがあってもいいよな」


おしまい

かい(改@3分物語)



この物語は、先日「関西夢フェス」というイベントにてご縁をいただいた栗林正司さんという方に教えていただいた記事からインスパイアを受け、作らせていただきました。
ありがとうございます。
▼記事

▼関西夢フェスInstagram

▼クリリンこと、栗林正司さんのInstagram


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