見出し画像

「活字の種を作った人々」展に行ってきました

 みなさんこんにちは!

今回は、大日本印刷株式会社の「市谷の杜 本と活字館」に行ってきました。 

以前、TOPPAN(旧:凸版印刷)の印刷博物館に行ってきましたが、今回はイワタにも関係の深い企画展が開催されているとのことで、早速伺ってきました!





1. 市谷の杜 本と活字館


市谷の杜 本と活字館 とは

2020年11月に市谷に誕生した本づくりの文化施設です。
コンセプトは「リアルファクトリー」。活版印刷を中心とした印刷所であると同時に、モノづくり工房として、印刷の美しさや奥深さ、楽しさを体感していただきたいという願いをこめて、開館いたしました。

〈出展:市谷の杜 本と活字館 ホームページより〉


市谷の杜 本と活字館は、東京にあるJR市ヶ谷駅から徒歩で15分くらい歩いた、大日本印刷本社の敷地内にあります。

ちなみにこの施設、結構急な坂の上にあります。

加えて、当日は雨だったので少しげんなりしていたのですが・・・

建物が見えた瞬間にワクワクが止まりませんでした。 

荘厳でレトロな空気に包まれていますね。


こちら、2020年に誕生した施設ではあるものの、建物の外観は1926年の竣工当時の姿に復元しているそうです。

・・・曇り空も相まって、雰囲気満点!
 

外観だけでなく中もフォトスポットだらけです。


市谷の杜 本と活字館では、1階に常設展、2階に展示室と制作室があります。

常設展では、大日本印刷の活版印刷(活字制作、文選、植字、印刷)と本づくり(製本)について具体的な道具や装置などとともに見て学ぶことができます。

活字を収納しているこの棚は、通称「馬」と呼ばれるそうです。


虫眼鏡で拡大しないと見えないぐらい小さい活字がかわいいですね。


2階には展示室と制作室、購買があります。

制作室では活版印刷とノートづくりのワークショップも行っていて、みなさんとても楽しそうに体験されていました。
(私は予約をしていなかったので体験できませんでした😢)

 


2. 企画展「活字の種を作った人々」


2階にある展示室は、期間限定で展示イベントが開催されるスペースです。

そして、なんといっても今回の訪問目的がこの展示室。
2023年11月3日から企画展【 活字の種を作った人々 】が開催されています。

 
活版印刷に必要不可欠な活字。

活字は母型とよばれる型に、鉛などの金属を流し込み固めることで完成します。

母型を製造するベントン彫刻機などの機械が無い時代、どのようにして活字を作っていたかというと・・・

① 直方体にした黄楊つげの木の先端に左右反転に文字を彫る
 ※書体によっては、鉛の角棒の先端を直接彫る直掘じかぼりという方法もありました。
② 型を取り文字の部分が凹状になった「母型」をつくる
③ 母型に鉛合金を注ぎ冷却する

この①の作業で作られるものを「種字たねじ」といい、彫刻する職人を「種字彫刻師」と呼んでいます。

作業を逆算して考えてみると、

活字 を作るためには 母型 が必要
母型 を作るためには 種字 が必要
種字 を作るためには 彫刻師 が必要

ということですね。

この時代、彫刻師がいなければ活字は生まれないのです。


「活字の種を作った人々」展では、活字の大元となる種字を作る種字彫刻師にスポットを当てたもので、活版製造所とともに14名の種字彫刻師が紹介されています。
(イワタも、種字の実物などの資料提供もさせていただいています!)


イワタの源流となった1920年創業の岩田母型製造所も、活版製造所の中の一つです。

 しかし、当時の印刷業界では職人の名前をあまり表に出さないという風習が一般的であったため、種字彫刻師の方々の名前はほとんど記録に残っていないそうなんです・・・。

この展示は、現代まで名前が残っている数少ない種字彫刻師の方々の記録を辿り、実際の道具や活字/種字などを一緒に見ることができる、活字マニアにはたまらない、とても貴重な展示なのです。

今回は、みなさんに実際に行って見ていただきたい気持ちもありますので、イワタnoteでは少しだけ内容をご紹介したいと思います!
 



巨大な種字や活字を実際に持って見ることができます!
種字の文字は、左右反転でデザインされているんです(驚愕)
岩田母型製造所のブースもありました! 

ここでは、岩田母型製造所に関わっていた種字彫刻師を5名紹介しています。

・大間善治郞
・馬場政吉
・庭田與一
・清水金之助
・中川原勝雄

私は、恥ずかしながらイワタの礎を築いた種字彫刻師の方々についてはあまり知らなかったため、とても勉強になりました。


大間善次郎氏が木彫りした種字(30ポイント)は、イワタのエントランスにも展示しています。

それがこちら。


美しすぎませんか?!

わずか1センチ四方に、左右反転でこの精度の文字を彫るなんて・・・

今回の「活字の種を作った人々」の展示では、この木彫り種字の現物を見ることができます。

小さな木に彫られた緻密な種字の実物は、人の手で掘られたという実感が湧かないほどに統一され美しく、一見の価値ありです!
 

種字を彫刻するために使用された彫刻刀などの道具も展示してあるので、当時の制作現場に思いを馳せることができます。



2008年には、イワタに清水金之助氏をお招きし「清水金之助氏 活字地金彫刻実演」を開催し、実際に種字彫刻を披露してくださいました。

私はまだ入社前だったので見ることができませんでしたが、貴重な写真が残っていましたのでご紹介します!


鉛の角棒の先端を直接彫る直掘じかぼりを披露していただいている様子がこちら
 

拡大してみましょう。

5mmほどの大きさです!信じられません。

神業ともいえる職人技を実際に見てみたかったです・・・



3. しおりづくり


少し番外編ですが、1階にある常設展の一画に、印刷博物館に訪問した際に体験したアダナ印刷機を発見!

人生で2回目の活版印刷を体験させていただきました。

ずれて印刷しないように慎重に配置、ムラのできないようにインキを4回たっぷりとつけ紙にグッと押しつけます。
 

しかも「活字の種を作った人々」展にちなんだ特別な絵柄でした!

 

これに


これを印刷すると


こうなります(かわいい!)

印刷する紙によってもインキの色合いがすこし違って見えるのも趣があって良いですね!

 
そういえば、展示の中で「インキ」という言葉を見かけました。

インキ? インク?

何が違うのか、はたまた同じものなのか 
気になったので調べてみました。

・インキ :オランダ語
・インク :英語
 
粘度によっても分けることができるみたいです。
(インキ:粘度高、インク:粘度低)
特に印刷業界ではインキと呼ばれるのが一般的だそうです。


 
ワークショップの体験はもちろん予約制なのですが、平日は来館自体も要予約ですのでお気を付けください。


「活字の種を作った人々」展は、2024年6月2日まで開催しています!
会期中にも、展示物が入れかわることもあるそうなので、要チェックですね。

活字風の館内表示にもセンスが感じられます。
至るところにこだわりがちりばめられていて、
常にワクワクとする建物です。

 
また、スタッフの方にも大変丁寧にご案内、解説いただきました。

本と活字館さま、ありがとうございました!

みなさんもぜひ足を運んでみてくださいね。


それでは、今回もご覧いただきありがとうございました!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?