漢方エキスはメーカーによって違う

漢方エキスのメーカーには、ちょっと思いつくだけでもツムラ、クラシエ、コタロー、JPS、三和が有り、その他にも小さなメーカーがいくつかあります。メーカーごとに色々違います。

まずメーカーによって出している処方、出していない処方があります。一番品揃えが多いのはツムラですが、葛根加朮附湯なんて言うのは三和しか出していません。このように、メーカーごとに出している種類が違います。

次に、同じ名前の処方をメーカーごとに比べてみて下さい。含有生薬の種類は同じでも、生薬の量はメーカーによって違います。これは各メーカーが参考にした古典や、それぞれのメーカーにアドバイスした昭和の時代の医師が違うからです。

朮(じゅつ)という生薬がメーカーによって違うのは有名です。ツムラはほぼ全製品で蒼朮を使っていますが、クラシエやコタローは白朮を使うことが多い。特に胃腸に関係した処方、例えば六君子湯などでは白朮です。これは古典に照らしても生薬の薬効からも白朮が正しいのです。ツムラが何故ほとんど全てを蒼朮にしてしまったのか、ツムラのMRも答えられません。胃腸の薬は白朮を採用しているメーカーがよいと思います。

適応症も違います。例えばツムラ香蘇散は感冒しか適応がありませんが、コタロー香蘇散は神経症、ノイローゼなどに適応があり、軽い鬱状態に痞えます。ツムラ香蘇散は感冒にしか使えないのですから4週間とか出すと保険で切られますが、コタローのものは大丈夫です。

極めつけが竜胆瀉肝湯です。ツムラとコタローに同じ名前、つまり竜胆瀉肝湯という処方がありますが、生薬構成を見ると全く別の薬です。ツムラ竜胆瀉肝湯は純粋に尿路感染の薬ですが、コタローの竜胆瀉肝湯は下半身に生じる様々な炎症に使えます。適応症も全く違います。元々中国の古典にあったものがツムラ竜胆瀉肝湯で、コタローの竜胆瀉肝湯は明治時代に森道伯と言う日本人が創作したものです。この人は色々その・・・医師免許を持たない、今で言えば偽医者だったり、問題のある人なのですが、彼の漢方治療は江戸時代から続くきちんとした漢方医に習ったもので、彼の創作した処方は現代でも重宝されるのです。ちなみにツムラも荊芥連翹湯、柴胡清肝湯は森道伯の処方を採用しています。

とまあ漢方エキス製剤はメーカーによって色々違います。

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