共産党と民医連について
共産党について論じてはどうかというある人からの提案があった。そこでまず私の見解を述べるので、それぞれご自分の見解を出して戴きたい。
まず日本共産党は結党以来100年続く由緒ある政党であり、日本で一番長い歴史を有するのみならず、現在西側で政治活動をしている共産党の中では(あれでも)最大規模である。共産党が本気でマルクスの言う共産主義を今でも目指しているかどうかは不確かだが、「共産党」という看板を下ろす気は無いようだ。
共産党の歴史は光と影に彩られている。戦前政党として唯一敢然と太平洋戦争に反対し、犠牲者を出しつつその主張を貫いた。これは歴史に大書される功績である。一方共産党の権力構造は複雑怪奇で、閉鎖的だ。戦後長らく共産党を指導した野坂参三はある時突然「ソビエトのスパイ」と弾劾され党を追われた。宮本顕治が長く党内権力を握り、今の志位和夫もその流れにある。
共産党では「査問」と呼ばれる拷問まがいの反党分子の弾劾がしばしば行われ、これは闇に包まれていたが実際に査問を受けた川上徹の「査問」(筑摩書房)により明るみに出た。しかし共産党はこの査問について未だに口をつぐんでいる。
共産党は日本民主青年同盟(民青)、全日本民主医療機関連合会(民医連)、民商など多くの下部組織、関連組織を持つ。これらは表向き共産党とは独立した組織と称しているが、実際は表裏一体だ。私はその一つ民医連に数年間勤務し、また勤務を辞めたあとも定期的に交流があった。そこで民医連について記す。
民医連は1953年設立、現在病院142、診療所489を擁する日本でも最大規模の医療グループだ。病床数で言うと日本赤十字、厚生連に次いで日本第三位である。無差別、平等の医療と福祉を謳っている。
さて、私が医師として勤務していた民医連の実体はといえば、一言で言えばその辺に普通にあるブラック企業である。地元住民の評判は極めてよい。24時間外来を開けているし、救急は取る。いくつかの民医連病院の医療レベルは高く、高度救急医療センターの役割を果たしている病院もある。私がいた坂総合病院もそう言う病院だった。
しかし24時間営業する店舗が全てブラック経営であるように、民医連の経営もまた然りだ。24時間診療すると言っても夜中の来院患者は大半がコンビニ感覚で来るのがほとんどで、どうしても深夜診療しなければならないのはごく一部に過ぎなかった。しかし民医連の本当の目的は住民に便利な医療を提供して共産党への支持に繋げることにあるので、どんな患者も決して断らない。当直医は正に一晩中診療にあたり、そのまま翌日の通常診療に入る。酷い時はそのまま翌日もまた当直というのもざらだった。睡眠は医局の裏の汚いベッドで仮眠を数回取るのがやっとだ。
民医連では「自発的」という名目で、給料からカンパが天引きされる。そのカンパで何をやっていたか上層部で無かった私は知らないが、よく病院の近所の駅前でやっていた反自民を掲げた集会やビラまきに使われたのだろう。ピンハネされた「カンパ」の一部が共産党まで渡っていたかどうかまでは私は確証が無いが、おそらく吸い上げられていただろうと深く推察している。
病棟回診で患者にビラを配って歩くのもいやだった。さすがに医者には強制しなかったが、回診について歩く看護師が入院患者に政治的なビラを配った。患者は入院させて貰っているのだから断れるはずも無く、黙ってビラを受け取っていた。
こうした全ては業務命令では無く、あくまで職員の「自発的行動」という事になっていた。その意味では極めて日本的な組織であった。
組合はあるが完全に病院の御用組合で、言うなれば職員支配の別組織に他ならなかった。
そんな病院に私が何故何年もいたかというと、それは当時東北でただ一つ、漢方外来があったからだ。神久和医師という人が漢方をやっていて、漢方を研修するには彼の元に弟子入りするしか無かった。神先生は無論党員で、後に坂総合病院副院長までやったが、私はそう言う政治的な話題は務めて避けるようにしていた。
ある時私は事務職員に命じて病院の職務規程を出させた。それをくまなく調べたら、「当直の翌日は休み」と明記してあった。私はそれを突きつけて当直の翌日は休むと宣言した。病院とは大もめになり、結局半休を取ることで妥協した。この過程で病院の患者グループが口を出してきて、「あんたは地域住民のことは考えていないのか」と罵られた。患者と病院は完全にグルだった。あの患者グループのトップのハゲ爺(じじい)には、今でも怒りを覚える。
そんなこんなで私は民医連を去った。丁度研究がしたくなってきた頃でもあり、東北大の大学院に入学した。しかし腐れ縁というか、大学院に入っても私は坂病院で漢方外来のバイトをしたので、結構縁は長く続いた。
ともかく、あれは典型的な日本的ブラック企業である。ワタミやアパホテルと同じだ。職員は「自発的に」給料をピンハネされ、「自発的に」ビラを配らされ、「自発的に」集会に参加させられる。私のように「いやです」とはっきり言える人は、まず皆無だった。患者として掛かる分にはよいが、就職は避けた方が良い。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?