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2020年カスタマーサクセスをとりまく予想

これは カスタマーサクセス Advent Calendar 2019 15日目のエントリーです。

自己紹介

こんにちは。TOWN株式会社でビジネスコラボレーションツール「Aipo」のシステムエンジニアを担当している岩崎(@neeton_iwasaki)と申します。

Webデザイナーとして社会人のキャリアをスタートし、Aipoの開発に携わる前は受託開発でECサイトの構築や不動産屋向けの物件検索サイトの構築などを行っていました。転職を経験することなくジョブチェンジをして現在に至っています。

Aipoチームの歴史

Aipoはもともとパッケージ版として提供されていましたが、2009年にクラウド版の提供が始まりました。チーム構成の変更やメンバーの入れ替わりを経て、SaaSっぽい今のチーム体制になったのは2015年からになります。

ここ1,2年でチームのメンバーも増えてきましたが、プロダクトマネージャー、カスタマーサクセス、そしてエンジニアの私という3人体制で運用をしていた時期もありました。その当時は全員でチャットサポートの対応をしていました。

2019年になり新たにマーケティングのポジションができましたが、営業を担当するメンバーがいないため、オンボーディングからアップセル・クロスセルまですべてをCSのメンバーが担当しています。

2020年カスタマーサクセスをとりまく2つの予想

来年のカスタマーサクセスを取り巻く環境として、願いも込めて2つの予想を立ててみます。

・カスタマーサクセスの概念がカスタマーサクセス職以外にも広がる。
・ビジネスモデルやプライシングに関する話題が出てくる。

このnoteではカスタマーサクセスの施策については一切触れていません。

2019年はカスタマーサクセス向けのイベントが数多く開催され、オンボーディングの施策などの情報共有が行われ、カスタマーサクセスが体系的に成長してきた1年だったと思います。

ではカスタマーサクセスの重要性について、チームのメンバーの方は理解されているでしょうか?肌感としてマーケティング、プロダクトマネージャーは重要性を認識し始めているものの、それ以外のメンバーはまだまだではないかと感じています。

来年はカスタマーサクセス職から外のメンバーに対して強く働きかけを行っていく1年になればと思い、このエントリーをしたためます。

カスタマーサクセスの概念がカスタマーサクセス職以外にも広がる

1つ目の予想について語る前になんですが、

カスタマーサクセスマネージャーって呼び方、微妙じゃありません?

前述のところではカスタマーサクセス職という呼び方をあえてしているのですが、カスタマーサクセスマネージャーという呼び方はあまり好きではありません。

そもそもマネージャーはドラッカーによると「組織の成果に責任を持つ者」と定義されています。具体的には組織の目標を設定し、組織を作ります。そしてメンバーの動機づけやコミュニケーションをはかり、そのメンバーを評価して人材育成するという使命を持った役職です。

プロダクトマネージャーやプロダクトマーケティング・マネージャーが内部の組織に目が向いていることに対し、カスタマーサクセスマネージャーはマネジメントする対象が担当顧客という外に向いているために違和感をおぼえているのだと考えています。(カスタマーサクセス職をマネジメントする役職をカスタマーサクセスマネージャーと定義することができなくなってしまう)

とはいえコミュニティマネージャーには違和感を感じていないので不思議なものです。。。

もう一つの理由としてはカスタマーサクセスマネージャーという言葉がカスタマーサクセス職に対して重い責任を与えている、つまりカスタマーサクセス職以外のメンバーがカスタマーサクセスに対して責任を負わなくていいような印象を受けるからです。

SaaSにとってカスタマーサクセス(という概念)は誰のものでしょうか。カスタマーサクセス(という職種)のみが考えればいいことでしょうか。

サブスクリプションというビジネスモデルはカスタマーサクセスそのものです。カスタマーサクセス職はもちろんのことマーケティングもセールスもデザイナーもエンジニアもみんな前提として持っておくべき概念だと思っています。

・デザインの変更を行った。
・新機能をリリースした。
・使われていない機能を終了した。
・障害が発生してシステムがダウンした。

これらのようにカスタマーサクセス職だけではコントールできない要因によってチャーンレートやNPSなどの数字が変動することが往々にしてあります。プロダクトのすべての要素がカスタマーサクセスにつながっていることを意識しておかなければなりません。

ただそうは言ってもカスタマーサクセス職以外のメンバーは巻き込みづらいし・・・というのが現実ではないでしょうか。

プロダクトマーケティング・マネージャーがそのあたりの問題を解決する、つまり顧客の要望を取りまとめてプロダクトにフィードバックするポジションとして注目されていますが、そのポジションを用意することが本質じゃないですよね。

