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万能よりも個性を生かすパーティ【#どう変わる正社員】

#どう変わる正社員

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(前置き)シミュレーションRPGが好き

 突然ですが、私はあまりテレビゲームやアプリゲームをしません。

 時間が無駄だ!という硬派な意見ではないですよ。

 単純に、下手だからです。

 一応流行りのゲームをやってみる ⇒ 最初は楽しい ⇒ だんだん難しくなる ⇒ 面倒くさくなる ⇒ やめる⇒ 上達しない ⇒ 流行りのゲームを・・・の残念なループです。

 マリカーしようぜ、ウイイレやろうぜって言われると内心「マジかぁ」と嘆き、スマブラなんて日には弱すぎて逆にバトル相手に申し訳ない気分でした 笑。

 ただ、そんな私でも、学生時代、唯一ハマったタイプのゲームがありました。

 シミュレーションRPGです(半熟英雄、ファイヤーエムブレム、FFタクティクスなど)。

 特にファイアーエムブレムは好きでした。RPGなのにマップを歩く必要が無く、ただ戦うだけ。戦うのもエンカウントではなく、ステージが用意されていて、こちらが自由に戦わせたいキャラクターを「駒」のように配置し、挑むだけ。

 格闘ゲームのような瞬発力や複雑なコマンド入力も求められないし、謎解きや世界中のアイテム集めもさほど求められない。画面の中では闘いが起きていますが、操作する側はとても平和なゲームです。

 楽しさはキャラクターを育てることと最高のパーティーを築くこと。

傭兵や戦士ならオールマイティに能力が高いけれど、アーマーナイトのように守備力の高い相手には歯が立たない。
魔導士や弓兵は遠くから攻撃できるが、物理攻撃に弱い。
広範囲に移動できる飛行タイプや盗賊、1マス攻撃だけでなく2マス攻撃できる槍などなど。

 攻撃力、防御力だけでなく、移動距離や攻撃範囲、相性などキャラクターの「個性」をどう生かすかが一番の醍醐味です。

 そして、この「個性」を生かし育てる戦略は、まさしく企業経営にも通じるものだと思います。今回はそんな視点から「#どう変わる正社員」。

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■ パーティを築く

 シミュレーションRPGは、様々なキャラクターの個性を理解し、最高のパーティを育てたり、敵陣構成によって臨機応変に対応できるキャラを育てます。

 企業経営に置き換えたら、例えばスタートアップで創業する場合。

① カリスマ性のある勇者タイプが、最高のパーティを築くため適材適所の人員を集めて立ち上げるケース。
② 強力な魔法を使う賢者タイプ(専門家)が何人かで立ち上げ
「おいおい、魔法だけじゃ勝てないぜ?」とその他の属性の専門家がサポーターとして集うケース。
強くてニューゲーム的に、少数でもとんでもなく戦闘力が高い集団で独立するケース。

 などが成功しそうです。いずれも同じタイプの人間ばかりではなく、少数でも成し遂げられるだけの個性をもった集団と言う点が共通です。

 これが組織として大きくなっていくと、たくさんの現場に多種多様なパーティーが求められます。

 その場合、徐々に求められてくるキャラクターがオールマイティに能力の高い傭兵、戦士タイプです。たくさんのパーティを同時プレイするなら風紀が乱れるよりも、放置プレイでも計算できそうな構成にしたい。

 とりあえず万能な人材を採用しよう。個性のある属性は弱点も大きいので高リスク。

 とりあえず万能な人材を育成しよう。目の前の敵に物理攻撃していれば、ローコストでダメージが多かれ少なかれ与えられる。

 しかし、このとりあえずは結局「とりあえず」です。ゲームでもある程度、難易度が上がってくると多種多様なキャラが育っていなければ詰みます。

魔法使いA
入社時「私は後方から闘いを支える事が得意です。もちろん物理攻撃もがんばりたいです!」
入社後「毎日、物理攻撃・・・。まだ入社して魔法唱えていないなぁ」
退職を決意「同期や先輩に恵まれてよい環境だったけれど、自分のしたいことではなかったので~」
ドラゴンナイトB
入社時「私は幅広く移動できます!」
入社後「本当は1人で先回りして攻撃できるんだけどなぁ。孤立しては困るからと、結局歩きのキャラと同じ移動距離かぁ。」
退職を決意「やっぱりドラゴン乗れるとこ活かしたいので・・」

 組織が大きくなると、良い人材も集まりやすいかもしれませんが、企業側が生かしきれない体制であれば、意欲は湧きません。

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■ 熱意ある社員の割合「6%」

 以前、日経新聞の記事を引用し、このような投稿をしました。

熱意ある社員は、全体の1割未満?(2019.11.5)

