岩崎史奇(コント文学作家)

『笑い』と『人間』を書いているコント文学作家です!(ワタナベコメディスクール放送作家コ…

岩崎史奇(コント文学作家)

『笑い』と『人間』を書いているコント文学作家です!(ワタナベコメディスクール放送作家コース卒) 香川県高松市出身。よろしくお願いします🐙

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コントな文学『田中明彦のピーク』

コントな文学『田中明彦のピーク』 田中明彦13歳の春。 学校から帰宅中に道端で倒れている妊婦を発見し、救急車を呼んだ。 迅速な対応のおかげで、妊婦は搬送先の病院で無事に女の子を出産し母子共に助かった。 翌日、田中明彦は学校で先生に呼び出されて校長室へ行くと警察から感謝状が贈られた。 助けた妊婦の旦那さんも来ていて、泣きながらお礼を言ってくれた。 この様子は夕方の全国ニュースでも放送された。 田中明彦は生まれて初めて脚光を浴びた。 普段は目立たない普通の中学生が

    • コントな文学『すべてのホームシッカーに花束を』

      コントな文学『すべてのホームシッカーに花束を』 上京して足立区の北千住で初めての一人暮らし。 俺はホームシックになった。 土曜日に引っ越してきて今日が水曜日で一人暮らし5日目。 土曜の夜は初めての一人暮らしに浮かれて楽しく過ごしたが、人生で初めて日曜日の夜に1人で晩ご飯を食べていたら涙が溢れてきた。 実家の居心地の良さ。 母ちゃんの温かくて美味しいご飯。 そして父ちゃんや妹やペットも含めて家族から与えられていた安心感や愛情に初めて気付いた。 しかし、ホームシックな

      • 『今日も世界で誰かが虚しくなっている。新しい歌のお兄さん編』

        『今日も世界で誰かが虚しくなっている。新しい歌のお兄さん編』 かつて、私が心の底から愛した男。 そして、心の底から憎んだ男。 幼児向け番組に出演している新しい歌のお兄さんは私を弄んで踏み躙った男だった。 5才の娘の優花がテレビに映る新しい歌のお兄さんの動きに合わせて踊っている。 私が初めてを捧げた男。 いや、私の初めてを奪った男とは知らずに… 私は付き合っていると思っていた。 疑いもせず恋人だと思っていた。 だけど私は、あの男の性欲処理に使われていただけだっ

        • コントな文学『それでも、夕焼けは綺麗だった』

          コントな文学『それでも、夕焼けは綺麗だった』 17歳。 片思いだと思っていたけど両思いだった。 高嶺の花のクラスメイトが初めての彼女になった。 初デートは放課後デート。 マック行って、プリクラ撮って、自転車二人乗りして、公園のベンチで一緒に夕焼けを見ている。 「一緒に聴こ」 彼女がイヤホンを片方差し出してきた。 恋人と片耳ずつイヤホンを付けて音楽を聴く事に憧れてたんだろうなって思った。 俺も憧れてたし。 だけど・・・ だけど、彼女から渡されたイヤホンには

        コントな文学『田中明彦のピーク』

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        • 『コントな文学選』
          9本
        • 『今日も世界で誰かが嘘をついている』
          13本
        • 『もったいないおばけシリーズ』
          5本

        記事

          『今日も世界で誰かが嘘をついている。マジックミラー号編』

          『今日も世界で誰かが嘘をついている。マジックミラー号編』 マジックミラー号? マジックミラー号って何だい? え?アダルトビデオの企画物? 僕はそういう下品な類のものは観た事が無いから知らないよ。 本当だよ、アダルトビデオなんか観たこと無い。 進学校から現役で東大に入って勉強漬けで忙しかったからね、観るヒマも興味も無かったよ。 それに僕は卒業したら官僚、いずれは事務次官になって日本を動かす側の人間になる男だぞ。 アダルトビデオなんて下らないものを観ている訳がないだ

