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走り書きだって嬉しい。いや、走り書き「だから」嬉しい。

 長女が友達へ手紙を書くとき、

「相手の事を想って丁寧に書こうね」

と妻が言う。貰う手紙は丁寧な方が嬉しい。

 しかし、時には走り書き、殴り書きが嬉しいこともある。今、私の手元にはとても丁寧とは言えない手紙がある。

 寄附している学童保育団体からの手紙。

封を切って送り状を一目見て、自然と笑顔になった。

「あいつらしい」

そして

「忙しいのにありがとう」

という気持ち。

 この学童保育の団体は、高校時代の友人が代表を務める。同じ部活で青春を謳歌した仲間だ。現在は共学だが、当時は男子校だったため、ここには記せないようなエピソードばかり。テニスを頑張っていたのか、ふざけ合っていたのか。当時の彼を思い出すと、笑顔しか浮かばない。

 今回の投稿は、その友人との話。

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社会を変えたい

 彼と私は付属校だったため同じ大学に進学したが、学部も活動分野も違ったため、大学時代はほとんど交流が無かった。

 7年前、約10年ぶりに「飲まない?」と連絡が入った。もともと「高校時代の部活の同窓会をしたいね」とは言っていたもののなかなか動きが無かった。「会いたい」「報告したいことがある」なんて言われたら、二つ返事で「もちろん」と答えた。

 当時、5人が集まり新橋で飲んだ。彼が用意した報告は、表向きは「事業を立ち上げること」だった。そして、もう1つ用意していた報告は「複雑な家庭で育った」というカミングアウトだった。しかも特に複雑化した時期は、我々がバカ騒ぎの毎日を過ごした、あの高校時代だった。

 高校生の時、家族が問題を起こしてしまい、夜逃げをして生活をしていた。苦しくもがく中、支援してくれる人に救ってもらえた。辛い毎日を経験した時、自分はなんとか救われたが、生まれ育った家庭や環境でその後の人生が左右されない社会の実現したいと誓ったという話。

 私の中にある彼の高校時代の記憶は、笑顔だった。ただただ、ショックだった。なぜ言ってくれなかった?という問いを皆で競うようにしたが、友達に話せないほど自分には重すぎる現実だったというような返答だった。

 このカミングアウトの内容は、去年、ダイアモンドや毎日新聞の記事にもなり、ヤフーニュースにも取り上げられた。

  記事の見出しを見た時も7年前と同じく、ショックを受けた。

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いや、今見てもショックに変わりない。

 友達である私は、毎日一緒に過ごしていたのに彼の辛さに気づけなかった。信頼関係にショックだったのではない。彼は信頼関係云々で言えなかったわけではないからだ。そうではなく、彼の変化に、隠している背景に全く気付けなかった自分にショックを受けた。

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 新橋の飲み会は終わることなく、最終的に当時、彼が創業メンバーと同居していた事務所兼自宅のアパートに泊まった。

 彼のカミングアウトにショックを受けたものの、その飲み会は終始熱く楽しいものだった。というのも、ショッキングな話を上回る彼の「事業への情熱」に胸を打たれたからだ。

 最初は、高校の友人だから学童保育事業を応援したいと思った。

 しかし、次第に彼の目指すもの、事業計画に惚れて応援したいに変わった。そして、彼ならやってくれる。まだ子どももいなかったし、学童保育の実情も何も知らない20代の男が「本気で学童を変えてくれ」、そんな思いに変わった。今考えてもツッコミどころ満載なのだが、それでも彼を全力で応援したい、そう思った。

 その後、予定通りNPO法人が立ち上がり、私はFBを通じて彼を応援した。

 保護者説明会では「学童保育は保護者のため、働くためにあるんじゃない。子どもが主役だ!」と吠えた……なんて投稿があったり、「クソみたいな学童を変える」「学童はサービス業じゃない、教育だ」と業界にかみついたり。

 「クソみたいな」という表現も子どもはもちろん、学童の現場で頑張っている人たちが報われるシステムを作りたい、世の中に学童の重要性を伝えたいという現場愛からの投げかけなのだが、SNS上では言葉の表面だけが独り歩きしてしまうこともある。前置き無しに尖った言葉を放ち続けることには、ワクワクする気持ちと「大丈夫か?」という気持ちが常に同居した。

 ただ、そんな私のザワザワは取り越し苦労だったようだ。賛同者のコメントは次々に増え、そして彼の前置きを、そして想いを知る人、共感する人も増えた。

ビックマウスではなく、本気。
口先ではなく、心からのメッセージ。

 SNSを通じて、彼と子供たち、スタッフさんの笑顔の写真を増えるたび嬉しかった。

 初めての卒業式の映像には、自然と涙があふれた。

 この映像に知り合いは創業メンバーしかいない。支援しているからとか関係なしに、子どもたちが生き生きと素敵な時間を過ごしていることに、ただ感動した。

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 今回届いた年次報告の冊子。冒頭、代表である彼がこんなメッセージを書いている。

「怒りから愛へ ただひたすら、こどもたちや保護者と向き合ってきた5年間」

 社会を変えたい、学童を変えたいという熱い「芯」の部分はそのままに、トゲトゲしていた彼の闘志は、丸みをつけながらより大きくなっている。

日本一になれているかどうかはわかりませんが、こどもたちのためならどこまでも愛情を注ぎ続けるクレイジーな仲間たちと、こどもたちと保護者の皆様と一緒に、日本で一番こどもたちの幸せを追求する居場所を作っていきたいと思います。(メッセージより)

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 冒頭に書いた手紙の話。送り状はこんな感じ。

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宛名書きは「くん」付けで斜めに上っている。お手本のような走り書きだ。

想像する。彼の忙しく充実した日常を。

想像する。増え続けている支援者の数を。

走り書きだから嬉しくなったその根拠はそんなところだろう。

 私にも社会貢献したいという欲がある。それは日頃の企業のサポートであったり、税に携わる仕事、子育て、地域、なんだって基礎にはその欲がある。でも、学童保育においては、私は知識も無ければ行動することもない。彼を応援することで、はじめて私と学童が繋がる。

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素敵な挑戦を応援させてくれてありがとう。
また、落ち着いたら、飲みいこうね。

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2013年8月、新橋にて
(奥がいさな、手前がわたし。……お互い、太ったな 笑)

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あとがき

 寄附しようぜ!という気持ちで投稿したわけではありません。それは当然、人それぞれでいい。
 偽善と言われようが、微力だろうが、自己満だろうが、何かしたい。その時に「支援」「応援」という手段があることがとっても嬉しいということ。あとまぁ、友人自慢です 笑。

 私は幸運にも友人のおかげで、このような活動に繋がりました。そうでなくとも、今はSNSなどで積極的に思いを発信でき、繋がりやすくなっています。マンスリーサポートやクラウドファンディング、ふるさと納税(ガバメントクラウドファンディング)など様々な応援の仕方が増えています。
 例えば、ふるさと納税は毎年12月がピーク。ふるさと納税を検討されている方は返礼品の他、どんな「思い」があるか、覗いてみると新たな繋がりに出会えるかもしれません。

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今回紹介したNPO法人CFAについて

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あそびこそ、さいこうのまなび。
見出しの画像も年次報告の冊子を撮影したものです。

 5周年を迎えた今年は、新たにこどもと大人で社会問題を解決するプログラムが始動とのこと。ますます楽しみです。

(本投稿は、NPO法人代表の中山勇魚君に許可をとっています)

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