 日経新聞より ↓

世論調査や人材コンサルティングを手掛ける米ギャラップが世界各国の企業を対象に実施した従業員のエンゲージメント(仕事への熱意度)調査によると、日本は「熱意あふれる社員」の割合が6%しかないことが分かった。米国の32%と比べて大幅に低く、調査した139カ国中132位と最下位クラスだった。

 この記事に持論を書いたところ、以下のようなコメントを頂きました。

① 6%という数字に驚きはない。妥当。
② 逆に熱意があれば抜きに出るチャンス。
熱意ある人は独立してしまう

 熱意ある人は独立してしまう。納得の意見です。

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 そして、3/24の日経にはこんな記事がありました。

日本「働きがい低下」42% -国際調査 企業の改善策急務
世界約60カ国の大規模調査「働きがいのある会社ランキング(GPTW)」の20年版では、7千を超える各国企業の働きがいを調査した。日本企業では「低下傾向」という回答が42.5%を占め、「改善傾向」を15.9ポイントも上回った。長時間労働の是正などを進めた一方で、効率を重視するあまり、職場のコミュニケーションが減ったことなどが背景のようだ。(記事より)

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次は「働きがい改革」 - 満足度など測り改善、生産性向上
働きがいを意味する「エンゲージメント」を重視する日本企業が増えている。組織の「健康診断」を実施して職場風土を改善し、生産性アップや離職防止につなげる狙いだ。単なる働き方改革だけでは、労働意欲を高めにくい。経団連が旗を振り、三井住友銀行が全行で意識調査を始める。働きがい改革は、日本企業が競争力を取り戻す妙薬になるか。(記事より)

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 働きがい改革・・・また新たなワード。イクメンが流行った後に、いくじなし夫という言葉が生まれた時のような感覚だなぁ・・・。

 働き方改革に関しても、働かない改革と揶揄されるように、法制度面で改革が起きても、それが形式的なもので実質的な改革になっていないのかもしれません。

 こんなデータばかり見ていると「どう変わる正社員」というテーマは、もう機能しないもの、崩壊していくものというような暗い未来が待っていそうです。

 フリーランスの増加や、副業しやすい環境になってきたので、それが素直な捉え方かもしれませんが、私はそれでも正社員、企業というものがまた躍進する方向性もあるべきでは?と思います。せめて6%よりは上昇するような。

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■ 知識創造企業

 企業経営において、私が組織論のバイブルとして手元に置く書が暗黙知・形式知で有名な野中郁次郎先生の「知識創造企業」です。

 高度成長を果たした日本型経営の研究が詰まった本です。

 企業の成長には、暗黙知と形式知の創造が鍵になる、という指摘。

暗黙知とは、主観に基づく洞察、直観、勘が、この知識の範疇に含まれ、個人の行動、経験、理想、価値観、情念などにも深く根ざしている。

形式知とは、言葉や数字で表すことができ、厳密なデータ、科学方程式、明示化された手続き、普遍的原則などで、たやすく伝達、共有できる。(9頁)

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 非常に簡単にまとめると、従来の日本型経営(組織)は、個々の経験や価値観(暗黙知)によりイノベーションが生まれ、それを共有・定着化(マニュアル化)させる能力も高く、そのスピード感、一体感から、また新たに高度な暗黙知による知識創造の循環が起きるというものです。

 暗黙知で終わらせない、頼りすぎない。

 形式知ばかりでマニュアル過剰とさせない。

 日本型経営は古い・・・という固定観念ではなく、その循環させる構図が形骸化していることが問題であるという趣旨です。

 個々人、企業を成長させる鍵は「知」の創造。

 これは、前置きで紹介したシミュレーションRPGでいう「個性」をどう高め、活かしていくかと繋がるように感じます。

 ちなみに、私がゲームで愛用していたキャラの1つが踊り子でした。攻撃も防御もパラメータはかなり低いので、常に敵に接触しないよう味方で囲ってあげなくてはいけません。一度でも孤立させたらアウト。なぜそんな弱く手間のかかるキャラを愛用していたかというと、「踊る」という特殊技を重宝したためです。「踊る」を使うと隣接する味方キャラがそのターンもう一度行動できるようになります。すなわち、踊り子自体の能力が低くても、攻撃力の高いキャラが二回攻撃できたり、瀕死の味方が二回移動で敵陣から逃れたり。

 イノベーターのように知を生み出す人こそ個性が光りやすいですが、それを繋げたり広げる能力が高い人もまたその分野のエースになれます。

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■ 正社員に求めるもの

 フリーランスは今後も増加傾向が続くと思います。正社員制度もどんどん従来の安心感というものが崩れてきていますし、個の知が企業を経由せずとも社会にダイレクトに影響をもたらすことができるような情報社会になってきました。

 熱意のある人にとって勤め先の「個の知⇒企業の知⇒社会の知」という循環が滞っていると感じた時、「個の知⇒社会の知」という選択が例え規模が小さくても魅力的に感じます。

