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クリティカルシンキングの処方箋

どうも、何事でも前提を疑うIWAOです。

起業したときから「このアイデアどうですか?」とか「事業計画をレビューしてほしいです!」と良く相談されます。ソースコードのレビューだけでなく、アイデアやビジネスのレビューもやります。

レビューは色々な視点と思考で評価することが必要になります。今回は、その思考法の一つ「クリティカルシンキング」をご紹介したいと思います。長くなってしまいましたが…いきましょう!

クリティカルシンキングとは

クリティカルシンキングとは批判的思考・懐疑的思考と訳されます。見たものを疑いながら思い込みを持たずに状況を把握する思考です。考え方や事実に対しても、客観的な視点で本当に正しいのかを追求します。

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この図の赤いの部分に対して「本当なの?」「別の可能性は?」「現実的なの?」と問い続けることがクリティカルシンキングだと理解しています。この矢印は思考のプロセスつまり考え方を意味します。

効果

アイデアやビジネスの評価はもとよりコーチングや課題解決にも使える万能の思考法です。ただかなり高度な思考法なので、このnoteでは簡単な使い方に留めて解説したいと思います。

・アイデアやビジネスの評価
・潜在リスクの発見
・コーチングスキルの向上
・意思決定や
課題解決のサポート

効果性としては、思い込みや経験に依存する認知バイアスに効果的だと思ってて、先入観のない判断ができて経験や知識を無視できます。主観の強い意見を除外し、客観的なレビューをすることができます。

用法

仮説に対して前提前提・仮説・結論の因果関係を客観的に問い続けます。最終的にレビューイとレビューワが思考の癖を理解するまで繰り返します。具体的なステップは以下のように考えています。

STEP1
- 感情論、権威など立場に依存するものを除外する
- ビジネスの世界に絶対や正解は存在しない
- 過去の経験則には価値はない

STEP2
- 前提・仮説との因果関係・結論との因果関係は本当に正しいのか
- 前提・仮説との因果関係・結論との因果関係には別の可能性があるのではないか
- これらは全て現実的なのか

STEP3
- 選択肢がそもそも少ない
- 確証バイアスで美化されている
- 多数決原理は用途が間違っていないか
- 知識、文化、習慣、教育、伝統など曖昧な概念を除外する

STEP4
- 現状維持バイアス: 変化を避けて現状を維持したくなる心理バイアス
- リスク回避思考: 得られる利益の大きさより、失う損失の大きさを重視してしまう心理バイアス
- バンドワゴン効果: みんなが良いと評価しているものを高く評価してしまう心理バイアス
- ハロー効果: 目立つ特徴に引っ張られて他の特徴の評価が歪められる心理バイアス
- フレーミング効果: 視点や枠組みを固定してしまう心理バイアス

掘り下げればもっと思考観点はありそうですが、ざっとこんな感じかなと思います。では実際に各ステップを例に沿ってレビューしてみましょう。

STEP1
reviewee
「会社のメンバー全員で顧客サポートするアイデアどう思う?」
reviewer
「アイデアと貴殿の立場は無関係という前提でレビューします。またビジネスには絶対にうまくいくという論理は存在しませんし、過去うまくいったからといって、正しいことを証明することにはなりませんのであらかじめご留意ください。」

仮説の前提だけでなく提案者の前提も否定することがポイントです。言い方には気をつけないとレビューイは機嫌が悪くなります。続いて提案の内容に入っていきます。

STEP2
「前提は本当に正しいですか?違う前提にはなりませんか?」
「前提から仮説を導いた考え方は本当に正しいですか?違う考え方はできませんか?」
「結論を導いた考え方は本当に正しいですか?違う考え方はできませんか?」
「現実的でない部分は本当にありませんか?」

仮説の前提と因果関係を疑います。それぞれ本当にそうなのか別の可能性はあるのかという切り口で攻めていきます。ここで別の考え方を出して論破できれば完璧です。

STEP3
「違うやり方が思い浮かびますがその選択肢がないのはなぜですか?」
「データを見ると支持ばかりで反証は検討しましたか?」
「多くの顧客が待望する一方で抑圧される顧客は本当にいないと約束できますか?」
「従業員の成長が促される根拠が不十分であり前提と結論には間接的な因果関係があると言い切れません」

