DH、レフト、ライトの打力とチームの打力に明瞭な相関は認められない:近年のパ・リーグ

日本プロ野球を扱うDELTA社のデータサイト「1.02」では各ポジションで先発出場した打者の打力を閲覧することができます(月1000円!)。今シーズンのDHについて該当ページを開いて驚きました、というのはwRC+とチーム順位との間に逆相関のような関係が見られるからです。改めてそれぞれのチームの状況について考えれば、各チームでそうなっていること自体は飲み込めるものの、それぞれのポジションの打力の加重平均がチームの打力な訳ですから非常に不思議な現象には間違いありません。

ということで対象を広げてカタカタしましたというお話です。対象は2014~2021年パ・リーグの48チーム、データの出典はDELTA1.02

結果

2021シーズン

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一般

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相関係数はチーム全体のwRC+と当該ポジションのwRC+、
(私もよく分かっていませんが、)P値が0.05を下回っていると明らかに相関があると言える(らしい)。なので、一塁手、二塁手、三塁手、遊撃手、中堅手の打力とチーム打力には相関があると言えます。

しかし、それ以外の指名打者、捕手、左翼手、右翼手の打力とチーム打力に相関があると確かには言えない、という結果です。それぞれのポジションの打力の平均からチーム全体の打力が構成されることを考えれば、非常に不思議な現象です。考えてもなぜ相関が弱いことが示唆されるのか分からなかったため実例を見てみました。(特殊なので今回は捕手については置きます)

今回調べている範囲で、左翼手のwRC+の平均値は113でしたので、(左翼手のwRC+)=(チームのwRC+) + 13 という推定式を置くことにし、この直線からの距離で大きく外れている(wRC+での差が40以上の)例を見てみます。(他ポジションについても同様)

チームの打力に両翼手やDHがついて行けていない例

西武ではチーム全体の打撃成績に両翼手やDHがついて行けていない例が多数見られます。
西武:()内は差が35以上40未満
LF:17年、18年、19年、(21年)
RF:14年、(17年)、19年、(21年)
DH:18年、19年
単に西武が外野手の編成に失敗しているだけにも見えますが、秋山翔吾選手在籍時の西武打線が非常に高レベルであった(ハードル自体が高かった)ことに留意する必要はあり、彼が圧倒的な打力をセンターで示していてチームも好調だった2019シーズンまでと2020シーズン以降は分けて考える必要があります。西武以外では、
LF:18年ロッテ
RF:15年日本ハム、19年ホークス
DH:18年ロッテ、20年ロッテ、21年オリックス
などが例として挙げられます。

チームの打力が両翼手やDHについて行けていない例 

()内はポジションの打撃成績を牽引した選手
LF:16年ロッテ(角中勝也選手)、20, 21年オリックス(吉田正尚選手)
RF:14年オリックス(糸井嘉男選手)、16年ロッテ(清田育宏選手)、21年オリックス(杉本裕太郎選手)
DH:17年日本ハム(大谷翔平選手と近藤健介選手)、19年オリックス(S.ロメロ選手と吉田正尚選手)、21年日本ハム(近藤健介選手)

考察

一般に、センターは外野の中で難易度の高いポジションとされています。また打力と守備難易度の間にはトレードオフの関係があることが知られていて、内野の打力では 1B>3B>2B>SS の関係が成り立っていて、打力と守備の難易度のトレードオフの関係が明らかです。しかし、外野の打力においては、平均値で見ると LF>CF>RF となっていて、守備の難易度と対応していません。
これは、センターを守る柳田悠岐選手と秋山翔吾選手が規格外の打力を示してきたことに主に起因しています。平均値と中央値の乖離や分散の大きさからも見て取れます。
両選手の存在は、両翼の打撃力とチームの打撃力に相関が見られない要因を示唆しています。
すなわち、内野においては打撃と守備力にトレードオフの関係がある一種の分担作業が発生し、外野でもこうした例はしばしば見られます。しかしながら外野では、打てて守れる圧倒的な5ツールプレイヤーがセンターに配置され、相対的に打撃・守備両面で劣る選手が両翼に置かれる、という配置も分担配置に劣らない数で見られます。そのため両者が打ち消し合って、両翼とチーム全体の打力に相関を見出しにくくしていると考えることができます。

似たような現象はDHでも起こると考えられます。DHに打力が優れる選手を優先的に置くケースと、他のポジションに打守ともに優れる選手を置いて残った中で打撃がマシな選手を置くケースの二通りがあり、両者が打ち消し合って、DHとチーム全体の打力に相関を見出しにくくしているという構図です。

まとめ

*内野は守備と打撃のトレードオフの関係と分担配置が明らかにあり、チーム全体の打力と各ポジションの打力に相関関係がある
*外野とDHは、分担配置と、攻守ともに優れた選手がセンターともに劣る選手が両翼やDHという配置の両方あって、チーム全体の打力と両翼DHの打力に相関関係が見出しづらい
*こうした一般法則で説明できないレベルで西武は外野の編成に失敗している

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