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怪物、だーれだ?

映画『怪物』を観た。

私も怪物だ。というのが最初の感想で、ものすごく自分に引き寄せて観てしまったので観終わった後に気持ちがずっしりしてしまった。
安藤サクラ演じるシングルマザーに自己投影しすぎて、後半が特につらい。

『怪物』では、同じ出来事を3つの視点で描いているのだけれど、物語が進むにつれて「同じ出来事」は「同じじゃない」ことがわかっていく。
見えてる景色が、聞こえてくる言葉が、それぞれの「私」が望むように補完されて進んでいく。
「私」が望むように。は相手の気持ちと違うから、ずれる。
でも、相手の気持ちを意識するとしんどいから、見えてしまうと対処しなければいけないから、なかったことにする。
なかったことにした自分に気づくのもしんどいから、そもそも違う訳ないと思い込む。
そしてズレが大きくなっていく…と抽象的に言うとそんなお話だった。

今回もそうだったけど、是枝監督作品を見るといつも心がざわざわしてしまう。
言葉にしないけど、確実に存在するモヤモヤ、ザラザラした感情を突き付けられる感じがする。
そんな言語化できなくて擬態語ばかりになっちゃうのが、是枝作品だよなぁとも思う。

『怪物』ももう一度観たいけど、一回目には気づけなかったことがたくさん見つかりそうで、それを見つけることが怖いような気持ちがある。
気持ちがずっしりしちゃうのが嫌なのかな。心が動くのを恐れるなんてエネルギー不足だわ。

しかしながら、最後のシーンは本当に本当に美しくて、涙が出ました。
観るのを迷っているひとは、ぜったいに映画館で集中して観た方がいいよ。

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