さらに目線を変えて疑っていきます。一言一句逃さず、徹底的に評価しましょう。この時点でレビューワの心はもはや人の心ではありません。おそらくレビューイはブチ切れているでしょうw

STEP4
「リスクを回避するために逃げ腰とも取れる数字が含まれていませんか?」
「流行っているからといってこの商品が売れる理由にはなりません」
「印象操作をしていませんか?株主総会の資料ではありません」

ここまで辿り着ければ上級者ですね。ここは心理学の領域です。ですから心理戦を制したと言ってもいいでしょう。既にレビューイは家に帰ってしまったかもしれません。

副作用

批判しながら思考するので、思考に時間はかかりますし、十分なトレーニングが必要になります。何よりも「何なんだこいつは」って嫌われるリスクが副作用として考えられます。

具体例

最後にシンプルな具体例を挙げてクリティカルシンキングの適用事例を整理してみましょう。錯覚がないか落とし穴がないか、騙されないように疑ってかかりましょう。

相関関係を因果関係と誤解してしまう

この本を読むと年収がアップする事実がある。だからこの本を買ったほうがいい。

相関関係とは、AとBの一方が変化するにつれ、もう一方が同時に変化する関係です。本を読む人が増えれば読者の平均年収が上がるように見えたとしても、知名度が上がって本が売れ、年収分布の通りに年収が高い人が購入するようになっていっただけという可能性があります。

因果関係の関係性が逆転してしまう

ダイエット食品を食べる人ほど肥満度が高いことがわかったので、このダイエット食品は効果はない。

肥満度が高い人がダイエット食品を食べていただけで、因果関係が逆転してしまっています。本当は食べたほうがダイエットに効果的な可能性があります。因果関係はA→Bであり、A←Bは真逆のアプローチになり危険です。

間接原因による因果関係

コーヒーを飲むと心臓病のリスクが高くなることがわかった。だからコーヒーメーカーを会社から撤去する。

本当はコーヒーに砂糖を入れることで心臓病のリスクが高くなるとしたら、コーヒーのせいで心臓病のリスクが高くなるとは言えません。この間接原因の因果関係はA→C→Bであり、A→Bには因果関係はあるとは限りません。

複雑な因果関係としての平均への回帰(過小評価)

風邪にかかって体温を測ってみたところ高熱であったので、風邪薬を飲んだら翌日体温が下がった。飲んだ風邪薬はかなり効果的だったら買うといい。

体温を測ったのが風邪のピークの時で、風邪薬を飲まなかったとしても自然に体温は下がっていたかもしれません。風邪薬を過大評価し、平均への回帰を過小評価していると言えます。

複雑な因果関係としての平均への回帰(過大評価)

じゃんけんで10戦勝ちなしだ。さすがに次は勝つだろう。

次じゃんけんしても勝つ確率は1/3です。平均へ回帰することを過大評価していると言えます。

複雑な因果関係としての平均への回帰(無視)

社員インタビューをすると離職するというジンクスがあり、実際にそのような結果もデータに示されている。社員インタビューの企画は中止だ。

実はそもそも複雑な因果関係などなく、社員インタビューは社歴が長い社員が対象で、別の理由で離職しただけかもしれません。つまり単に離職率に対する平均への回帰が生じただけと考えれば、離職を当然のこととして捉えることができるので、企画を中止にする理由にはなりません。

雑感

今回のnoteはこちらの記事を参考にさせていただきました。一般的にクリティカルシンキングはロジカルシンキングとセットで使われることが多くて、質を高めることを意識して活用しないと相手を怒らせることになります。

ただ悪質なネットワークビジネスやセミナー・宗教などの勧誘にはもってこいの手法です。悪を撃退する用途のほうが批判や懐疑はしっくりくると思います。鍛えれば論破力が身につきますw

もう少し柔らかい使い方が分かったらまたnoteに書き起こしたいと思いますので、用法はよくお読みいただき十分ご注意のうえご使用ください。

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