          『今日も世界で誰かが嘘をついている。マジックミラー号編』

          『今日も世界で誰かが虚しくなっている。卒業式編』

          『今日も世界で誰かが虚しくなっている。卒業式編』 私が6年間通った小学校の卒業式が行われている。 「卒業証書授与」 五十音順に卒業生が校長先生から卒業証書を授与されていく。 そして私の順番が来た。 私は卒業証書を受け取る際に気になってしまった。 アレ? 校長先生ってこんなに顔のアブラのテカリ凄かったっけ? 顔面が餃子の王将の床じゃん。 校長先生には悪いけど、ちょっと気持ち悪いな。 私は席に戻っても校長先生の顔のアブラのテカリが気になり続けた。 校長先生も緊

          『今日も世界で誰かが虚しくなっている。卒業式編』

          コントな文学『ベーブ・ルースや軽自動車の所有者のように』

          コントな文学『ベーブ・ルースや軽自動車の所有者のように』 元気になってまた大好きな野球がしたい。 その為には手術を受けて病気を治さなくちゃいけない。 でも手術の成功確率は30%だ。 手術を受ける勇気が出ない僕の病室に現れたのはベーブ・ルースのようなホームランバッターじゃなくて軽自動車の所有者でした。 「俺はベーブ・ルースじゃないから君の為にホームランを打つ約束はできない。代わりに今から軽自動車に乗って六本木でナンパをする。もし俺がナンパに成功したら手術を受けてくれな

          コントな文学『ベーブ・ルースや軽自動車の所有者のように』

          コントな文学『あの日、僕には勇気が足りなかった』

          コントな文学『あの日、僕には勇気が足りなかった。相方編』 「紹介するね。こいつ、俺の相方のミサ」 「そういう芸人みたいに彼女の事を相方って呼んじゃうノリ、見てるこっちが恥ずかしくなってくるよ」って友達じゃない大学の同期に言えなかった。 あの日、僕には勇気が足りなかった。 * コントな文学『あの日、僕には勇気が足りなかった。フェス編』 「明日フジロック参戦しに行くんだよ」 ヒマワリのように明るい笑顔で言ったバイト先の先輩に「音楽フェスに行く事を『参戦』って言う人、

          コントな文学『あの日、僕には勇気が足りなかった』

          『今日も世界で誰かが嘘をついている。性欲モンスター夫婦編』

          『今日も世界で誰かが嘘をついている。性欲モンスター夫婦編』 「ねえ、最近ダンナとしてる?」 「う〜ん…月に1回あるか無いかかなぁ…」 「ウチは週1ペース」 「マジで?めっちゃ愛し合ってんじゃん。ウチなんか下の子ができてから1回もしてないわ。完全にレスよ」 * 立花陽子36歳。 今日は大学の同期の友人グループの女子会でカフェに来ている。 私とダンナは結婚10年目で小1の娘と5歳の息子がいる。 だけど毎晩のように体を求め合っている性欲モンスター夫婦だ。 とにかく

          『今日も世界で誰かが嘘をついている。性欲モンスター夫婦編』

          コントな文学『心配性 in サンポートホール高松』

          コントな文学『心配性 in サンポートホール高松』 僕は心配性だ。 心配性な僕は今日、ヒット曲が1曲だけのシンガーソングライターのライブに来た。 有名なヒット曲が1曲しかない。 しかも3年前の曲なのに地方の1500人キャパのホールが埋まるのか心配していた。 せめて1000人以下のキャパのホールでやった方が無難じゃないのかと心配したけど、8割以上埋まった客席を見て僕は一安心した。 だが、次の心配が僕を襲う。 唯一のヒット曲をライブの何曲目に歌うのか心配になってきたの

          コントな文学『心配性 in サンポートホール高松』

          『今日も世界で誰かが虚しくなっている。一人娘編』

          『今日も世界で誰かが虚しくなっている。一人娘編』 一人娘の彩が幼稚園の年長さんになる年に妻の亜希子が他界した。 それから20年。 まるで死んだ亜希子の生き写しのように彩は美しい女性に成長した。 そして男手一つで大切に育てた彩は昨年、義理の息子になった裕一君と結婚した。 今日は彩と裕一君が結婚して初めて迎えた亜希子の命日だ。 例年よりも早く満開になった庭の桜は、亜希子が彩と裕一君を祝福する為に咲かせたように思えた。 * 特別な日に3人で食べる為に特上の寿司を注文