カスタマーサクセス職だけじゃなくすべてのメンバーが顧客の声に耳を傾けることがなによりも重要です。

メンバー全員にカスタマーサクセスを意識づける方法

でチャネルトークさんの事例が紹介されています。

Aipoではエンジニアが直接チャットサポートの回答を行うケースはありませんが、顧客からのチャットやNPSをSlackに流してカスタマーサクセス以外のメンバーも見られる状態にするようにしています。詳しくはこちらのnoteに書いているので興味があればご覧ください。

この取り組みによって、

のように、すべてのメンバーが顧客のことを把握している状況を作ることができています。今後チームが大きくなってきたときに同じマインドセットを作れるよう、カルチャーとして定着させていくことの大切さを感じています。

全員が参加するスプリント計画会議

上記のnoteに書いてない取り組みとして、スプリント計画会議があげられます。

Aipoの開発は1週間のスプリントで開発項目の棚卸しをしています。毎週金曜日に翌週のスプリントで行うことを決めるスプリント計画会議を実施しています。一応プロダクトマネージャー、デザイナー、エンジニアが中心となって行っているのですが、カスタマーサクセスとマーケティングのメンバーも同席をしています。

来週どの機能がリリースされるのか、どの機能を中心として開発をすすめるのか、どの不具合対応を進めていつごろ改修される予定なのか、といったすりあわせを行っています。顧客のこの要望に対してこの機能を作る、顧客のこの痛みを解決するためにこの対策を行う、などのように各タスクの目的の再確認の場にもなっています。

1週間というスプリントで進める範囲の話だけではなくもう少し中長期的なプロダクトの方針の話もこのときに行われています。

プロダクトのタスク管理はJIRAというツールを使って行っていますが、カスタマーサクセスやマーケティングのメンバーもJIRAを確認することができるようになっています。

顧客からのチャットやNPS、プロダクトのタスクがチームのメンバー全員に共有されることで、顧客からのフィードバックがプロダクトに反映されるサイクルを把握しやすくなります。

チームの規模が大きくなってくると全員がスプリント計画会議に参加するのは難しくなってくるかもしれませんが(現時点で会議室の席が足りていませんが)、1週間に1度チームのメンバーで意識あわせをする時間は大切にしていきたいと考えています。

2020年はチームでお互いの状況を見る、コミュニケーションを取ることがより重要になってきそうです。

ビジネスモデルやプライシングに関する話題が出てくる

「ビジネスモデル設計」や「課金モデル設計」までをも改善していく必要がでてきます。この「顧客の成功」と「自社の成功」をより近づけていく活動が、今後より重要になってくると感じています。

HiCustomerの高橋さんがこのように述べられていますが、今後カスタマーサクセス発によるビジネスモデルやプライシングによる話題が増えてくると考えています。

カスタマーサクセスは日頃からチャーンレートやアップセルというプライシングに直結した内容を取り扱っています。また、顧客情報を管理する上で請求に関する情報は切り離せない情報になっています。

今の料金体系では顧客に自信を持って提案できる料金プラン、価格設定になっていないためアップセルがしづらい(ユーザーのニーズを満たす1つ上のプランを提案したいが価格が10倍になるようなケース)、フリーミアムモデルだと無料であることが一番の価値であるためアップセルにほとんど結びついていない(そのわりに問い合わせの量が多くサポートコストに見合わないケース)、といった課題を一番近くで感じているポジションだと思うので、数字とともに提案をしていく流れが起きていくのではないでしょうか。

Aipoでは銀行振込の消込対応もCSメンバーが担当していますが、そのようなキャッシュフローに触れることでビジネスモデルやプライシングに対する多角的な視点が得られそうです。

さいごに

僕はエンジニアですが、直接チャットサポートを行っていた時期もあり、カスタマーサクセスに対しては並々ならぬ熱い思いを持っています。

受託開発をしていた頃はエンドユーザーとやりとりをすることがなかったため、エンドユーザーが使っている姿を想像できませんでした。しかし実際に顧客の生の声に触れサポートをすることで開発に臨む際の意識がガラッと変わりました。

カスタマーサクセスはSaaSにとって生命線です。カスタマーサクセス Advent Calendar 2019を呼びかけたのも、SaaSに携わっている人にとって、カスタマーサクセスが必要不可欠、ではなくSaaSそのものであることを伝えたいという想いからです。

2020年、カスタマーサクセスが言葉の一人歩きにならず、SaaSにまつわる人の共通認識となって定着することを切に願っています。

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