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舞台「夜は短し歩けよ乙女」観劇レポート

始めに

筆者は今まで演劇や、歌舞伎、オーケストラなど生の人間が板の上で”演技をする”エンターテイメントを馬鹿にしている側の人間であった。
だが、今回実際に自身の意思で舞台というものを見たとき、非常に感銘を受けたと同時に感動した。その感動を言語化するために、こうしてレポートをしたためようと思う。

観劇のきっかけ

そもそも、なぜ舞台に足を運ぼうと思ったのか。それには大きな理由が二つある。
一つは乃木坂46の久保史緒里ちゃん(以下くぼちゃん)が主演を務めているからということ。
正直、観劇を決めた大きな大きな要因は生でくぼちゃんを見たかったから。という下心満載な気持ちからであった。結論として、そんな下心満載な気持ちで観劇したからこそ、逆に演劇というものに圧倒され心動かされるに至ったわけであるが...

そしてもう一つは原作の森見登美彦先生の作品のファンであったから。
もともと「四畳半神話体系」「四畳半タイムマシン・ブルース」「ペンギンハイウェイ」など森見先生の作品がとても大好きであったのだが、今回の舞台「夜は短し歩けよ乙女」の原作は名前こそ知れど、未読であったため、上述の理由と合わせて非常に都合のいい状態が揃ったわけである。

こうして深夜テンションでチケットを購入し、観劇。今に至る。

観劇レポート

舞台、板の上でどのようにストーリーが展開されるのか、結局映像作品を見ればよかったと思うんじゃないか。と考えてはいたものの、全くの杞憂であったということは言うまでもない。

先輩役中村壱太郎さんのセリフからストーリーが始まり舞台が展開されて行くのだが、その演出にまさに度肝を抜かれた。後ろの暗幕にプロジェクターで台詞がどんどん映し出され、その前で自語りをする先輩の様子はまさに想像していた”森見ワールド”そのものであったからである。
それもこれも脚本・演出の上田誠さんの手腕に他ならない。森見登美彦×上田誠の最強タッグが作り上げる世界に開始3分と立たず簡単に飲み込まれ、今までの自身の矮小な心と食わず嫌いを恥じる結果となりました。

まさに舞台の上は京都であり、ワンダーランドであった。流れるように展開するストーリーや演出で、終了後「本当に3時間もあったのか?」となるような体感時間であった。

上田さんの脚本で「これぞエンターテイメントだ」とある種の感動を覚えたのが後半開始のプロローグである。玉置玲央扮するパンツ総番長と先輩の掛け合いから始まるのだが、ひょんなことからある再現の女性役を先輩が演じることとなるのだが、その再現が終わった後に「なぜだろう、落ち着く気がする。」と先輩が発するという一幕があった。この一幕を紐解いていくと、実は先輩を演じている中村壱太郎は歌舞伎では女形を演ずることが多く、そのことを舞台に台詞として昇華させたのである。メタ的な要素も汲み取りつつ、脚本に組み込む上田さんの手腕、プロの技に非常に感銘を受けました。

キャストについて

出演していたキャスト全員とても素晴らしい演技をされていたのですが、その中でも特に印象に残っている方々について何人か取り上げさせていただきたいと思います。

黒髪の乙女役 久保史緒里
この項を書くにあたって触れざるを得ないはやはりくぼちゃん。
なんと”黒髪の乙女”という言葉が似合う出で立ち。そして何よりなんだあのかわいさは。一挙手一投足すべてがかわいい。声までかわいい。ファンとしては最高でしたよでしたよえぇ。
オープニングで「夜は短し歩けよ乙女」という劇中歌を歌っているのですが、歌もまた透き通るようなものでぜひともサントラに収録していただきたい所存であります。なむなむ。

メイキングに歌稽古の様子があるのでそちらもぜひ。

先輩役 中村壱太郎
キャストを語るにおいてこれまた外せないのが壱太郎さん。
あまりにも”森見さんの描く先輩”感が伝わってきて、原作を既読の上で行っていたらより楽しめたのじゃないのかと後悔するほどでした。
先述した通り、歌舞伎役者であるということで、演技の中に歌舞伎らしい動きを融合させ、より自然に受け手側をファンタジーに馴染ませているなとこれもまたエンタメの異種混合的な部分が垣間見えて、自身の視野が広がったように思えました。

古本市の少年役 藤谷理子
”古本市の神様”という名にしっくりくるような演技、先輩に対しての憎たらしい態度など、今回の観劇においてかなり印象深く残っているのが藤谷さん。”本はすべてつながっている”という説をもとにした長台詞があったが、長いセリフにもかかわらず、リズミカルかつキャッチーで、受け手側に飽きの来させない、むしろ続きを期待させるような圧巻の演技。舞台ならではの演技を見れてテンションが上がった。

李白役 竹中直人
もう知らない人はいないであろう大俳優。どんな場面であろうと、ひとたびしゃべり始めると舞台の空気、観客の空気を一手に変えてしまうような重みがあるのに柔らかな空気をまとったユーモアたっぷりな演技。めちゃくちゃ笑った。まさに李白役には最適解だったのだな。と思わせるようなハマりっぷり。これもまた原作を頭に入れて観たかった...これから、原作を読む折には、李白さんは竹中直人として脳内再生されるなこりゃ。


以上が舞台「夜は短し歩けよ乙女」観劇レポートでござりました。

終わりに

いろいろ書きたいことが重なり重なり、最終的にまとまりきらないまま書き始めた部分もあって、まとまりのないもはやレポートなのか?というような駄文になってしまいましたが、この文章をここまで読んだ方というのは少なくとも興味を持っていることと思います。今すぐ、チケットとって見に行ってください。

最初は「演劇なんて...」と思いつつ見に行った舞台でしたが、映画には映画の、アニメにはアニメの、そして舞台には舞台のいいところがあることを身をもって心をもって痛感した次第であります。

自身の価値観を大きく塗り替えてくれるような作品に出合わせてくれたくぼちゃんを、このような作品を描いてくれた森見先生をこれからも全力で追い続けたいと、そして素晴らしい脚本・演出を見せてくれた上田誠さん、ヨーロッパ企画の皆々様にもこれからついていきたいと思っております。
また、なにか気になる舞台があったら積極的にみにいきたいね。

何はともあれ、人生を変える起点になりそうな素敵な作品でございました。
ちゃんと原作も読むこととしよう。

「・・・こうして出会ったのも、何かのご縁」





黒髪の乙女の言葉をお借りして。なむなむ。

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