          『今日も世界で誰かが虚しくなっている。一人娘編』

          コントな文学『憧れていたプロポーズ』

          コントな文学『憧れていたプロポーズ』 石﨑将太33歳。 高校卒業後、青森から上京して寿司職人になり10年以上が経過した。 俺はついに明日、小さいながらも夢だった自分の店を出す事になる。  まるで一国一城の主になった気分だ。 オープンを前日に控えた店内のカウンターに職人見習いの頃から、ずっと俺の事を応援し支え続けてきてくれた彼女を座らせた。 自分の店を出すという夢は、いつしか俺と彼女2人の夢になっていた。 俺は今から彼女に憧れていたプロポーズをする。 これからは

          コントな文学『憧れていたプロポーズ』

          コントな文学『芥川賞作家なのに親近感』

          コントな文学『芥川賞作家なのに親近感』 芥川賞を受賞した小説家なのに… マジで? 信じられない… 家の本棚にマンガしかないじゃん。 しかもドラゴンボールとワンピース全巻揃ってんじゃん。 王道中の王道じゃん。 芥川賞とか純文学って小難しくて暗そうなイメージがあったけど親近感湧くなぁ… 「え?芥川賞作家なのに家具は全部ニトリで揃えたの?」 普通中の普通じゃん。 親近感湧くなぁ〜。 「え?芥川賞作家なのに服はユニクロか無印で買ってんの?」 庶民的〜。 親近感湧く〜

          コントな文学『芥川賞作家なのに親近感』

          『今日も世界で誰かが嘘をついている。菜子ちゃんからの質問編』

          『今日も世界で誰かが嘘をついている。菜子ちゃんからの質問編』 「どうしてママはパパと結婚したの?」 5才になる娘の菜子からの質問だ。 6年前、私は付き合っていた彼氏に二股を掛けられていた事が発覚する。 加えて仕事でも大きなミスをして私の心はボロボロになっていた。 そんな時に飲み屋で声を掛けてきた男に甘えて癒やしてもらって… 「弱ってる時に優しくしてくれた男との間に、あなたができたからよ」なんて言えねー。 「優しいパパにママが一目惚れして結婚したの」 「そうだっ

          『今日も世界で誰かが嘘をついている。菜子ちゃんからの質問編』

          コントな文学『ファーストキス』

          コントな文学『ファーストキス』   クラスメイトの亮君と付き合って3ヶ月。 デートは毎週末している。 でもまだキスはしていない。 高校3年生同士が付き合って3ヶ月よ? さすがにもうキスしてOKでしょ。 3ヶ月付き合ったら無理矢理押し倒してキスしても文句言われる筋合いないわ… * 絶対今日のデート中にキスしたい。 マックでお昼食べてる時も、映画観てる最中も、カフェでお茶してる時も、サイゼリヤで晩ご飯食べてる時も今日はキスの事しか考えられない。 つーかさぁ、さっさとキスして

          コントな文学『ファーストキス』

          コントな文学『もったいないおばけと新人記者』

          こんにちは、もったいないおばけです。 お前、何で俺が現れたか分かるか? そうか、分からんかぁ… 新人記者のお前は本来行く筈だったベテラン記者が体調不良で、代わりに急遽アメリカに行って大谷翔平の記者会見に参加した。 そしてお前は記者会見で「大谷選手はお好み焼きとモダン焼き、どっち派ですか?」と質問した。 地方新聞社の記者のお前が記者会見で大谷翔平に質問できるチャンスなんて一生に1回あるかないかのレベルやぞ。 しょーもない質問過ぎて大谷も通訳の一平もWhy?って顔しと

          コントな文学『もったいないおばけと新人記者』