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私の夢は、
愛する人からお花をプレゼントされること。

ロマンチスト?と言われるかもしれないけれど
憧れるじゃん?そりゃあ。

何を憧れたっていい。何を目指したっていい。
人生はそう、自由だ。

私は気ままに生きると決めた。
外に一切出られない、出てもマスクを外せない
そんな世界がやっと終わって
世界に色が弾け出す。

私の色が、弾け出すのだ。

パリにヴェネツィア、バルセロナ。
どの街も、その街の香りがあって
その街にしかない色がある。

私は、ドイツで出会った、画家で仕立て屋をするドイツ人の彼と、恋に落ちた。
彼の、自由で創造的なところが、私に似ていて大好きだった。


だけど本当は、私たちは全てが違った。
言葉も違う。
文化も違う。

会話をしてても、面白いと思うところが違う。
話は合わない。趣味も合わない。

ジョークの文化が、私にはさっぱりわからない。
何が、面白いんだろうか。

私が悩みの話をしても、彼はジョークだと思ってしまう。

「最近、誰かにつけられている気がするの…」

「きっとそれは僕だね。」

「ねえ…。本気なんだってば!」

「わかってるさ。僕も本気だよ?」


彼にわかってもらえないという悩みの種が、
もやもやと黒い根を生やし、私の不安を漠然と大きくする。

誰かにつけられている。
玄関に、心当たりのない小包が届いていた。
私はすがるように、彼に電話していた。

「ねえ…。本当に聞いて?本当に誰かにつけられてると思うの…。
 知らない宛先から、小包が届いた…。
 あなたは文化が違うからわからないかもしれないけれど
 私は本気で言ってるの!お願い、分かって…!」

私は、携帯電話を握りしめながら、小包を開ける。


中から出てきたのは、美しい花束だった。

「確かに、言葉も違えば文化も違う。
 だけどね、夢は同じなんだ。

 僕の夢は、愛する人に花束を贈ることなんだ。
 誕生日おめでとう。」

そこには、下手な手書きの日本語で、手紙が添えられていた。


「趣味も違って、話もうまく噛み合わせてあげられなくて
 本当にいつもごめんね。
 でも、どうしても、照れ隠ししたくて。

 僕らは、何もかも違うかもしれないけれど、
 通じていることが3つだけある。

 それは、想いと夢だ。
 自由に、自分の人生を生きる。その想いがあるから、僕らはお互いをリスペクトできる。そうだろ?
 そして、夢で繋がっている。これからもいくらでも、君に花を贈り続けるよ。」

「3つ目は…?」

「うーん。それは、野暮な質問だね。」

なんとも心地の悪い静寂が流れる。

「やっぱり、話は噛み合わないね…。」


二人はしばらくして、弾け出すように笑い合った。



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