 であれば、経営者目線で考えると「個の知⇒企業の知⇒社会の知」という循環をスムーズにすることが熱意ある社員を生み、かつその後も社員として活動してもらえるポイントではないかと考えます。

① 企業の知 ⇒ 社会の知

 これは社会に何をもたらすかという「企業理念・目標」の部分でしょう。CSR活動しましょうとかSDGsを考えましょうとかではなく(もちろんそれもとても大切ですが)、社員が「この会社にいればこんなことができる」という自己を高めたい動機となるもの。

 RPGのパーティーも主人公の世界平和に賛同してついていきます。たまにせっかく育てたキャラが、

パラディン「私はこの街を守るために残ることにしよう。勇者よ、必ず世界平和をもたらしてくれ」

と離脱(独立)するケースがあります。えーーっと内心動揺しますが、この場合はスマートに送り出してあげたいですね。

② 個の知 ⇒ 企業の知

 個々の正社員を歯車ではなく、企業理念や目標達成のため、暗黙知の源泉として捉えているかどうか。

 例えば、最近話題なAI人材争奪戦。必要に迫られて、IT人材の年収が跳ね上がりました。一括採用や一律な「採用」ではなく、人財「投資」という意識が強化されてきていますね。

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■ 副業について

 企業は、個々の能力を高めるため、配置転換をしたり、出向させたり、MBAを推奨したりと行動してきましたが、副業等もこの延長線に考えていくとよいのではないかと考えます。

 暗黙知を習得する方法の1つに副業(複業)が追加される。これは知の創造の高度化、多様化のイメージ。

出向や副業など別の環境で学ぶことは、RPGでいえば、

弓使い「すまない、ちょっと母国の様子が気になる。」

 と言い残し戦線を離脱したキャラが、また途中で

弓使い「おお、勇者どの。無事だったか。こちらは目標を果たした。また共に戦おう」

 と復帰し、何やらとんでもなく強い攻撃を習得して帰ってくるような感覚でしょうか。

 私も税理士業の他に10年以上講師業をしてきました。まだまだ修行中ですが、喋ることやセミナーの資料作成などに関しては、確実に私の個性になっていると自負しています。

 あ、ちなみにゲームでいえば、私はおそらく盗賊タイプです。いろいろな分野にちょこちょこ顔を出す移動距離が持ち味です。

 私の仕事(税理士)も、将来無くなる仕事とアナウンスされています。この点、色々持論もありますが、ただ現状のまま行くことはないでしょうから可能性を探るために動きます。たくさん移動させてもらえるのも、スタッフにアーマーナイトのような守備力高い堅実な存在がいるから。頼もしいです。社員にも、己の個性を伸ばす実務や学習(研究活動)、副業等様々な選択肢で経験値を高める活動を後押ししたい。というか、期待しています! 

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■ 社内フリーランス化

 個性が求められると考えると、正社員が「守られたフリーランス」化していく事が理想ではないかと思います。

 ドラッカーが唱えた知識社会。より高度な知識や情報が求められるということは、大人数であれ、今までの傭兵・戦士の万能キャラばかりでは次のダンジョンに進めません。

 むしろ万能型キャラといえば、これからは「AI」というエース的な存在も加わります。

 AIを生かしながら、ヒトが光る部分はやはり個性なのかもしれません。

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■ 終わりに

 今回は、熱意あふれる社員の割合が6%の世の中だから正社員制度なんていらない、古い。果たしてそうだろうかという疑問から今回は書いてみました。

 実は一度書きあげたものの、1週間以上下書きにしていました。公開ボタンをなかなか押せませんでした。

 それはコロナの影響を日々痛感しているからです。

 確定申告を仕事を終えた後、安堵を感じる暇もなく、飛び込んできている資金繰りや融資の相談。借りたその先は、どうなりそうか。直撃している飲食業だけでなく、世界的規模のため、その他業種も各々どのようなタイミングで悪化するか戦々恐々としています。現実的な話、社員の昇給をどうすべきかという相談も多い。

 今現在のリアルと書いた内容の理想論とのギャップに「今はそれどころではない」と自粛していました。

 ただ私もnoteを通じて「今できることをしよう」というポジティブな発信に元気をもらったり、のほほんとした投稿に和んだりさせて頂きました。

 今は本当にできることをするしかないし、場合によって耐えるしかないケースもあるかもしれない。それでも、その先にどんな経営、実質的な働き方改革が求められているか。未来を考えることもまさしく「今できること」。

 私は目の前の事務所、顧問先の会社のサポーターとして「社員の労働意欲が6%」とはならない様。

 正社員だってフリーランスだって、仕事、家庭、趣味だって、なんだって意欲が高い方がいい。

#COMEMO #nikkei

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